介護事業所が作成する勤務表とは|利用シーンと作り方・自動作成ソフト4選

介護事業所が作成する勤務表とは|利用シーンと作り方・自動作成ソフト4選

最終更新日 2022.11.21

この記事の要点

  1. 従業者の勤務体制及び勤務形態一覧表は介護施設・事業所の指定申請時・変更時などに提出する書類
  2. 勤務表の提出により介護事業所の人員配置が適切になされているかの証明を行う
  3. 2020年に勤務表の標準様式(エクセル)が公表された
  4. 勤務表を自動作成してくれるソフトや連携可能なシステムがある

介護事業所は、開業時や介護保険の申請時にさまざまな書類を提出する必要があります。

しかし、その書類作成が多大な負担になっている介護事業所経営者も多いようです。

中でも介護職員の勤務状況を確認するための「従業者の勤務体制及び勤務形態一覧表」は、記載すべき事項が非常に多いために負担が増します。

経営者としては、介護の質向上のためにも、このような事務作業の負担を軽減して、業務効率を上げていきたいところです。

そこで今回は従業者の勤務体制及び勤務形態一覧表(以下「勤務表」)の作成方法を説明しながら、勤務表を自動作成してくれる作成ソフトをご紹介します。

従業者の勤務体制及び勤務形態一覧表とは

従業者の勤務体制及び勤務形態一覧表(勤務表)とは、介護事業所の人員配置が適切になされているかを確認するために作成する書類です。

勤務表は以下のようなシーンで作成し、介護事業所の所在地を管轄する各自治体に提出します。

  • 介護施設・事業所の指定申請時
  • 加算等に関する届出時
  • 指定更新・変更届などの届出時
  • 行政からの実地指導に基づく提出の依頼を受けた時

介護事業所のシフト表とは異なる

勤務表は介護事業所で働く職員の勤務時間数などを記載する書類ですが、介護職員がいつ働くかを一覧にしたシフト表としての機能はありません。

職員のシフト表は別途作成する必要があります。

勤務表の作り方

勤務表はエクセル形式の一覧表にパソコンで入力して作成します。

入力する内容は介護サービスの種類ごとに異なります。以下画像は訪問介護サービスを提供している介護事業所の例です。

エクセル標準様式はダウンロードが可能です。標準様式に関しては後ほど「エクセル標準様式は無料ダウンロード可能 」の項目で詳しくご説明します。

入力項目

エクセルに入力する項目は以下のとおりです。介護サービスの違いにより追加・削除される項目があります。

事業所情報・集計月・サービス種別・事業所名・「予定」「実績」「予定・実績」別・事業所における常勤の従業者が勤務すべき時間数・前3か月の利用者数(新規・再開の場合は推定利用者数)・人員基準の確認
勤務者情報・氏名・職種・勤務形態(常勤・非常勤)・保有資格・シフト種別・1出勤あたりの勤務時間数・兼務状況

集計項目

上記で入力した内容を集計し、以下を算出します。エクセルにマクロ(自動計算機能)が組み込まれている場合には自動集計されます。

  • 職員ごとの勤務時間合計数
  • 職員ごとの週平均勤務時間数
  • 月あたりの平均利用者数
  • 介護事業所全体の合計勤務時間数(日中・夜間・深夜)
  • 介護事業所全体の週平均勤務時間数(日中・夜間・深夜)
  • 提供時間帯を通じて専従で確保すべき介護職員の人数(日中・夜間・深夜)

2020年に厚生労働省が標準様式を公表

これまで勤務表の様式には全国統一の標準様式がなく、各介護事業所は管轄の自治体が提供する様式を使用するか、もしくは独自にエクセルシートを1から作成しなければいけませんでした。

また提出に関するルールも異なっていたため、特に複数の拠点を持つ法人には多大な事務負担がかかり、不満の声が多く挙がっていました。

厚生労働省は各介護事業所の事務負担を軽減すべく、2021年3月30日に新しく勤務表の標準様式を公表し、介護事業所のデジタル活用を支援しています。

参考サイト:厚生労働省|介護保険最新情報Vol.956

この改定は厚生労働省が推進する科学的介護にもつながり、介護事業所がIT技術をより一層活用しやすくなるための方策だと考えられます。

科学的介護については以下の記事を参考にしてください。

「科学的介護」とは何か。LIFEにどう対応するか(解説動画もあり)

エクセル標準様式は無料ダウンロード可能

新しい標準様式は厚生労働省のホームページから無料ダウンロードが可能です。

以下URLの「11.指定居宅サービス事業所、介護保険施設、指定介護予防サービス事業所、 指定地域密着型サービス事業所、指定地域密着型介護予防サービス事業所 及び指定居宅介護支援事業所の指定に関する様式例について」の項目より該当する介護サービスを選択し、ダウンロードしてご利用ください。

