2022年おすすめ介護用みまもり睡眠センサー5選 「高齢者の健康悪化を早期検出する」研究も紹介

2022年おすすめ介護用みまもり睡眠センサー5選 「高齢者の健康悪化を早期検出する」研究も紹介

最終更新日 2022.11.24

米アマゾンが睡眠改善装置を発表したとして話題になっています。製品は「Halo Rise」と名付けられ、非接触で睡眠を把握し、ユーザーが眠れない原因を分析する等の機能があるそうです(※)。
睡眠は全ての人にとって重要な習慣ですが、未知の部分も多く、改善のためにできる工夫の余地は広く残されていますね。

※参考記事:アマゾンは、わたしたちの生活を「環境知能」で静かに包み込もうとしている(WIRED.jp)、Amazonが「第2世代Echo Auto」や「Halo Rise」などを米国で展開 Intelがスマホ連携アプリを発表(ITmedia)

本記事はそんな睡眠に関連して、介護の世界で近年使われ始めている「睡眠センサー」の製品事例と、睡眠センサーを活用して健康悪化を検出する研究事例をご紹介します。

2022年おすすめ介護用みまもり睡眠センサー5選

非装着・非侵襲の介護用みまもり睡眠センサーを5点ピックアップしました。

眠りSCAN

画像は眠りSCAN公式サイトから引用

特徴・おすすめ理由

  • マットレスや敷布団の下に敷いてスイッチを入れるだけで睡眠を計測できる。
  • 電動ベッド(背あげ機能)に対応する固定用フック付き。
  • 使用しないときには折りたたみが可能。
  • 利用者の「睡眠・覚醒・起きあがり・離床」が分かる。
  • 就床している利用者の心拍数・呼吸数が分かる。
  • 呼吸や心拍が遅い(少ない)場合は青系の色で、速い(多い)場合は赤系の色で画面に表示され、判別しやすい。
  • 測定データからレポートを自動作成。
費用オープン価格(希望小売価格の設定なし)
5 年間レンタルすると所有権が無償譲渡
(レンタル価格は初年度月額2,600円(税別))
オプション・LANケーブル
・ベッド接続ケーブル
・ベッドサイド端末接続ケーブル
サービスページparamount.co.jp/product/detail/index/20/P0053580

aams

画像はaams公式サイトから引用

特徴・おすすめ理由

  • 心拍、呼吸、体動、離着床、睡眠の状態をリアルタイムで把握、30日分のデータが蓄積。
  • 睡眠状態は深い眠り、浅い眠り、覚醒の3段階で表示。
  • マット部は電気、電子部品を一切使用しないエアー式の安全設計のため、丈夫で長持ちする。
  • センサーマットは、マットレスの下に敷くだけで簡単に設置ができる。
  • 細かい設置位置の調整は必要ない。
  • PC・タブレット端末等を使用してモニタリングし、一人ひとりに合わせたアラート設定ができ各社ナースコールとの連携も可能。
費用オープン価格(参考価格178,000円(税別))
オプション・介護記録システム連携
・カメラ連携
サービスページbiosilver.co.jp/aams/

SleepSensor

画像はSleepSensor公式サイトから引用

特徴・おすすめ理由

  • AIの技術により誤反応・誤発報・通知遅延を減らす。
  • 対象者の臥位情報を3D検知し、正確に伝達。
  • 延べ1万人を越える臥位データを解析し、ベッド端部・仰臥時もくまなくデータ取得が可能。
  • ミリセカンドの単位でリアルタイムに対象者の状況データがアップデートされていく。
  • エアーマットをはじめ、さまざまなベッドや寝具タイプに対応。
  • 「在」「不在」の検知に加え、「起き上がり」「長座位」「端座位」(※実装予定含む)などのベッド上の立体的な動作もより正確かつ詳細に検知。
費用オープン価格+1床あたり月額1,500円(税別)
オプション・ライフリズムナビ+Dr.
(SleepSensor以外の機器を含むセンサー類を使用した業務効率化ソリューション)
サービスページinfo.liferhythmnavi.com/sleepsensor/

Care-Top

画像はCare-Top公式サイトから引用

特徴・おすすめ理由

  • 利用者の臥床/離床・入眠/覚醒・体動有無・心拍・呼吸などの状態を検知。
  • 睡眠の深さや頻繁体動なども検出して通知。
  • 各種状態のレポートで保存される。
  • PCでリアルタイムに全ての情報を一覧してモニタリングが可能。
  • ナースコール機器と連携動作が可能。
  • 温度や湿度も測定。
  • 利用者に合わせてアラートを設定でき、スマートフォンへの通知も可能。
費用オープン価格(実勢価格90,000〜100,000円見込み)
オプションなし
サービスページshinseicorp.com/care-top

みまもり〜ふ

画像はみまもり〜ふ公式サイトから引用

特徴・おすすめ理由

  • リアルタイムで睡眠状態、睡眠の質、生体情報(心拍、呼吸)を確認できる。
  • 睡眠中の心拍、呼吸数のトレンドグラフの作成ができる。
  • 高速離床検知(3秒)が可能。
  • 睡眠中の心拍動「ゆらぎ」を解析することによる体調状態の判定ができる。
    (「ゆらぎ」による健康度は心拍リズム変動の調和性を示し、異変リスクを察知する)
  • 介護士だけでなく、家族へのメール配信、プッシュ通知が可能。
費用108,000円(税別)
オプションなし
サービスページtechnohorizon.co.jp/lp/cs-1000/index.html

睡眠センサーで高齢者の健康悪化を早期検出することも可能?

