この記事の要点
- ブレインマシンインタフェース(BMI)は脳と機械をつなげる仕組み
- ブレインマシンインタフェースは読み込み型と書き込み型がある
- ブレインマシンインタフェースは非侵襲式と侵襲式がある
- ブレインマシンインタフェースによって私たちの生活と介護が変わる可能性がある
頭で考えただけで目の前のモノや、遠く離れたモノを動かすことができる。
まるでSFの世界のような出来事が、リアルな世界でも起き始めています。
人間の脳と機械をつなげて通信し、脳が直接外の世界とのやりとりを実現する仕組みをブレインマシンインタフェースと言います。
今回はブレインマシンインタフェースについて解説します。いま世界中で注目されている最先端技術について学び、ブレインマシンインタフェースが介護にもたらす可能性を理解しましょう。
目次
ブレインマシンインタフェース(BMI)とは

ブレインマシンインタフェースとは、人間の脳波や脳血流の変化などを機械が読み取って、外部との双方向通信を可能にする仕組みです。
英名Brain-machine Interface の頭文字をとってBMIと略されることもあります。
人間の身体は脳からの指令によって動きますが、手足や口などの末端機能が存在しなければ脳が直接外部にアクションを起こす、または受けることはできません。
また末端機能に支障がなくても、人体の及ぶ範囲の距離でなければ直接のやりとりは難しいでしょう。
ブレインマシンインタフェースで脳と機械をつなげることで、脳が機械をとおしてアクションしたり、外部からのアクションを感じることが可能になります。
ブレインマシンインタフェースで何が可能か

ブレインマシンインタフェースにより、人間は活動範囲を大幅に拡大することができます。
例えばブレインマシンインタフェースを双方が装着すれば、何の言葉を発しなくても思念だけで会話ができるようになります。
人間相手でなくても、家電や自動車を操作したり、義手や義足を脳信号で自在に動かせる可能性もあります。手足や感覚器官に障害がある方にとっては、ブレインマシンインタフェースは福音とも呼べる存在になるでしょう。
またブレインマシンインタフェースとVR(仮想現実)などの技術の組み合わせにより、実際には現地に出向かなくてもバーチャルな空間で仕事や学習ができるようになるかもしれません。
これまでフィクションの世界でしか考えられなかった生活スタイルが、ブレインマシンインタフェースによって実現できるかもしれません。
ブレインマシンインタフェースの種類
ブレインマシンインタフェースには「読み込み型」と「書き込み型」があります。
読み込み型と書き込み型を兼ね備えているブレインマシンインタフェースもありますが、まずは2つの違いを確認しましょう。
読み込み型
読み込み型とは、ブレインマシンインタフェースが脳波などを読み取って操作先の機器に信号を送り、機器を動かす方法です。
家電や自動車の操作、義手や義足の操縦などは読み込み型に分類されます。
書き込み型
書き込み型とは、センサーなどの情報を脳に直接伝える方法です。
目や耳が不自由な人などは、書き込み型ブレインマシンインタフェースが自分の目や耳の代わりともなります。
ブレインマシンインタフェースのタイプ
ブレインマシンインタフェースには装着方法の違いにより「非侵襲式」と「侵襲式」の2つのタイプがあります。
非侵襲式
非侵襲式とは頭にヘッドギアやバンドを装着し、ヘッドギアやバンドに搭載されたセンサーから脳波などを読み取る、または脳に信号を送るタイプです。
装着に際して外科手術の必要がないため、侵襲式に比べてハードルが低いという利点があります。
侵襲式
侵襲式とは脳に微細なチップを埋め込み、チップから発せられる電流によって脳波などを読み取る、または信号を送るタイプです。
2022年現在では、侵襲式によるブレインマシンインタフェースはまだ動物実験しか行われておらず、人間への応用はありません。
ですが侵襲式ブレインマシンインタフェースが人間に活用できるようになれば、非侵襲式よりももっと高い精度での読み取り・書き込みが期待できます。
世界中でBMIの研究が進んでいる