一見難しそうに見えますが、記入の多くはプルダウンで選択することができ、記入しやすくなっています。 

URL:厚生労働省|その他

事業所独自の様式で作成も可能

2020年に厚生労働省が公表した勤務表の標準様式は、利用が強制ではありません。

従来の勤務表をそのまま継続利用してもよく、また、上記で説明した入力項目と集計結果が確認できる書類であれば、事業所独自のシフト表などの提出により代替も可能です。

標準様式の公表はあくまでも、これから勤務表を作成する介護事業所の事務負担を軽減するための措置ですので、各介護事業所の判断により随意にご利用ください。

勤務形態一覧表の自動作成ソフト4選

以下からは勤務表の作成がさらに簡単にできる、勤務表の自動作成ソフトをご紹介します。

勤務表作成に時間をとられている介護事業所運営者の方はぜひ参考にしてください。

CWS for Care

CWS for Careはシフト作成・勤怠管理・帳票出力をワンストップで提供している、介護事業所に特化した勤怠管理システムです。

介護職員の勤怠データをもとに職種や資格を反映した勤務表が自動作成できます。複数職務を兼務している方がいても、勤務時間に応じて出力が可能です。

就業大臣NX

就業大臣NXは介護業界だけでなく、あらゆる業種に対応する勤怠管理ソフトですが、オプション「介護・福祉帳票ユニット」の追加により介護事業所の勤務表自動作成に対応できます。

また就業大臣NXは、同社が販売している社会福祉法人向け会計ソフト「福祉大臣NX」とも連動が可能です。

快決!シフト君NEO ウェルネス

快決!シフト君NEO ウェルネスはAI(人工知能)技術を搭載したシフト管理ソフトです。

スタッフの勤務希望と公平性を両立するシフト表を自動作成しながら、勤務表だけでなく行政への各種提出書類も作成できます。

専用アプリを使って介護職員のシフト希望収集やシフト表配布もでき、各種業務連絡も一元で行えます。

  • 運営会社:株式会社NTTデータセキスイシステムズ
  • 初期費用:販売パートナーに要問合せ
  • 月額費用:販売パートナーに要問合せ
  • URL:http://products.ndis.jp/shift-neo/wellness/

Work/Life(ワークライフ)

Work/Lifeは医療業界・福祉業界に特化したシフト勤務表自動作成サービスです。

世界最高速のソルバー(計算システム)を用いて、複雑な条件設定の介護シフト自動作成の高速化を実現しています。

2022年1月現在ではまだ厚生労働省の勤務表標準様式にはしていませんが、今後対応の予定です。

  • 運営会社:株式会社ベター・プレイス
  • 初期費用:要問合せ(2ヶ月間無料トライアル可能)
  • 月額費用:要問合せ
  • URL:https://worklife.bpcom.jp/

完全無料の勤務形態一覧表は存在しない

上記では4つの勤務表自動作成ソフトをご紹介しましたが、この中には利用料金が無料のソフトはありません。

残念ながら、2022年1月時点では無料の勤務表作成ソフトが存在していない模様です。

そもそも勤務表はマイクロソフト社の有償ソフトであるエクセルを使って作成しなければならないため、完全に無料で勤務表を作成することはできません。

勤務表作成の労力を軽減し、余力をより良い介護サービスの提供に充てられると考え、ある程度の費用負担は必要な経費だと割り切りましょう。

介護ICTソフトから連携も可能

ICT(情報通信技術)を用いた介護記録システム等をお使いの介護事業所であれば、既存システムが勤務表作成に対応している可能性があります。

お使いのICTシステムを提供しているサービス提供会社に問い合わせてみることをおすすめします。

介護事業所向けのICTシステムと活用方法については以下の記事を参考にしてください。

ICT活用で介護現場に与えられるメリットとは?【実際の8事例を元に解説】

まとめ

今回は勤務表(従業者の勤務体制及び勤務形態一覧表)の作り方と、勤務表を自動作成してくれる作成ソフトのご紹介をしました。

世の中は日々デジタル化が進み、それは介護業界でも変わりありません。

行政手続きで必要になる勤務表も、IT技術で作成の労力が軽減できます。

勤務表に限らず、ITの助けを借りてどのような業務が簡便化できるか、いろいろな手段を考えてみましょう。

臼井 貴紀
● 監修者情報
臼井 貴紀 Usui Kiki
Hubbit株式会社 代表取締役社長。藤田医科大学客員教員。早稲田大学卒業後、ヤフー株式会社に新卒入社。営業、マーケティング、開発ディレクション、新規事業開発など幅広く担当。その後、ベンチャー企業に転職しAIを活用したMAツールの立ち上げを行った後、Hubbit株式会社を設立。高齢者施設に3ヶ月住み込んで開発したCarebee(ケアビー)は、日本経済新聞、NHKおはよう日本、ABEMA PRIME等に出演。
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