介護事業所のシフトに関する悩みと苦労を解決するアプリ&ITサービス7選

介護事業所のシフトに関する悩みと苦労を解決するアプリ&ITサービス7選

最終更新日 2023.07.25

この記事の要点

  1. 施設介護の8割は2交替制シフトを採用
  2. 通所介護・訪問介護は早番・遅番の2交替制
  3. シフトについては管理者・スタッフそれぞれが悩んでいる
  4. アプリやITサービスを使えば簡単に公平なシフトが作成できる

介護事業所の管理者にとって毎月のシフト表作成は負担の大きい仕事です。

今回は介護のシフトについて介護サービスごとのシフト例と、よくある悩みや苦労を解決するシフト管理に役立つアプリとサービスを解説します。

介護事業所のシフトに関する悩みと苦労を解決するアプリ&ITサービス7選

介護職のシフトはサービスにより異なる

介護事業所のシフトは、サービスの種類が24時間稼働の入居施設なのか、それとも通所介護や訪問介護など、日中をメインとするサービスなのかによって異なります。

以下からは施設介護・通所介護・訪問介護で一般的に採用されているシフト例を紹介します。

施設介護のシフト例

日本医療労働組合連合会の調査によると、24時間稼働している施設の82.0%は2交替制を採用しています。次いで多いシフト種類は3交替制の15.8%です(変則3交替含む)

また変形労働時間の協定を結んでいる介護施設では、4交替制も採用されています。

■2交替シフトの例

種別勤務スケジュール勤務時間数
日勤9:00~18:008時間
夜勤16:00~翌10:0016時間

■3交替シフトの例

種別勤務スケジュール勤務時間数
日勤8:00~17:008時間
準夜勤16:00~翌1:008時間
夜勤00:00~翌9:008時間

■4交替シフトの例

種別勤務スケジュール勤務時間数
早番6:00~15:008時間
日勤8:00~17:008時間
遅番14:00~21:008時間
夜勤20:00~翌9:0012時間

通所介護のシフト例

施設へ通うデイサービスやデイケアなどの通所介護施設では、多くが早番・遅番の2交替制を採用しています。

種別勤務スケジュール勤務時間数
早番8:00~17:008時間
遅番9:00~18:008時間

訪問介護のシフト例

ホームヘルパーが利用者の居宅で介護を行う訪問介護のシフト例は、基本的に通所介護と同様です。

ただし訪問介護の場合には常勤の正社員や契約社員だけでなく、利用者の訪問介護予定にあわせて働く非常勤のホームヘルパーも大勢いるため、既定シフトに依存しない働き方もできます。

種別勤務スケジュール勤務時間数
早番8:00~17:008時間
遅番9:00~18:008時間

シフトに関する管理者の悩み

悩む経営者

シフトを組む上で、介護事業所の管理者はどのような点に苦労しているのでしょうか。

以下からは、シフト作成時の管理者の悩みを具体的に見ていきましょう。

多方面の法令・決まりの遵守が必要

どの介護事業所でも人手不足に悩まされていますが、介護事業所では人手が足らないからといって、サービス提供時間帯に介護人員を不足させるわけにはいきません。

介護保険法では介護サービスを提供する際に、利用者の人数によって必ず配置しなければいけない人数が決まっています。

なおかつ、ひとりひとりの労働時間についても労働基準法で定められているため、人手が足りないから多く働いてもらおうとしても、時間外労働の上限(月45時間・年360時間)以上には働けません。

介護事業所のシフトを作成する上では、他の業種よりも多方面の法令や決まりを考慮しなければならなくなります。

扶養範囲を超えてはいけない(パートの場合)

パートタイムで勤務している方が配偶者等の扶養に入っている場合には、年間の給与を103万円以内に抑えたいということもあるでしょう。

頼りになるパートさんにもっと働いてもらいたくても、収入を扶養範囲内にするためにシフトから外さなければいけないこともあります。

スタッフ間のトラブルになりやすい

さらに、出来上がったシフトによっては介護スタッフ間で軋轢が生じる可能性もあります。

勤務日数や夜勤回数の差により不公平感が生まれやすい点もさることながら、チームプレイの多い介護施設では、シフトに入るスタッフ同士の相性も考慮が必要な場合もあります。

