BCP(業務継続計画)は簡単に作れる!作成例と作成ツール計9種類を紹介

BCP(業務継続計画)は簡単に作れる!作成例と作成ツール計9種類を紹介

最終更新日 2023.04.10

この記事の要点

  1. 2024年4月から介護施設・介護事業所のBCP作成が義務化される
  2. BCPの作成例を紹介(3種類)
  3. BCPの作成ツールを紹介(6種類)
  4. ICT技術はBCPの備えだけでなく日々の業務にも活用できる

すべての介護施設と介護事業所は、2024年3月末までにBCP(業務継続計画)の作成と実践が求められています。

2022年現在、BCP作成を準備している介護事業所も多いと思われますが、皆さんどのようにしてBCPを作成しているのでしょうか。

そこで今回は、BCPの具体的な作成例や簡単に作れるツールを紹介します。BCP作成に悩んでいる介護事業所はぜひ参考にしてみてください。

介護事業所等のBCP取組が義務化

2021年度の介護報酬改定では、介護施設や介護事業所の感染症や災害への対応力強化のためにBCP(業務継続計画)の作成が義務化されました。

参考:厚生労働省|令和3年度介護報酬改定における改定事項について

2022年現在は3年間の経過措置期間中ですが、2024年4月からはすべての介護施設・介護事業所でBCPを作成し、それにのっとった運営をしなければいけません。

BCPとは何か

BCP(業務継続計画)とはBusiness Continuity Planの頭文字をとった略称です。

BCPについては以下の記事で詳しく解説していますので、BCPが何かよくわからない方は以下の記事をご覧ください。
BCP(業務継続計画)とはなにか?介護施設・介護事業所2024年義務化の概要

BCPの作成例

まだBCPを作成していない介護施設や介護事業所はすぐにでもBCP作成に取りかかりましょう。

以下からは自治体が提供している、介護施設・介護事業所向けのBCP作成例を3種類紹介します。BCPをどう書けば良いかわからない介護事業所は作成例を参考にすると作りやすくなります。

なおBCPに決まったフォーマットはありません。管轄の都道府県以外の作成例を参考にしても問題ないので、自分たちが参考にしやすいと思われる作成例をご選択ください。

埼玉県

埼玉県は県内の中小企業に向けて、公式サイト内で簡易的なBCPフォーマットの提供や作成例の紹介を行っています。

埼玉県の提供する事業継続計画書は一般的な中小企業が自然災害発生時に備えるBCPの作成例です。介護施設や介護事業所がこのBCP作成例を参考にする場合には、介護業界独自の対応をプラスしてください。

作成例のファイル形式はPDFです。
参考:埼玉県|事業継続計画書

三重県

三重県では県内の介護施設・介護事業所に向けて自然災害BCPの作成手引きや作成例・様式例を公式サイト内で紹介しています。

作成例の中で介護施設・介護事業所が独自に検討すべき事項については赤字で記されていますので、自分たちなりのBCPが作りやすくなっています。

作成例のファイル形式はWordです。
参考:三重県|介護施設・事業所等における業務継続計画(BCP)の作成について

山形県

山形県は県内のすべての企業に向けて、BCPの作成例と作成の手引きを公式サイト内で提供しています。

BCPの種類は業種ごとにわかれています。介護施設や介護事業所は「生活関連サービス業」もしくは「その他汎用版」を参考にしてください。

また山形県が提供するBCP作成例は「大地震版」「風水害・雪害板」「感染症版」の3つに分かれ、それぞれの状況にあわせて作りやすい点が特徴です。

山形県内の企業であれば申し込みにより作成フォーマットを提供してもらえますので、県内の介護事業所は活用してください。

ファイル形式はPDFです。
参考:山形県|BCP(事業継続計画)について

無料で使えるBCP作成支援ツール

日々の業務が忙しく、BCP作成に時間を割く余裕がない、またはBCP作成の人員が足りないという介護事業所も多いでしょう。

BCP作成を支援する民間サービスも存在しますが、費用面を考えると無料で使えるツールを利用した方がコストの節約になります。

以下からは無料で使えるBCP作成支援ツールを6種類紹介します。

厚生労働省

厚生労働省は介護施設・介護事業所におけるBCP作成の支援のために、ガイドラインや研修資料など、さまざまなツールやコンテンツを提供しています。

以下のページから説明動画の視聴や資料ダウンロードが行えます。
参考:厚生労働省|介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修

またBCP様式ツールのダウンロードも上記サイトから行えます。「新型コロナウイルス感染症編」と「自然災害編」に分かれていますので、2種類ともダウンロードがおすすめです。

