2022年おすすめロボットペット5選 「高齢者の孤独感を解消する」科学的調査結果をもとに

2022年おすすめロボットペット5選 「高齢者の孤独感を解消する」科学的調査結果をもとに

最終更新日 2022.11.18

この記事では、最新のおすすめロボットペットと、その根拠にあたる科学的調査の概要をご紹介します。

おすすめの国内ロボットペット5選

ソニー株式会社「aibo」

aibo
aibo.sony.jp より引用

特徴

  • 目の前にいる人物や環境(場所)を把握
  • 障害物や段差を避ける
  • 人の声に反応し、いくつかの言葉を理解する
  • 撫でられると喜ぶ
  • 出迎えの場所を覚えて「ただいま」を待つ
  • 家の中にいる家族を探すことができる
  • ごはんを食べる振る舞いができる
  • aibo同士で交流ができる
  • aiboが楽しかった時の写真を自発的に撮影し、アプリに保存する
  • ポーズやダンスを教えることができる

おすすめ理由

aiboが介護施設で使用された事例が同社のHPで紹介されています。介護施設からはaiboに対して、アレルギーや抜け毛、臭いなど衛生面を気にせずにドッグセラピーを行えることを期待されています。介護施設の運営者は、aiboによって入居者の円滑で活発なコミュニケーションが増えた実感があるようです。

費用【本体】
一括払い:217,800円
分割払い:月11,000円〜
オプション【aiboベーシックプラン】
一括払い:99,000円
分割払い:月3,278円×36回
サービスページhttps://aibo.sony.jp/

GROOVE X株式会社「LOVOT」

lovot
lovot.life より引用

特徴

  • ともに過ごす時間が長くなるに伴って、持ち主に懐く
  • トップスなどファッショングッズが沢山あり、着せ替えを楽しめる
  • AIの技術により、事前にプログラムされた以上のふるまいを行う
  • 虹彩や瞳孔など6層のレイヤーで、瞳の生命感を演出
  • 本物の声帯や口腔で生み出された音に近い鳴き声を出す
  • 弾性素材と伸縮性生地により画期的な肌触りを実現
  • 体内で空気が循環することで全身が暖かい
  • 障害物までの距離が分かり自律的に走行
  • 抱き上げられる際はホイールが収納され、持ち主の服を汚さない

おすすめ理由

LOVOTは介護施設への導入も積極的に進められており、詳細は同社のブログで紹介されています。LOVOTと触れることで認知症の症状がある方の身体動作や発語が増えたり、表情が豊かになったケースが見られたそうです。

費用【本体】
一括払い:349,800円
分割払い:月7,288円×48回
【ソフトウェア使用料+LOVOT care】
月9,887円×48回
【ソフトウェア使用料+LOVOT care+LOVOTドック無償】
月14,278円×48回
オプション【修理費用100%補償(ただし本体価格が上限)】
月7,700円×48回
サービスページhttps://lovot.life/

株式会社知能システム「パロ」

paro
intelligent-system.jp より引用

特徴

  • タテゴトアザラシの赤ちゃんをモデルにしており、本物からサンプリングした様々な鳴き声を出す
  • 持ち主の名前や行動に対する学習機能を備えている
  • 「よりなでられやすい行動」を優先的に行うように個性が生まれていく
  • 「世界で最もセラピー効果のあるロボット」としてギネス記録認定されている
  • 温度センサーが備えられ、温かみを持つように制御されている
  • 充電器がおしゃぶり型
  • 抱き抱えられたり、なでられると喜ぶ
  • たたかれたり乱暴にされると嫌がる
  • 本物の動物と同じように、朝・昼・晩と休む

