1億円資金調達の介護ICTツール比較サイト「介護のコミミ」運営 早坂祐哉氏インタビュー(前編)

1億円資金調達の介護ICTツール比較サイト「介護のコミミ」運営 早坂祐哉氏インタビュー(前編)

最終更新日 2022.11.18

介護が変わろうとしている”今”だからこそ

介護業界のICT化については今まさに動かんとしていますが、御社のホームページで2025年に言及されていらっしゃる理由はありますか?

介護業界に関しては、いくつか、皆が基準にしている年代の数字があります。その一つが2025年ですが、これは団塊の世代が高齢者になる年なんです。団塊の世代は人口が多いので、2025年になると「高齢者は多く、支える人が少ない」需給にギャップがある状態になりますよね。なので、私達に限らず、2025年に間に合わせるように動いてる所なんですよ。

私たちが今この事業をスタートしている理由は、他にもあります。LIFEが2021年の4月にスタートしました。これは、介護事業所がICT化してないと国からお金が貰えないというシンプルなものです。ただ現状、平均年齢55歳の介護職員が本質的にICT化に対応できるかと言うと、できない人が多い。求められるものと現場にスキルのギャップも開いてきてしまっています。

※LIFEについての記事はこちら▶「科学的介護」とは何か。LIFEにどう対応するか(解説動画もあり)

また経済産業省とNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の推計により、国内の介護・福祉ロボットの市場は2035年には4043億円まで拡大すると予測されます(参考:NEDO「2035年に向けたロボット産業の将来市場予測」より)。現在は100億円程度です。
国からは介護ロボットの補助金が出ます。補助金が出ることによって導入を進める事業所は多くなるため、そこには市場が出来上がります。なので、今でしょうという所ですね。

株式会社GiverLink代表取締役CEOの早坂祐哉さん近影(4)

ロボットの他に、介護業界で求められているテクノロジーの現在のトレンドは何でしょうか?情報サイトを運営している立場で見えているものがあれば教えてください。

たしかに正直なところ私達は、かなり早く情報が手に入ると思います。ベンダーを横断して色んな製品を見ていますし。介護職員から「こういうのを求めている」という話を聞いて、ニーズを大体で掴むこともできます。

ただ求められているテクノロジーは、サービス種別や職種によって違ってきますね。特別養護老人ホームが求めてるものとデイサービスが求めているものは違いますし、ケアマネージャーなのか介護福祉士なのかでも違ってきます。なので一概に業界全体でこれっていうのは、今のところは見づらい部分があります。

その中でも、介護記録に負担を感じているのは、ある程度どの現場でも共通していると思います。介護記録を音声で入力する機能を求めている声は大きいのではないかと思います。
あとは、コロナの影響もあり、出先で介護記録を入れたいという人も多いので、タブレットのニーズは高まっていると思います。

しかし他の業界に比べて、「革新的なこれを求めている」というよりは、基本的なツールを導入する課題がまだまだ多いのが現状です。例えば「介護記録の電子化をしている」と言っている介護事業所も、蓋を開けてみれば、請求業務しかできてないとか。基礎もまだできてない所が多いかなと思います。

■トピックのまとめ

  • 介護記録を簡便化するテクノロジーが求められている
  • ICT化の基礎ができていない所が多く、まずは基本的なツールを導入することから

介護のテクノロジーを最適化する

現場にICTに詳しい人がいるかどうかで、かなり普及の仕方が変わる所もありますよね。

そうですね。現状は、介護事業所にICTに詳しい人がいないのが普通です。他の業界と比べて、バックオフィスを作る文化もないですね。先ほどの請求業務に関しても、現場の方が請求業務もやっているという所が多いですし。
採用担当者もいないのが当たり前の業界ですが、理想としては、やっぱり1人でもICTに強い人がいれば、立ち上げまでのスピードは変わってくるだろうと確信しています。私の推奨としては、1事業所に1人のICT立ち上げリーダーを置くことです。現実にはまだなかなか難しいとは思いますが。

御社のサービスの展望には、その部分のサポートも含まれているのでしょうか?

ありますね。私達のミッションは「介護のテクノロジーを最適化する」と掲げています。
最適化するためには何が必要か。もちろんベンダーの最適な製品を選ぶのもそうですが、ツール導入にあたってのフォローも含めてやりたいと考えています。今でも介護職員からコンサルなどを求めていただく事もありますし、何らかの形でお力添えしていければと思っていますね。

■トピックのまとめ

  • 1事業所に1人、ICT立ち上げリーダーを置くことを推奨
  • 介護のテクノロジーを最適化するため、ツール導入フォローも今後行っていく予定

前編分はここまでです!

ベンダーの社員として成功を収めていたにも関わらず独立を行ったのは、介護事業書とツールの最適なマッチングを行いたいという熱い思いからでした。
介護職員に寄り添う姿勢を崩さず、掲載を希望するベンダーとの話し合いでもポリシーをしっかりと貫かれている部分には、感銘を受けた方も多いのではないでしょうか。

次回は、そんな早坂代表の人物面にも迫っていきます!後編もお楽しみに!

臼井 貴紀
● 監修者情報
臼井 貴紀 Usui Kiki
Hubbit株式会社 代表取締役社長。藤田医科大学客員教員。早稲田大学卒業後、ヤフー株式会社に新卒入社。営業、マーケティング、開発ディレクション、新規事業開発など幅広く担当。その後、ベンチャー企業に転職しAIを活用したMAツールの立ち上げを行った後、Hubbit株式会社を設立。高齢者施設に3ヶ月住み込んで開発したCarebee(ケアビー)は、日本経済新聞、NHKおはよう日本、ABEMA PRIME等に出演。
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