シフトを考える時間がない

人手不足の折、シフトを作成する介護事業所の管理者もプレイングマネージャーの役割を担わざるを得ません。

事務所でシフトを考える時間がなかなかとれず残業したり、自宅に資料を持ち帰る管理者も存在します。

シフトができあがった後にも「やっぱりこの日は休みたい」と言い出すスタッフが出てくると、シフト交替の人員を探すのも一苦労です。

シフトに関するスタッフの悩み

シフト作成に際しては多くの管理者が悩んでいますが、シフトを受け取るスタッフ側としてもいろいろな不満や悩みを抱いています。

今度は、シフトに関する介護スタッフ側の悩みも確認してみましょう。

不公平になるときもある

人間が作るシフトはどうしても「無理を言っても許してくれる方」にしわ寄せが行きがちです。

一部の方に夜勤や連続勤務が集中すると、態度には表さなくても不満が生じます。

また人員配置基準には達しているシフトであっても、新人スタッフとベテランスタッフの組み合わせでは、仕事量がベテランスタッフに集中することもあり得ます。勤務時間だけでなく人員の組み合わせによっても不満が出る可能性があります。

シフトがきつい

仕事と休みのバランスが悪いシフトだと、スタッフが十分に休息を得られないまま次の勤務が始まる可能性があります。

疲労がたまると思わぬ事故につながりやすくなるため、注意が必要です。

休みたくても代わってもらえない

体調をくずしたり突発的な予定が入ったときに、なかなかシフトを代わってもらえない介護スタッフも存在するようです。

シフトを交代してくれる方を探すにしても、介護施設などでは勤務時間の違いでなかなか顔を合わせないスタッフも多く、連絡が取りづらい点も悩みどころです。

シフトの良し悪しが介護職員の離職率に影響

シフトに対する介護スタッフの不満が高まると、そのスタッフが別の介護事業所、あるいは別の業種に転職する可能性が生じます。

介護労働安定センターの「平成29年度介護労働実態調査」によると、介護士の離職理由として「人間関係」が一番多く挙げられています。

介護職員の離職を防ぐためには、シフトをうまく調整してスタッフ間の人間関係を円滑に保つ努力をしなければいけません。

実際に、介護職員の早期離職防止や定着促進に必要な方策は「本人の希望に応じた勤務態勢への変更・労働条件の改善」がトップに挙げられています。

この他の介護士の離職理由を知りたい方は以下の記事をご覧ください。

介護業界の離職率をデータから検証 職員の離職を防ぐ方策とは

介護のシフト作成アプリの選び方・ポイント

管理者の負担を減らし、スタッフからも不満の声が上がらないようにするためには、シフト作成に役立つアプリやサービスを利用すると良いでしょう。

自分の事業所に合うものを選ぶためには、次の2つの観点が大切です。

介護サービスごとの要件を満たしているか

介護事業所のシフトは、施設介護・通所介護・訪問介護によって異なるため、それぞれに適したアプリやサービスを選びましょう。

施設介護で24時間稼働している事業所は、日中だけでなく早朝や深夜の勤務があり、2〜4交替シフトを取っています。

こうした事業所では、複数ある勤務時間帯をスタッフが選んで簡単に入力できることが必要です。

一方で、通所介護や訪問看護の事業所は、日中をメインに稼働しているので、シフトは比較的シンプルです。

ただし、訪問介護では既定のシフト通りではなく、利用者の訪問介護予定にあわせて働く非常勤のホームヘルパーも大勢います。

そのため、スタッフが勤務時間を自由に設定できる必要があります。

管理者・スタッフの悩みが解決できるか

アプリやサービスの導入にあたっては、管理者とスタッフの悩みを解決できることが必要です。

例えば、勤怠データと連携する機能があれば、法令違反のチェックや資料作成が簡単に行えて、管理者の負担軽減につながります。

また、スタッフの資格やスキルを登録する機能があれば、新人スタッフとベテランスタッフのバランスが取れた人員配置ができます。

スタッフ間の不公平感が改善し、働きやすさに配慮したシフト作成が可能になります。

