今回のテーマは「脳年齢」です。脳年齢と言っても、ときどき流行るIQテストのような話ではありません。
この記事の要点
ではどんな話かというと、以下のような内容です。
- 脳の老化を「視ること」は大事だ。
- AIの技術で、新しく分かることが増えた。
- 老化に影響をあたえる脳の範囲がわかった。
AI(人工知能)の技術で、人間の脳のことを研究する人たちがいます。
老化のメカニズムがわかったら、例えばそれを抑えることで快活な高齢者が増えて、社会が元気になるかもしれません。
★この記事で参照している科学論文の情報
著者:Nicola Amoroso, Marianna La Rocca, Loredana Bellantuono, Domenico Diacono, Annarita Fanizzi, Eufemia Lella, Angela Lombardi, Tommaso Maggipinto, Alfonso Monaco, Sabina Tangaro, Roberto Bellotti
タイトル:Deep Learning and Multiplex Networks for Accurate Modeling of Brain Age
URL:DOI
今回のお話は他の記事に比べると、科学的で、かたい話題に聞こえるかもしれませんが、「脳みそシミュレーターの話か」という感じで、ぜひ気楽に聞いてください。
老化を少し科学的に考える
脳の老化を意識することってあるでしょうか。
物覚えが悪いなと感じたり、反射神経がにぶったりしたときに、脳の年齢を意識するかもしれませんね。
高齢者は脳の老化と向き合っている方々とも言えます。
しかし、意識して何となく自覚するだけでは、アルツハイマーなどの病気に対して対策をうてる状態とはいえません。
MRIをご存知の方は想像がつくかもしれませんが、脳を可視化して調べるには、MRIの脳スキャンを使うことが多いです。
アルツハイマーをはじめとする病気にかかると、脳の年齢と、実際の年齢に、ずれが生じます。脳スキャンによって、そのずれを調べるとともに、老化のメカニズムを明らかにすることが、だんだんできるようになってきました。
その研究をさらに強くするために、イタリアにあるバーリ大学のNicola Amorosoら研究者たちは、AIの新しい技術をつかいました。
より具体的には、MRIで得られた脳のモデルをAIによって調べさせ、「その脳の年齢」を出すことを試みたのでした。
40〜60歳の脳年齢は、誤差が出やすい

上の画像は、MRIによって脳が断片的に切り取られて記録される様子です。
右脳と左脳を分けて、機械学習(AI分野の技術手法)によって分析し、脳年齢を予測させました。
※機械学習って何?という方には、こちらの記事で簡単に説明しています。
その結果、平均、4.7年の誤差(平均絶対誤差)で、脳年齢が予測されることがわかりました。
対象のひとが40〜60歳の場合は、誤差が一番多くなるとのことでした。
見た目でわからないことを視る
さて、今日の話はかなりややこしかったかもしれません。
少なくとも、現時点では、このような方向性の取り組みが行われているのか、という認識だけでもいいかと思います。
しかし一つ言えることは、新しいテクノロジーによって、人の目には見えないものが何とか見えるようになってきたということです。
特に今回の脳のような場合は、そこに病気を抱える人とそうでない人の違いが一目ではわかりません。

テクノロジーの力で、他者への理解、自分への理解が進むといいですね!
