ケア業界のパイオニアに道を訊くインタビュー企画、第27弾です。
今回は、福祉介護業界の送迎を基盤とする新しい移動サービス「福祉介護・共同送迎サービス ゴイッショ」を展開する、ダイハツ工業株式会社の岡本さんにお話を伺いました。
この記事の要点
- 「ゴイッショ」は介護施設の送迎業務を共同化するサービス
- 複雑な介護送迎業務の共同化を3年かけて実現
- 「ゴイッショ」は介護のみならず、地域の移動課題を解決する
ダイハツ工業株式会社 コーポレート統括本部 岡本氏のプロフィール

岡本 仁也(おかもと じんや)氏
ダイハツ工業株式会社 コーポレート統括本部 新規事業戦略室 福祉分野統括グループリーダー
他社での経験を経て、2008年にダイハツ工業に入社。
総務部門に配属後、2015年から福祉介護施設の課題解決を進める取り組みに参画。
以後、福祉介護分野を中心としたモビリティサービスの企画、推進に取り組み、現在に至る。
インタビュー(以下、敬称略)
ダイハツ工業株式会社とは
——既に皆さんご存じのダイハツ工業株式会社ではありますが、改めて会社の概要からご説明いただいてもよろしいでしょうか。
岡本:弊社ダイハツ工業株式会社は1907年に設立した、主たる事業内容としては軽自動車や小型自動車の設計および製造販売をメインとしている会社です。
国内だけでなく海外にも事業展開し、多くのお客様にご利用いただいております。
岡本:弊社では普通の軽自動車・小型自動車はもとより、1995年より福祉車両も製造販売しております。
福祉車両というのは車椅子のままお乗りいただける車であるとか、助手席が回転して乗り降りがしやすい車であるとか、椅子がリフトするなどの機能を備えた車両のことです。
現在は福祉車両7車種をラインナップし、介護業務として送迎を行う介護施設様や福祉に関わる皆様にもご愛顧いただいております。
「ゴイッショ」が生まれた背景とは
——「ゴイッショ」についてお伺いしたいと思います。車メーカーであるダイハツさんがどうして福祉サービスを始められたのですか?
岡本:ことの始まりは2015年です。
当時は私もメンバーに入っていたのですが、弊社が全国的に福祉介護事業者様を個別に訪問し、車に関する悩みであるとかニーズをお伺いするという活動を始めました。
当初はここでお伺いした情報を元に、新しい車の開発や福祉車両の販売活動につなげることを目的としていました。
しかし、いろいろな介護施設様で話を聞くうちに、車を使う送迎業務そのものが大変だということが分かってきました。
——たしかに送迎業務を負担に感じている介護施設は多いようですね。
岡本:そこで弊社は、車の開発や販売はもちろん大切ですが、それ以外にソリューションも同時並行で考えなければいけないと考えるようになりました。
岡本:通所型の介護現場の業務の中で約3割の時間が送迎業務に費やされており、送迎業務は介護職員さんが最も負担に感じている業務のひとつでした。
この課題を解決するために、弊社がメインとする「車」を使ったソリューションを開発して提供したいという考えから生まれたサービスです。
ダイハツの福祉サービスは「らくぴた送迎」と「ゴイッショ」の2本柱
——ダイハツの福祉関係のサービスでは「ゴイッショ」以外にも「らくぴた送迎」というものもあるそうですね。
岡本:弊社では「らくぴた送迎」と「ゴイッショ」の2つをソリューションとして提供しています。
「らくぴた送迎」とは、特定のノウハウを持つ介護施設職員が作成している送迎計画を、誰もが簡単に作成できるようにするシステムです。
現在は多くの介護施設様がエクセルやホワイトボードで運行計画を作成していますが、「らくぴた送迎」の活用により担当者様の負担が大きく削減できます。
岡本:この「介護送迎の効率化」を地域に広げたのが「ゴイッショ」です。
——送迎支援システムを作りつつ、送迎業務そのものを現場から切り離すサービスも作ったのでしょうか?
岡本:「らくぴた送迎」で簡単に運行計画が作成できるようになったとしても、介護の現場で送迎業務に関する時間がゼロになるわけではありません。
現場の負担をさらに軽減するためには、送迎業務を現場から切り離すことが必要ではないかと考えました。
——送迎業務を外部委託するということですね。
岡本:単に外部委託するだけではなく、それをさらに地域一帯で共同運行する。また、介護送迎のアセットを有効活用することも出来るのではないかと考えたのです。
介護業務の負担軽減と移動コストの削減、地域アセットの有効活用。この3つを実現するために「ゴイッショ」を開発しました。
