今日は、少しユニークな話題です。ロボットの「心」について。
この記事の要点
シンプルな話ながら、考えてみると奥が深い話なので、要点をまとめたいと思います。
- 「(施設)利用者に寄り添うロボット」と「タスクに厳密なロボット」を比較した実験が行われた。
- 利用者に対する、従事者の「印象(気持ち)」を集計した。
- 「利用者に寄り添うロボット」を使用する場合、従事者が利用者に対してポジティブな印象を持っていることがわかった。
この話の道筋がすでに見えているでしょうか。
見えてくると、「なるほど」と考えるところが出てくることでしょう。
★この記事で参照している科学論文の情報
著者:Meia Chita-Tegmark, Janet M Ackerman, Matthias Scheutz
タイトル:Effects of Assistive Robot Behavior on Impressions of Patient Psychological Attributes: Vignette-Based Human-Robot Interaction Study
URL:DOI
目次
利用者だけではなくて従事者にも目を向ける
介護や医療の現場で、高齢者や患者をサポートするロボットの導入が進みつつある現代です。
しかし、ロボットの導入の歴史はまだ日が浅く、周囲の人々にどのような影響を与えるのかは、いまだにわかっていません。
一般的な考え方としては、
「ロボットを導入することで、利用者が不安がるのではないか」
という懸念が多いかと思います。
しかし、従事者も人間です。空間の中に「特異な存在」が出現し、何らかの振る舞いを見せれば、従事者もそれに少なからず影響を受けます。
そして、その影響は、結局のところ利用者に対して届くことになります。
ロボットがケアする利用者、に対する従事者の印象
タフツ大学のMeia Chita-Tegmarkら研究者たちの実験の話を紹介したいと思います。
彼らは、心理学的な集計を用いて、ロボットが従事者に与える影響を調べました。
より具体的には、以下の2つのパターンを比較したのです。
- ロボットが利用者の都合に合わせて柔軟に対応するパターン
- タスク(スケジュール)に厳密な姿勢をとるパターン
最終的に、従事者が利用者にもつ印象がどのように変わるのかをテストしました。
結果をみてみましょう。
予想通りに見えて、意外な結論

結論としては、
利用者中心でふるまうロボットの場合、そのようなロボットは「心の知能指数」が高いと認識されるだけでなく、従事者は利用者に対してよりポジティブな印象を持つことがわかりました。
これは、当たり前に見えて、意外な一面を持っています。
「ルール」と「ロボット」はちがう
なぜなら、利用者中心(つまり、利用者は自分の都合を優先できている)の場合、従事者にとっては都合がいいことばかりが起こるわけではないからです。
学校を想像してみましょう。
学校のルールに従う生徒が模範的であり、先生にとっては「ポジティブ」なはずです。
しかし、固定的なルールとは違い、利用者を指示する存在がロボットの場合、利用者の都合に合わせられる仕組みの方が、従事者にとっては「ポジティブ」なのだそうです。
少し、この不思議さが伝わりましたか?
あなたの周囲で何かのロボットを導入するときは、少し思い出してみてほしい話です。
知性をもつ機械と共生する
産業革命後、人々の身の回りには機械が溢れるようになりました。
仕事をする上で、生産性の向上に欠かせないのが、機械による工業化。
そんな時代になって久しいですね。しかし、現代における機械の取扱い方は、従来と少し様相が変わってきたようです。
それは今回の話のように、「心の知能指数」が高い機械が出現してきたからです。

新しい時代にひるむことなく、良いスタイルを築いていけたらいいですね!
今回紹介したのはロボットの存在が、施設の従事者に与える心理的な影響でした。しかしそれ以前に、ロボットははたして普及するのでしょうか?下記の記事でその点についての研究を紹介していますので、ぜひ合わせてご覧ください。
