ダイハツ工業株式会社 コーポレート統括本部 岡本氏 | インタビュー第27弾

ダイハツ工業株式会社 コーポレート統括本部 岡本氏 | インタビュー第27弾

「ゴイッショ」の概要

——「ゴイッショ」について詳しくお聞かせください。

岡本:「ゴイッショ」とは、それぞれの介護施設様が自施設のご利用者だけを送り迎えしている送迎業務を、複数の介護施設に通うご利用者を乗り合いで順番に送り迎えする共同送迎サービスです。そして、送迎をしていない空き時間では、介護送迎のアセットを地域移動に活かすことも可能です。

——送迎はダイハツさんが行うのですか?

岡本:いいえ。地域で介護送迎を担う団体を設置いただき、その団体にそれぞれの介護施設から送迎業務を委託してもらう流れとなります。

ダイハツ工業株式会社|福祉介護・共同送迎サービス ゴイッショ

——すべての介護施設が送迎を委託したら、介護施設には送迎用の車がいらなくなりますね。

岡本:介護施設に通われている方の中には認知症が進んでいる方や身体的な制限のある方もいらっしゃるので、すべてのご利用者が「ゴイッショ・共同送迎」で通所できるとは限りません。

ですが、例えば、これまで6台の車を使って送迎していたもののうち3台相当を共同送迎に変更いただくことで、介護施設様の負担は大きく低減できると考えられます。

自前の送迎と共同送迎を併用するなど、柔軟な送迎スタイルを私たちが自治体や介護施設様にご提案しながら進めているところです。

介護に特化したMaaSの独自性

——最近ではカーシェアリングなどもずいぶん普及してきていますが、つまり「ゴイッショ」は送迎をシェアするようなイメージでしょうか。

岡本:移動のサービス化は、最近ではMaaS(マース/Mobility as a Serviceの略)と呼ばれています。

ただ介護に特化しているMaaSは、これまで世の中にほとんどありませんでした。

岡本:ご存じのとおり、介護施設に通われている方は車椅子の方や独居の方など、多様な方がおられます。

ご利用者の繊細なニーズを踏まえてサービス設計しているところは、私の知る限りでは他社ではまだないと思いますので、ここが弊社の独自性であり、強みの1つかと思っています。

——車を知りつくした自動車メーカーならではの着眼点ですね。

介護施設の送迎は毎日が戦争状態

岡本:介護の送迎って、想像以上に複雑なんです。

運行計画を作るためには、介護施設とご利用者とドライバーの、それぞれの希望をすり合わせる必要があります。

ご利用者は何時から何時の間に迎えに来て欲しい。でもドライバーはこの時間内で働く必要がある。なおかつ介護施設は9時30分から介護保険サービスをスタートさせるから、9時25分までにはご利用者に到着して欲しい、といったさまざまな要望があります。

さらに難しいのはご利用者が介護施設に到着する時間帯です。玄関スペースが限られる施設様では、例えば5台の車で送迎していたら、すべての車が一斉に9時25分に到着したら受け入れキャパがオーバーしてしまうんです。

——すべての介護施設に広い駐車場があるとは限りませんしね。

岡本:ですから5分おき、もしくは2分おき位に到着するように運行計画を作らなければいけないですし、ご高齢者は体調が急に悪くなる場合もあるので、急遽キャンセルや急遽追加みたいなお話も日常茶飯事です。どこの介護施設様も、朝の送迎業務は大変なんです。

——そんな複雑な運行計画を作れる担当の方はすごいですね。

岡本:どこの介護施設様でも、運行計画を作れる方は特定の職員に限られるようです。

Aさんのご自宅からBさんのご自宅までの移動時間はこれくらい、そこから介護施設までの移動時間はこのくらい、渋滞も信号待ち時間も加味してAさんBさんCさんDさんEさんの送迎スケジュールを組む。

登録者が100名も150名もいらっしゃるような介護施設だと、それぞれのご自宅間の移動時間を考慮しながら運行計画を作るのは確かに神業です。

さらに複雑化する送迎共同化を一気通貫で提供

——1つの介護施設だけでも送迎業務は大変なのに、それを共同化するとなると、さらに複雑になりませんか?

岡本:はい。施設ごとに到着して欲しい時間は9時、9時30分、10時などと異なりますし、目的地も複数になるし、ご利用者が増えればさらにお迎えの指定時間も増えます。

それに加えて送迎を担う運営団体様との情報連携も細やかにしなければいけないですし、地域によっては運行そのものをタクシー会社に委託するケースもあるので、5者間の相反するニーズをすべて考慮しなければいけないのです。

——それが「ゴイッショ」であれば実現できるということでしょうか。

岡本:介護送迎に特化した人材が共同送迎の調査・検討から運行までを一貫してサポートし、複雑かつ相反する送迎ニーズをすり合わせる介護送迎専用のアルゴリズムを搭載したシステムを使ってトータルの乗車時間を増やさずに稼働台数を2割から3割程度削減できます。

これはダイハツでしか成し得ない独自システムです。

岡本:実際に共同送迎をするためには、いろいろなことを実現しなければなりません。

その地域で本当にそのニーズがあるのか、どのくらいの効果が見込めるのかを丁寧に下調べする必要がありますし、共同送迎をスムーズに実現するためのノウハウや仕組みが必要です。

もちろん安全性は最優先として、この辺りを一気通貫でパッケージ化して提供している点が、他とは違う弊社の優位性ですね。

臼井 貴紀
● 監修者情報
臼井 貴紀 Usui Kiki
Hubbit株式会社 代表取締役社長。藤田医科大学客員教員。早稲田大学卒業後、ヤフー株式会社に新卒入社。営業、マーケティング、開発ディレクション、新規事業開発など幅広く担当。その後、ベンチャー企業に転職しAIを活用したMAツールの立ち上げを行った後、Hubbit株式会社を設立。高齢者施設に3ヶ月住み込んで開発したCarebee(ケアビー)は、日本経済新聞、NHKおはよう日本、ABEMA PRIME等に出演。
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