この記事の要点
- オンライン診療は医師と患者がインターネット上で診察するオンライン形式の診療
- オンライン診療をしている病院・クリニックは全体の約15%
- オンライン診療は保険診療・自由診療どちらでも受けられる
- デイサービスなど通所介護施設ではオンライン診療が受けられない(2022年9月時点)
ケガや病気で医師の診察を受ける際に、病院やクリニックでの長い待ち時間が苦痛だと感じた方も多いでしょう。
また病院やクリニックの待合室で、 隣に座っている方が咳をしていたりすると、病気やケガを治すための病院で、逆に具合が悪くなってしまうのではないかという不安も生じます。
自宅にいながらにして医師の診察を受けられるオンライン診療のシステムを使えば、長い待ち時間を苦痛に感じることも、院内感染の不安にかられることもありません。
しかし、オンライン診療はどの病院でも受けることが可能なのでしょうか。
そこで今回はオンライン診療について解説していきます。
目次
オンライン診療とは

オンライン診療とは、病院やクリニックと患者の自宅をインターネットでつなぎ、患者がパソコンやスマートフォンなどを利用して医師の診察や薬の処方を受けることができる診療形式を指します。
なおインターネットではなく電話を使って医師の診察や薬の処方を受ける診療形式は、電話診療と呼ばれています。
オンライン診療・ 電話診療とも、患者が自宅にいながらにして病気やケガの治療が可能なため、外来での通院が難しい患者にとって便利な診療形式といえます。
オンライン診療を実施する医療機関は15%程度
病院に通いづらい患者にとってはありがたい存在のオンライン診療ですが、残念ながら2022年現在ではオンライン診療は、普及しているとはいいがたい状況です。
厚生労働省のまとめでは、2021年10月~12月時点でオンライン診療および電話診療を実施している医療機関は17,405機関でした。
当該時点での日本全国の医療機関数は112,576機関ですので、まだ全体の約15%ほどしか実施されていません。
政府は2018年からオンライン診療の推進を行っており、さらなるオンライン診療実施医療機関の増加が求められています。
オンライン診療が求められる理由とは
なぜオンライン診療を推進し、オンライン診療実施医療機関を増やそうとしているのでしょうか。
それは現在の日本が、以下のような3つの問題を抱えているからです。
1.超高齢社会
日本における人口比率は、年々高齢者の割合が増えています。
2025年には高齢者の人口割合がおよそ10%ほど増加し、日本全体の38%が65歳以上の高齢者になると試算されています。
若年層に比べて高齢者は病気になる確率も高まり、医師の診療を受ける機会も増えます。
すべての人に対して適切な医療を提供するためには、医師のキャパシティー不足を何らかの形でカバーするための対策が必要です。
2.地方の医師不足
日本全体で医師の数が増えたとしても、都心部に集中してしまうと地方の医師不足は解消できません。
現在、地方の医師不足は大きな社会問題になっています。
設備や環境の整った都心部の大学病院などに若い医師は来やすく、逆に、地方の自治体が営む病院では医師の退職があいつぎ、求人をかけても応募がほとんどないなど、地域に住む人たちへの医療の提供に深刻な影響をおよぼしています。
オンライン診療を使って遠隔地の医師から診療を受けられる状態になれば、地方の医師不足が少しでも改善できます。
3.新型コロナウイルス感染症の流行
2020年から始まった新型コロナウィルス感染症の世界的な流行により、さらにオンライン診療のニーズは高まっています。
「三密」を避けるために病院やクリニックに行きづらくなった方や、自宅療養・ホテル療養をしている方への医療提供手段としてオンライン診療が活用されました。
新型コロナウィルス感染症の流行が依然として収まらない2022年においても、引き続きオンライン診療による医療提供が求められています。
オンライン診療の受診方法

実際にオンライン診療を受けるときは、一般的に以下のような流れで行われます。
医療機関により細かい点が異なりますので、診療前には必ずオンライン診療を受け付けている病院やクリニックにお問い合わせの上、診療の流れを確認してください。
STEP1.予約
オンライン診療を受け付けている病院やクリニックに電話をし、オンライン診療の予約を申し込みます。
公式サイトから予約できる病院やクリニックもあります。
STEP2.テレビ電話の設定
予約をした病院やクリニックの指示に基づきテレビ電話の設定を行います。
オンライン診療を専用アプリ上で行っている病院やクリニックの場合は、指定の専用アプリがインストールされていないと診療が受けられません。
必ず診察前にインストールを実施してください。
STEP3.診察
予約時間になると病院やクリニックから着信があり、オンライン接続が可能になります。
オンライン接続が行えたら、まずはテレビ電話の相手がオンライン診療をする患者本人かどうかを確認するために、病院やクリニックから個人情報について質問がされます。
質問に回答し、間違いなく患者本人であると確認ができた後、医師の診察が開始されます。
STEP4.支払い
診療にかかった代金を支払います。支払方法はクレジットカード・銀行振込・次回来院時の支払いなどがありますが、各医療機関により異なります。
STEP5.薬の受け取り
医師から薬を処方された場合は、かかりつけ薬局を受診した医療機関に伝え、薬局に処方箋をFAXしてもらいます。
患者はかかりつけ薬局を来訪し、薬を受け取ります。薬局によっては服薬指導もオンラインで行い、その後に薬を配送するケースもあります。
オンライン診療の費用

従来の通院に保険診療と自由診療があるように、オンライン診療にも保険診療と自由診療があります。
保険診療 | 医療健康保険が適用され、費用の一部を健康保険組合が負担する方法 |
自由診療 | 費用の全額を患者が負担する方法 |
オンライン診療だとすべて自由診療のため自費になると誤解されている方もいますが、そのようなことはありません。
ただし医療機関によっては「オンラインシステム利用料」を別途請求している医療機関もあります。必ず受診予定の病院やクリニックに確認してください。
介護におけるオンライン診療の課題とは

医療と介護は密接に関係しているため、オンライン診療の普及は高齢者介護にも良い影響を与えそうです。
しかしオンライン診療を介護に活かすためには、まだ課題があります。
デジタルについてよくわかっていない高齢者の場合、オンライン診療をするためのアプリやデバイスの設定は困難です。デイサービスなどの通所介護施設であれば介護職員の手助けが見込めます。
しかし2022年9月現在の法制度では、デイサービスや公民館など不特定多数の人々が集まる場所でのオンライン診療は認められていません。
介護を必要としているすべての高齢者が適切な医療を受けられるようにするためには、今後の法整備が必要です。
政府はオンライン診療ルールの見直しを検討中
上記の課題を解決するために、いま政府はオンライン診療ルールの見直しを検討中です。
2022年5月に開催された規制改革推進会議の答申には、オンライン診療の受診対象などの見直しや、デイサービスでもオンライン診療を可能とすべきという内容が盛り込まれました。
参考:内閣府|第13回規制改革推進会議「規制改革推進に関する答申(案)~コロナ後に向けた成長の「起動」~」
政府はこの答申を受け、2022年中には新しいオンライン診療ルールについて結論を出す見込みです。
今後はデイサービスなどの介護の現場でも、オンライン診療が身近になっていくかもしれません。
まとめ
今回はオンライン診療について解説しました。
オンライン診療が一般的な診療形式になれば、すべての人が病院やクリニックに行きやすくなり、病気の早期発見や早期治療にも役立つかもしれません。
IT技術で社会を良くするDX(デジタルトランスフォーメーション)のひとつであるオンライン診療について、今後ともさらに注視していきましょう。