全国老人福祉施設協会

公益社団法人全国老人福祉施設協会は、特別養護老人ホーム(以下、特養)に特化した自然災害BCPひな形資料と参考講義動画を公式サイトにアップしています。

感染症対策BCPに関する情報はありませんが、特養を運営する介護事業所にはぜひ参考講義動画の視聴とひな形ダウンロードをおすすめします。
参考:公益社団法人全国老人福祉施設協会|自然災害発生時における事業継続計画(BCP)ひな形資料と参考解説動画の公開

中小企業庁

中小企業庁は介護業界に限らず、すべての中小企業に向けたBCT作成ツールを公開しています。

介護施設や介護事業所が独自の取り決めを追加する必要はありますが、中小企業庁のBCP作成ツールは入門コース、基本・中級・上級と、レベルに合わせて段階的にBCPが作成できるようになっているため参考にしやすいでしょう。
参考:中小企業庁|中小企業BCP策定運用指針~緊急事態を生き抜くために~

大阪産業創造館

大阪市の中小・ベンチャー企業支援拠点である大阪産業創造館が提供するBCP策定ツール「コンパクトBCP」は、コンパクトと名がつきながらも具体的な手順書やさまざまなテンプレートが含まれる、充実した内容のツールです。

ツールの申込には大阪産業創造館へのユーザー登録が必要になりますので、まずはユーザー登録の完了後にお申し込みください。
参考:大阪産業創造館|BCP策定ツール「コンパクトBCP」

栃木県社会福祉協議会

栃木県社会福祉協議会が提供しているBCP作成ツールは、Wordのフレームワークに介護施設や介護事業所ごとの取り決めを入力するだけでBCPが完成する簡易版です。

栃木県外の介護施設・介護事業所でも利用が可能です。

ツール内にはBCP作成時のポイントなども記載されています。
参考:社会福祉法人栃木県社会福祉協議会|とちぎ社協事業継続計画作成ツール【簡易版】

三井住友海上火災保険(他2社)

公的機関や社会福祉法人ばかりではありません。民間企業も介護業界のBCP作成を支援しています。

三井住友海上火災保険株式会社、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社、MS&ADインターリスク総研株式会社は3社共同で感染症BCP作成支援ツールを開発し、福祉施設事業者向けに無償提供を開始しました。
参考:三井住友海上火災保険株式会社、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社、MS&ADインターリスク総研株式会社のプレスリリース

また、このツールは感染症対策BCPの作成が簡単に行えるだけでなく、職員研修などにも活用できます。

同ツールを利用したい介護事業所は、お近くの三井住友海上もしくはあいおいニッセイ同和損保の代理店に電話等にてお申し込みください。
参考:三井住友海上火災保険株式会社|代理店検索
参考:あいおいニッセイ同和損害保険株式会社|店舗のご案内

ICTをフル活用して平常時からBCPを実践

どんなに立派なBCPを作っても、それが実践できなければ絵に描いた餅です。

実際に非常事態が起こったときにスムーズな対応ができるよう定期的に研修などを行い、対応に見直すべき点があれば随時改定していく必要があります。

また、非常時に施設等の責任者と全職員が一丸となってBCPを実践するためには、日頃からの職員間の連携が重要です。

日々の業務でICT(情報通信技術)を活用していれば、日常業務が円滑に進むだけでなく、BCPが必要となった状況でもスムーズな対応がしやすくなると考えられます。

介護事業所のICT活用については以下の記事などで詳しく解説しています。BCPの実践ばかりでなく、平常時の業務にも役立つ内容を紹介していますので、あわせて参考にしてください。
介護におけるICTとは何か?効果とメリット・デメリット
ICT活用で介護現場に与えられるメリットとは?【実際の8事例を元に解説】

まとめ

今回はこれからBCP(業務継続計画)を作る介護事業所に向けて、BCPの作成例とBCPを簡単に作れる無料ツールを紹介しました。

介護施設や介護事業所のBCP作成の義務化は2024年4月からですが、自然災害はいつなんどき起こるかわかりません。また感染症対策については今こそが必要になっている対策です。

早急にBCPを作成し、BCPで取り決めた防災対策・感染症対策を日々の業務に活かしていきましょう。

臼井 貴紀
● 監修者情報
臼井 貴紀 Usui Kiki
Hubbit株式会社 代表取締役社長。藤田医科大学客員教員。早稲田大学卒業後、ヤフー株式会社に新卒入社。営業、マーケティング、開発ディレクション、新規事業開発など幅広く担当。その後、ベンチャー企業に転職しAIを活用したMAツールの立ち上げを行った後、Hubbit株式会社を設立。高齢者施設に3ヶ月住み込んで開発したCarebee(ケアビー)は、日本経済新聞、NHKおはよう日本、ABEMA PRIME等に出演。
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