上記のように国内だけでも数種類もの睡眠センサーが開発・販売されていますが、海外でもさまざまな睡眠センサーの開発・販売は進んでおり、また研究機関によって新たな活用方法が模索されています。

以下では一例として、睡眠センサーにより高齢者の健康悪化を早期検出することを目指した研究をご紹介します。

この記事で参照する科学論文の情報
著者:Narayan Schütz, Hugo Saner, Angela Botros, Bruno Pais, Valérie Santschi, Philipp Buluschek, Daniel Gatica-Perez, Prabitha Urwyler, René M Müri, Tobias Nef
機関(国):University of Bern(スイス), Sechenov First Moscow State Medical University(ロシア), HES-SO University of Applied Sciences and Arts of Western Switzerland(スイス), DomoSafety SA(スイス), Idiap Research Institute(スイス), École Polytechnique Fédérale de Lausanne(スイス)
タイトル:Contactless Sleep Monitoring for Early Detection of Health Deteriorations in Community-Dwelling Older Adults: Exploratory Study
URL:10.2196/24666

6000晩以上の睡眠データを分析

スイス等の研究者らは、「近年非接触型のセンサーが高齢者に普及してきていること」「老化とともにかかる疾患や障害によって睡眠に問題が出てくること」に注目し、睡眠センサーのデータを使用して高齢者の健康悪化を検出できる可能性を見出しました。

そこで、70〜101歳の高齢者37人の睡眠データ合計6686晩分(データ記録期間は1年間)を収集しました。被験者らは集合住宅または一軒家で一人暮らしをしている高齢者で、ペットはいませんでした(そのため、夜間にペットの影響で起きる懸念はありませんでした)。

実験に使用されたセンサーはフィンランドの企業Emfit Ltd製のEmfit QSという睡眠センサーでした。この製品は睡眠に関連する複数のデータを自動で取得できます(機能は上述の日本企業による睡眠センサー製品群と類似)。

Emfit Ltd製のEmfit QS。画像はEmfit Ltdのサイトから引用

上記の睡眠センサーでは就寝時間、平均心拍数、平均呼吸数、睡眠の深さ、覚醒時間・回数、入眠遅延、離床時間などが記録されますが、メーカーによると心拍数と呼吸数を正確に測定できることが特に示されています。

また、参加者の健康データは面談とアンケートによって毎週記録されました。健康状態の評価にはEQ-5D-3L(世界的に用いられている標準的なQOL評価尺度の1つ)が採用されました。

研究者らは、上記の睡眠センサーから得られた各種データと、被験者から収集した健康データを照らし合わせることで、睡眠状態と健康状態の関係性を調査しました。

寝返りの頻度から健康状態の悪化を検出できるかも

調査の結果、高齢者らの健康状態の悪化と最も強く関連しているのは、一晩あたりの寝返り回数でした。また、次に関連性が強いのは平均呼吸数でした。
さらに、寝返りの回数が多い高齢者はレム睡眠(睡眠中に眼球が運動している状態)の割合が高いことも分かりました。

寝返りの数が目に見えて多い場合、半数以上の高齢者らは心不全、高血圧、腹部腫瘍、季節性インフルエンザ、胃腸障害、尿路感染症などになっていました。また、一晩あたり200回以上の寝返りを行っていた高齢者らは、3人のうち2人が重症を抱え、のちに一人は入院し、もう一人は死亡しました。

研究者らは、2015年に別の研究者らによる報告で不眠状態と健康悪化との関連性が指摘されており、今回の結果と類似していることから説得力が増すと考えています。
睡眠時の体の動きが健康の悪化となぜ関連するのかについては、まだ正確な理由がわかっていません。仮説として、体内でのさまざまな炎症が免疫系に影響を与え、ストレスから睡眠状態が変化しているだろうとのことです。
また興味深い点として、よく知られている睡眠の質(睡眠時間や睡眠効率など)は、寝返りの回数とはあまり関連がないように見えることでした。

研究者らは上記の結果を受けて、非接触型の睡眠センサーなどで睡眠中の状態をモニタリングすることは健康状態の悪化を早期検出することに役立つ可能性が高いと結論付けています。さらに大規模で照準を絞った研究によって検証を進めることが必要だとコメントしています。

まとめ

介護の世界で近年使われ始めている「睡眠センサー」の製品事例と、睡眠センサーを活用して健康悪化を検出する研究事例をご紹介しました。

紹介した研究で提唱された「寝返り頻度と健康悪化が関連する可能性」は非常に興味深い話でした。
通常、寝返りを自然に計測することは難しいと考えられますが、マット下に忍ばせるような非侵襲型の睡眠センサーは寝返り頻度を静かに計測することができます。人々の健康状態を見守る存在として睡眠センサーは今後ますます重要になるかもしれませんね。

最後に、冒頭で紹介したAmazonの最新製品「Halo Rise」のデモムービーを載せておきます。さまざまな企業や研究機関の取り組みにより、睡眠改善のテクノロジーが更に進化していくことが期待されますね!

なお、AIケアラボでは睡眠センサー以外にもさまざまなセンサー関連の興味深い研究事例を取り上げています。ぜひご覧ください!

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臼井 貴紀
● 監修者情報
臼井 貴紀 Usui Kiki
Hubbit株式会社 代表取締役社長。藤田医科大学客員教員。早稲田大学卒業後、ヤフー株式会社に新卒入社。営業、マーケティング、開発ディレクション、新規事業開発など幅広く担当。その後、ベンチャー企業に転職しAIを活用したMAツールの立ち上げを行った後、Hubbit株式会社を設立。高齢者施設に3ヶ月住み込んで開発したCarebee(ケアビー)は、日本経済新聞、NHKおはよう日本、ABEMA PRIME等に出演。
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