人間の可能性を飛躍的に向上させる可能性があるブレインマシンインタフェースは、いま世界中で実用化に向けての研究が進められています。
アメリカのParadromics社は米国防高等研究計画局からの投資を受け、ブレインマシンインタフェースの開発に取り組んでいます。
Paradromics社が開発する読み込み型・書き込み型双方を兼ね備えた脳内チップが実用化されれば、視覚や聴覚などの感覚器官への指示だけでなく、精神疾患の治療にも応用できる可能性があるとのことです。
参考:特許庁IP BASE|革新的治療を実現、ブレインマシンインタフェースが開拓する医療の未来
日本国内でも多くのユーザーがいるFacebookを運営するMeta社も、ブレインマシンインタフェースとAIを組み合わせた新しいSNSの利用法の開発を進めています。
参考:Tech at Meta|新しいインターフェースを想像する: 無言のハンズフリー コミュニケーション
またアメリカのTesla社CEOのイーロン・マスク氏もベンチャー企業を立ち上げてブレインマシンインタフェース開発に取り組んでいるなど、研究機関だけでなく民間企業においてもブレインマシンインタフェース技術が注目されています。
文部科学省「脳科学研究戦略推進プログラム」
日本国内では文部科学省が主体となり、国を挙げてブレインマシンインタフェースの研究が進められています。
文部科学省が運営している「脳科学研究戦略推進プログラム」ではブレインマシンインタフェース研究を以下の3つのグループに分け、グループごとに日本の大学・研究機構と連携して研究を行い、日本の医療・介護への活用を模索している最中です。
グループ名 | 連携機関 |
身体機能代替グループ | 大阪大学・自然科学研究機構・情報通信研究機構・電気通信大学 |
脳・身体機能回復促進グループ | 慶應義塾大学・国際電気通信基礎技術研究所・国立精神・神経医療研究センター・東京工業大学 |
精神・神経疾患等治療グループ | 国際電気通信基礎技術研究所・大阪大学・京都大学など |
参考:脳科学研究戦略推進プログラム|BMI技術を用いた自立支援・精神神経疾患等の克服に向けた研究開発
ブレインマシンインタフェースを介護に活用

ブレインマシンインタフェースの研究が進み実用化が可能になれば、高齢者や障がい者の介護は格段に楽になるかもしれません。
ベッドから起き上がれない状態の方でも念じるだけで周囲のモノが取れたり、車椅子を自分で操作して移動することができれば、要介護者の自立に大きく貢献できます。
当サイトAIケアラボでも、ブレインマシンインタフェースの介護への活用を模索した研究をご紹介した記事があります。今回の記事とあわせて参考にしてください。
▶念じるだけで動かせる車椅子 介護におけるAI・BMI応用の最先端
ブレインマシンインタフェースの課題
実用化が期待されるブレインマシンインタフェースですが、実際に私たちが活用できるようになるためには、まだ課題が残されています。
精度の問題
脳は超高速で膨大な情報を処理する器官です。機械によってすべての情報を間違いなく認識するためには、さらに精度の高い収集システムの開発が必要となります。
人体への影響
ブレインマシンインタフェースの精度を高めるためには非侵襲式(頭に装着するタイプ)よりも侵襲式(脳にチップを埋め込むタイプ)の方が効率的ですが、手術が必須であることと、脳内のチップが人体におよぼす影響についてはまだわかっていません。
またブレインマシンインタフェースが脳に送る信号により、脳自体に何らかの悪影響をおよぼす可能性も否定できないため、実用化に向けては長期間の検証が必要です。
プライバシーの保護
ブレインマシンインタフェースによって脳の働きを外部から読み取る、または操作するということは、人の心を直接覗き込まれるようなものです。
ブレインマシンインタフェースの実用化に向けては、プライバシー保護の問題も慎重に考えて解決していかなければいけません。
まとめ
今回はブレインマシンインタフェース(BMI)について解説しました。
まだ研究段階ではあるものの、ブレインマシンインタフェースは私たちの未来の可能性を広げる革新的な技術です。またブレインマシンインタフェースの実用化に伴い、介護の未来をも変える可能性があります。
ブレインマシンインタフェースが介護に活用できる未来を、ワクワクする気持ちで見守りましょう。