シフト管理に役立つアプリ&サービス7選

管理者の負担を減らし、スタッフからも不満の声が上がらないようにするためにはいったいどうしたら良いのでしょうか。

以下からは、シフトの悩みを解決できるアプリやサービスを紹介します。

シフトカイゴ

シフトカイゴはダウンロード数20万を突破し、いまもっとも多くの介護士に利用されている介護士向けのシフト管理アプリです。

勤務予定とプライベートの予定が一元管理でき、完全無料アプリなのにバナー広告など余計な表示がされない点も評価されているポイントです。

らくしふ

らくしふは日本人の多くが利用しているLINEを利用したシフト作成・管理サービスです。

シフト未提出者への催促が自動で行われたり、勤怠データと連携もできるなど、シフトを作成する事業所側の労力が大きく軽減できます。

  • 利用する人:介護事業所・介護職員
  • シフト自動作成機能:なし
  • 専用アプリ:なし(LINE使用)
  • 利用料金:要問合せ
  • 製品紹介サイト:株式会社クロスビット|らくしふ

おまかせシフトちゃん

おまかせシフトちゃんはiPad専用のシフト表作成アプリです。

インターネットに接続できない環境でも、iPadさえあればログイン不要でどこでもシフトが作成できます。

Shiftmation

ShiftmationはAI(人工知能)がボタンひとつでシフトを自動作成してくれるクラウドサービスです。

夜勤や連勤が特定の人物にかたよらないようにしたり、資格やスキルに応じてバランスよく人員調整できるなど、介護職員の働きやすさに配慮したシフト作成ができます。

AIはシフトの自動作成だけに役立つ技術ではありません。近年では介護事業所向けにさまざまなAI製品が開発、販売されています。

CWS for Care

CWS for Careはシフト作成から勤怠管理、介護保険等の書類の出力までを一元で行えるクラウドサービスです。

介護事業所の運営に必須の「従業者の勤務体制及び勤務形態一覧表」にも対応し、月々の勤怠管理から自動作成できます。

ヘルパーアシスト

ヘルパーアシストは訪問介護事業所のシフト作成に特化したクラウドサービスです。

事業所とホームヘルパー以外に利用者様からもシフト確認が可能なため、急なシフト変更の際にも利用者様へ訪問ヘルパーの変更連絡を行う必要がありません。

また勤怠管理も一元で行え、実績データから給与計算も自動的に計算できます。

ケアズ・コネクト

ケアズ・コネクトは、コミュニケーション、情報共有、勤怠、モチベーション、人材管理などの機能を事業所ニーズに合わせた必要最小限の組み合わせで、規模に応じたICTを提供

  • 利用する人:介護事業所
  • シフト自動作成機能:あり
  • 専用アプリ:なし
  • 利用料金:月額300円(1名あたり/税込)
  • 製品紹介サイト:https://carez.jp/

「介護+AI」で何ができるか?介護施設向けAI商品提供企業10社を紹介

介護事業所が作成する勤務表とは|利用シーンと作り方・自動作成ソフト4選

まとめ

今回は介護事業所のシフトについて、シフト例と管理者・スタッフそれぞれの悩み、シフト管理に役立つアプリ・サービスを説明しました。

シフトを作成する管理者も、できあがったシフトを確認する側のスタッフも、皆同じ介護事業所で働く仲間です。

介護業界で働く方が笑顔で働けるよう、利用できるアプリやサービスを存分に活用しましょう。

臼井 貴紀
● 監修者情報
臼井 貴紀 Usui Kiki
Hubbit株式会社 代表取締役社長。藤田医科大学客員教員。早稲田大学卒業後、ヤフー株式会社に新卒入社。営業、マーケティング、開発ディレクション、新規事業開発など幅広く担当。その後、ベンチャー企業に転職しAIを活用したMAツールの立ち上げを行った後、Hubbit株式会社を設立。高齢者施設に3ヶ月住み込んで開発したCarebee(ケアビー)は、日本経済新聞、NHKおはよう日本、ABEMA PRIME等に出演。
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