おすすめ理由

パロには学術的研究の背景があります。パロは独立行政法人産業技術総合研究所(産総研)にて10年にわたる研究をもとに生み出されました。世界7ヵ国で約2千名を対象にユーザー体験を調べられたところ、ペットやセラピーとしての期待が明らかになっています。「コロナ禍におけるメンタル・ヘルスのためのパロ」という論文も出されるなど、パロは時代に合わせて研究開発が続けられています。
パロが介護施設で使用された例に関しては、代理店であるNDソフトウェア株式会社のHPで紹介されています

費用【本体】
1年メンテナンス保証つき(基本):420,000円
3年メンテナンス保証つき:490,000円
オプション【ぬいぐるみ交換】
69,000円
【パロ・グルーミング】
25,000円
サービスページhttp://intelligent-system.jp/paro-sale.html

株式会社タカラトミーアーツ「もっとおりこうダッキー」

ダッキー
takaratomy-arts.co.jp より引用

特徴

  • 両手を握ることで持ち主の言葉を聞くモードに切り替わる(おりこうモード)
  • ダッキー側は、持ち主とその家族を家族名称で呼ぶ
  • Happy Birthdayなど30曲の歌を歌う
  • 設定した起床時刻に目覚め、設定した就寝時刻に眠る
  • 外出中は握手をしたときだけ話すように設定できる(おでかけモード)
  • 「なぞなぞ」「5つ覚えてねゲーム」で一緒に遊ぶことができる
  • 全部で200語以上の言葉がわかり、約3700通りの会話ができる

おすすめ理由

もっとおりこうダッキーはロボットペット市場の中では低価格帯であり、家計に優しいです。またダッキーはロボットペットとして人気の犬型ロボットの中では珍しく本物の犬に寄せられた見た目にデザインされており、機械的なフォルムに抵抗がある方にとっては受け入れやすいです。

費用【本体】
19,800円
オプションなし
サービスページhttps://www.takaratomy-arts.co.jp/specials/healingpartner/hp_dacky.html

有限会社デジレクト「しっぽふりふり あまえんぼうねこちゃん」

ねこちゃん
digirect.co.jp/neko より引用

特徴

  • 鳴き声、尻尾の動き、感情表現が合わせて100通り以上
  • 名前を付けると、その名前に反応するようになる
  • 沢山なでることで振る舞いが本物のように変化していく
  • 簡単な振る舞いのみを行うモードと、複雑な振る舞いを行うモードを切り替えることができる

おすすめ理由

しっぽふりふり あまえんぼうねこちゃんは、ロボットペット市場の中では低価格帯である一方、猫型のロボットとしては高級品・高品質品に位置します。猫は高齢者にとって人気のペットでありながらロボット化が難しいとされていますが、しっぽふりふり あまえんぼうねこちゃんは見た目を含めて本物に寄せて再現されています。猫型ロボットが欲しいという明確なこだわりがある人におすすめです。

費用【本体】
15,268円〜 (販売代理店によって異なる)
オプションなし
サービスページhttp://www.digirect.co.jp/neko

研究事例:ロボットペットは高齢者の孤独感を緩和するか?

上記のロボットペットおすすめ5選は、ロボットペットで高齢者の孤独を癒すことが出来るかを科学的に調査した研究の結果を基軸にして作成しました。以下では根拠となる研究の概要をご紹介します。

参照する科学論文の情報
著者:Janella Hudson, Rachel Ungar, Laurie Albright, Rifky Tkatch, James Schaeffer, Ellen R Wicker
タイトル:Robotic Pet Use Among Community-Dwelling Older Adults
URL:doi.org/10.1093/geronb/gbaa119

孤独感≒人間関係の不満足感

高齢者は、身体能力や気力が衰えて人との関わりが減少し、孤独感を経験することがあります。
孤独感は、以下のように定義されています。

“人間関係の中でわれわれがこうありたいという願望があるときにその願望が十分に満たされなかったり、逆にその心理的満足感を低下させるような結果が生じたときに感じる感情の一つ”

