この記事は、株式会社aba代表・宇井吉美氏のインタビュー記事、後編です。
前編(#01)では、事業の背景やこれまでの成果などをお聞きしました。
前編をまだ見ていない方はこちら↓
#01 【宇井吉美】たゆまぬ研究開発、現場との約束。排泄センサーHelppadの株式会社aba代表インタビュー前編
後編(#02)である本記事では、業界全体も視野に入れたビジョンに迫ります!

パイオニアのプロフィール
・お名前:宇井吉美(うい よしみ)さん
・会社名(役名):株式会社aba(代表取締役社長)
・事業内容:医療・介護・福祉分野を対象としたロボティクス技術の研究開発及びサービス提供
今回のお話の要点(後編)
- 介護職員との約束を守ることをモットーに起業。職員が使いやすいものを作り、普及させる
- 人間が無機物としてではなく人間らしく扱われるためにテクノロジーを開発している
- 海外製のケアテックに置き換わる前に、日本のケアテックで日本の介護を伝承させる
- 来年(2022年)からシンガポールに進出
- 介護士の価値をテクノロジーでもっと分かるようにする
それでは、インタビュー内容をお楽しみください。
介護職員との約束を守りたい
ーー社長として喜びを感じることはありますか。
喜びよりも、「社長として不甲斐ないな」と憤ることの方が多いですね。憤りの方が、喜びに比べて99.9%くらいです。
では何故こんなに辛いことをやっているのかと言えば、「介護職の人との約束を守りたい」という思いが理由です。
本当に約束してるわけではなく、私が約束だと思ってるんです。「おむつを開けずに中が見たい」って言われたことなど含めて、約束だと思っています。約束を成し遂げたいな、という思いがあって起業しました。

大学生のときにも介護分野の研究をしていました。そして研究のアウトプットとして論文を書いて、協力していただいた介護施設に持っていったのです。そのとき職員さんたちが「ちょっと違うな」みたいな感じの顔をしている気がしました。
それで私なりに「職員さんたちが欲しいのは論文じゃなくて、自分たちが使いやすいプロダクトやサービス、ソリューションが現場に根付いてることだ」と思いました。「そこまでやらないと研究として終わったとは言えないな」と。
MITメディアラボ(※)も“Deploy or Die(普及できないなら死んじまえ)”と言っていますが、本当にそうです。
研究を始めたなら、世の中の人が「当たり前に使える」と感じるところまで持っていかないと、と思っています。険しい道のりですけどね。
※MITメディアラボ・・・米国マサチューセッツ工科大学内の研究所。主にデジタル技術による表現とコミュニケーションを教育・研究する。石井裕氏が副所長を務める(2021年現在)ほか、2019年までは伊藤穰一氏が所長を務めた。
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