介護のAI活用に必要な課題とは?解決の為に開発会社と介護業界ができること

介護のAI活用に必要な課題とは?解決の為に開発会社と介護業界ができること

この記事の要点

  1. 介護の質の低下、介護人材不足の解決手段としてAI技術が期待されている
  2. AIを介護業界に浸透させるにはいくつかの課題解決が必要
  3. AI開発会社は課題解決のために日々努力している(インタビュー記事あり)

AI(Artificial Intelligence;人工知能)技術は、世の中のさまざまな仕事を効率化できる可能性があります。

もちろんそれは、介護でも例外ではありません。介護の現場にAI技術を用いれば、介護の仕事はもっと楽に、効率的に行えるでしょう。

しかしAI技術は、残念ながらまだ介護業界に広まっているとは言えません。AI技術をより介護に活かすためには、まだ解決が必要な課題が残っているからです。

いったいどんな課題を解決すれば、AIを介護に活用できるのでしょうか。

今回はAIを介護に活用するために必要な課題と、課題を解決する手段について解説します。

介護にAIが必要とされる背景

AIが持つ課題を確認する前に「なぜAIが介護に必要なのか」3つの背景を理解しましょう。

日本は既に超高齢社会にあり、要介護者の増加が予想されるため、介護業界はさまざまな課題への対応が必要とされています。

介護人材の不足

介護職員不足は年を追うごとに深刻化しています。

どの都道府県も介護職員の必要数に対して、現状推移シナリオによる介護職員の数は不足していく推測になっています。

参考:厚生労働省|第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数(都道府県別)

職員が不足すると、十分な介護サービスの提供ができなくなります。介護を必要としている高齢者が必要な介護サービスを受けられなくなる「介護難民」の発生が考えられます。

2025年問題

1947年~1949年の第一次ベビーブームに生まれた、いわゆる団塊の世代は2025年頃に後期高齢者世代に突入します。

これまで日本経済を支えてきた団塊の世代がいっせいにリタイアして「介護される側」となる可能性があり、社会保障関連の費用負担増加や介護人材の不足が不安視されています。これを2025年問題と言います。

2025年がいよいよ間近にせまった2021年の今、来る2025年問題への対処をあらかじめ考えていく必要があります。

平均寿命と健康寿命の差

高齢者人口が増えたとしても、要介護者が増えなければ介護の課題は軽減されます。 

しかし、医療の発展に伴い日本の平均寿命は年々上昇していますが、平均寿命に対して健康寿命が高くなっているわけではありません。

《健康寿命とは》
介護や医療に依存せず、自立して日常生活を送れる生存期間のこと

平均寿命が伸びているのに健康寿命が伸びないと、高齢者ひとりひとりの介護を必要とする期間がどんどん長くなり、介護を必要とする人がますます増えていく恐れがあります。

介護業界を救うAI関連製品

要介護者の増加、介護人材不足を抱える介護業界を救うと期待されている存在が、AIです。

もちろんAIがすべての問題点を解決できるわけではありませんが、AIによって業務効率化を図り、介護に携わる職員が働きやすい職場環境になれば、介護業界が抱える問題点のいくつかを解消できる可能性があります。

具体的にAIが介護のどんな助けになるかについては、実際に介護業界向けに販売されているAIシステム製品を見てみるとわかりやすいでしょう。

以下の記事では2021年開催の介護関連商品相談会に出展されたAI関連製品を紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
介護にAI(人工知能)を活用|現状と最新の研究結果から未来の介護を考察

AIを介護に活かすために解決が必要な課題

日本の介護従事者や介護の質を守るためには、これからの介護業界はAIなどのコンピューター技術を積極的に取り入れていく必要があります。

しかしAI技術を介護に取り入れるためには、いくつかの課題をクリアしなければいけません。

以下からはAI活用を阻む4つの課題と、課題解決のためにできることについて説明します。

1.データ不足

AIとは、コンピューターが収集した膨大なデータを分析して、人間のように考えて最適解を導き出すシステムです。

つまりAIが能力を発揮するためには、介護に関する大量のデータが必要になります。データがなければAIは考える材料を持たず、導き出された回答も的外れなものになってしまいます。