1978年、カリフォルニア大学ロサンゼルス校Russell, Peplau & Cutronaによる研究

内閣府「令和2年度 第9回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査結果」によると、60歳以上の高齢者のうち「人と直接会って話をする頻度が毎日ではない」人の割合は25.6%、「親しい友人がいない、もしくは親しい友人がいるかわからない」人の割合は40.1%です。
平成27年度の調査時と比較して令和2年度では「人と直接会って話をする頻度が毎日ではない」「親しい友人がいない、もしくは親しい友人がいるかわからない」いずれも割合が増えているのが特徴でした。時代の影響があるのかもしれませんが、孤独感を感じうる高齢者が多く、増える傾向にあるなら、その解決策を考える必要があります。

孤独感に対する解決策として注目されているのがペットです。ある調査ではペットの飼い主が孤独感を報告する割合は、ペットを飼っていない人に比べて36%低いことが明らかになっています。
ただしペットを飼うにはコストがかかり、飼い主の移動や住居の選択も制限されるという課題があります。
そこで本物のペットを飼う代わりにロボットペットを所有することが新しく注目されてきています。

関連記事▶︎ソーシャルロボットは高齢者のメンタルケアとして受け入れられるのか 107人の介護施設関係者が語る

孤独感を抱える高齢者にロボットペットを配布

高齢者が自宅でロボットペットを使用することに関する実証的な調査研究は多くありません。そこで米企業Optum(ヘルスケア製品と医療保険サービスを提供するユナイテッドヘルスグループの傘下企業)の研究者たちは高齢者277名に対してロボットペットを実際に使用してもらい、使用感を分析することにしました。

実験の参加者はうつ病のレベルが高く、医療費が高い傾向にありました。参加者の8割以上が以前にペットを飼った経験があり、また参加者の約5割は65〜74歳の女性でした。いずれの参加者も研究者たちによる事前の調査で孤独であると判断された者たちでした。

下図は実験で使われたロボットペットの外見と機能です。

実験に使用されたロボットペットの外見
実験に使用されたロボットペットの外見
実験に使用されたロボットペットの機能概要
実験に使用されたロボットペットの機能概要

実験に使用されたロボットペットには、ユーザーの行動に反応する機能がいくつか搭載されていました。例えばユーザーが頭部と頬部にタッチするとロボットペットは鼻を鳴らすようにできています。他にもロボットペットは光に反応して鳴き声を出したり、猫型の場合はゴロゴロと喉を鳴らし、犬型の場合は吠えます。ちなみにこのロボットペットは市販されており(メーカー:Joy for All)、猫型の価格は約15,000円、犬型の価格は約12,500円です。

本物のペットに近づけてほしいという声もある一方、孤独感は和らいだ

ロボットペットの使用感は、実験の参加者277名のうちインタビュー(13の質問で構成)に応じた20名の参加者から調べられました。下記は質問された項目の例です。

  • 実験に参加した動機
  • ロボットの使用時間
  • 使用パターン(昼か夜か)
  • 使用方法、操作方法
  • 屋外での用事にも連れて行ったか
  • 日常生活や習慣に影響を与えたか
  • 実験に参加したことにより経験した感情
  • ロボットペットに名前を付けたか

インタビュー結果を分析したところ、次のような結果が得られました。なお、参加者の一部ではなく大多数が回答した内容に限定して紹介します。

ロボットペットを飼う理由は?

  • 本物の動物に比べて、メンテナンスが不要
  • ロボットペットのテクノロジーが興味深い

日常生活に溶け込むか?

  • ロボットペットに名前をつけ、常にその名前で呼んだ
  • 「深く関わる(ロボットペットと長く触れ合っていた)」傾向にあった参加者は、もともと社会との繋がりが弱かった
  • 「浅く関わる(ロボットペットとは挨拶をする程度だった)」傾向にあった参加者は、もともと社会との繋がりが強かった

新しい繋がりを生むか?