しかし2021年現在では、介護に関する情報はそれぞれの介護事業所や介護スタッフが独自に持っていて、データが共有できていません。

政府としてもこの問題を解決すべく、2021年4月から「科学的介護情報システム(LIFE)」の運営を始め、AIの分析にも利用可能なデータを収集しようとしています。

LIFEについては以下の記事で詳しく解説しています。
「科学的介護」とは何か。LIFEにどう対応するか(解説動画もあり)

2.プライバシー侵害の不安

コンピューターシステムが人間社会に入ってくると、中にはコンピューターに見張られているようだと感じる人がいます。介護情報の収集も、プライバシーが侵害されるのではないかと不安を抱く人もいるようです。

近年の新型コロナウイルス感染症の流行で多く利用されるようになったリモート介護についても、同じ印象を抱いている介護者家族が存在しています。

AIがより多くの介護情報を分析できるようにするためには、要介護者本人や介護者家族のプライバシー侵害に対する不安を丁寧に取り除いていく必要があります。

フィンランドの研究機関がリモート介護の弊害について研究した結果を発表しています。以下の記事でわかりやすくまとめていますので、興味のある方は参考にしてください。
リモート介護の弊害はあるのか。高齢者の孤独を助けるロボットの倫理的問題とは

3.コストの問題

介護事業所がAI技術を導入するには、コストの問題がもっとも申告な課題かもしれません。

AIは介護に大変役に立つ技術ではありますが、その分費用もかかります。現在はまだAIを導入している介護施設等も少ないうえ、AIシステム開発企業も多くないので、コスト争いも起きにくい状況です。

ただし、AIを導入した介護事業所には補助金が支給される可能性があります。補助金を使って導入費用の負担を軽減すれば、コストの問題は解決が容易になります。

AIシステム導入に関する補助金事業については以下の記事で詳しく解説しています。
介護関連のICT補助金の概要を解説 給付対象になる介護業務とサービスとは

4.AIに対する知識不足

ほとんどの人にとってAIは「なんだかよくわからない」技術です。

そのためAI技術の利用を考えた際にも現実味が薄く、実際の介護現場でAIを使用するイメージが湧きづらくなっています。

また介護する側・介護される側の双方に「介護は人の手でやるべき」との意識がまだまだ根強く残っています。

AIがもっと社会に浸透していくためには、AIに関する知識を世の中にもっと広めて、理解を深める努力が必要です。

開発会社が考えるAI介護の課題解決方法

インタビュー

上記の課題を解決すべく、AIを開発している開発会社側も日々努力を重ねています。

ここからはAI開発会社が考える、介護業界へのAI技術活用の方向性と今後の展望について、本サイトのインタビュー記事を2つご紹介します。

誰にでも使えるAIを目指す

AIなどのコンピューター技術は難しく、特別の人だけが使う技術だとの印象がついて回ります。

介護施設等の在宅遠隔健康管理システム「安診ネット」を開発販売している芙蓉開発株式会社の代表前田俊輔氏は、これからのAIは技術ありきで進めるのではなく、世の中のニーズを理解して開発・リリースをしていく必要があると語っています。

誰もが当たり前のように使えるAIを目指して開発を進める前田俊輔氏のより詳しいインタビュー内容は、以下の記事でご確認ください。
【芙蓉開発】だれでも使えるAIで、当たり前を作る。【前田俊輔】(介護AI・介護DXインタビュー)前編

AIデータとリアルの融合

コニカミノルタの100%出資会社として「HitomeQ」などの介護システムを開発販売しているコニカミノルタQOLソリューションズの代表三浦雅範氏は、今後はAIのデジタルデータとリアルを融合させていく手段が必要だと語っています。

そのためには同社の得意とする画像認証に加え、顔認証や音声認証などの個人認証を自動化していく必要があり、日本の規制緩和も求められていくとの考えです。

三浦雅範氏へのインタビュー内容は以下の記事でご確認ください。
【HitomeQ】介護の現場をDXする コニカミノルタQOLソリューションズ代表・三浦雅範氏インタビュー(前編)

まとめ

今回はAI技術を介護に取り入れるために必要な課題をまとめました。

いくつかの課題は存在するものの、AIはこれからの介護にとって非常に有益な技術になるであろうことは間違いありません。

課題をクリアしていくために、自分が何をできるかをそれぞれが考えていきましょう。