  • 「深く関わる」「浅く関わる」どちらのパターンでも、参加者はロボットペットにより他人との新しい繋がりが生まれることに気づいた
  • 家族や友人など周囲の人々にロボットペットを見せることで交流が増えた

生きている動物のペットと比べてどうか?

  • 「深く関わる」傾向にあった参加者ほど、ロボットペットを生きている動物のペットに近いと判断した
  • 比較的年齢が若め(65〜69歳)、および「浅く関わる」傾向にあった参加者ほど、ロボットペットをおもちゃのようだと判断した
  • ロボットペットが鳴くまたは吠える機能および頭の動きやまばたき、他「本物そっくり」だと思わせる機能が気に入られた

ロボットペットとの友情は生まれるか?

  • ロボットペットとの交流によって幸福感の増加、孤独感の緩和が感じられた
  • 抱きしめるなど「愛情を込めた交流」によって落ち着きが得られた
  • ロボットペットの寄り添う動きや鼓動などによって落ち着きが更に促進されたと感じられた
  • 「深く関わる」傾向にあった参加者は、ロボットペットを明確に友人だと見なした

これからの使用を考えているへのアドバイスは?

  • 「浅く関わる」傾向にあった参加者は、ロボットペットは社会的な繋がりが多い人には向かないと判断し
  • 自分自身を孤独な人だと考えている参加者はロボットペットを有益だとして、孤独な人であればできれば使うことを強く勧めている

メーカーへの要望は?

  • 見た目と動きを、よりリアルに近づけて欲しい
  • 毛皮には柔らかい素材を使って欲しい
  • 歩行機能は興味深いが、転倒が怖い
  • ペットを家中で追い回したり、ひもにつないで外出したい

以上の結果をもって研究者らは、社会的に孤立していて孤独な高齢者をロボットペットが救うかもしれないと結論づけています。
ただし、ロボットペットに依存する孤独な高齢者が発生するリスクも考慮すべきとしています。また、ロボットペットを購入するにはそもそもコストがかかるので、一部の高齢者にとってはコストがハードルになるとしています。これらの懸念を含めて今後の研究材料とし、継続的にロボットペットの活用に関する調査を進めていくことが重要だとしています。

関連記事▶︎新しい介護ロボット「ZORA」2年にわたる実証実験の結果

まとめ

本記事の後半で紹介した研究では、高齢者がロボットペットを使用した際のフィードバックが沢山得られています。フィードバックは、参加者のほとんどが述べたもの、ロボットペットと深い関わり方をした者が述べたもの、浅い関わり方をした者が述べたものに分かれました。しかし概して、「リアルさ」が重要視されている傾向にあります。
実証実験から読み取られた「リアルさ」が重要視される傾向を参考に、本記事の前半では比較的「リアルさ」に力がいれられている市販のロボットペットを探して紹介しました。
ロボットペットの中にはLOVOTのように既存の動物をかたどっていないデザインのものもありますが、例えばLOVOTの場合「柔らかい」「世話を必要とする」など生きているペットの特徴を捉えている点でやはりリアルさを追求しています。

機械技術が発展するにつれて、「まるで生きている」という感覚を抱かせる製品が出てきました。
もし身の回りの高齢者に対して、彼らの孤独感をいかに解消するか悩んだら、一つの選択肢として考えてみてはいかがでしょうか。

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臼井 貴紀
● 監修者情報
臼井 貴紀 Usui Kiki
Hubbit株式会社 代表取締役社長。藤田医科大学客員教員。早稲田大学卒業後、ヤフー株式会社に新卒入社。営業、マーケティング、開発ディレクション、新規事業開発など幅広く担当。その後、ベンチャー企業に転職しAIを活用したMAツールの立ち上げを行った後、Hubbit株式会社を設立。高齢者施設に3ヶ月住み込んで開発したCarebee(ケアビー)は、日本経済新聞、NHKおはよう日本、ABEMA PRIME等に出演。
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