アシストスーツは高齢者のADL低下予防にも役に立つ

アシストスーツは高齢者のADL低下予防にも役に立つ

最終更新日 2022.11.21

この記事では、ADL低下人口の増加に対する方策の一つとして有望なテクノロジーである、アシストスーツについて紹介します。

高齢者人口の増加、ADL低下人口の増加

ADL低下とは何か?

人間の体は老化すると、筋肉量や骨密度が減少するなどの変化が起こります。その結果、日常生活に関わる動作を行うのが難しくなることがあります。
日常生活動作はADL(Activities of Daily Living)と呼ばれ、日常生活動作を行うのが難しくなることをADL低下と言います。
ADLの例には、洗面、食事、排泄、移動、更衣、入浴などがあります。

高齢者人口は増加傾向

世界的に高齢者人口は増加しています。世界保健機関(WHO)によると現代では殆どの人が60年以上生き、さらに国連のデータに基づくと2050年までに高齢者は20億人に達するとのことです。

グラフ
国連のデータに基づいて表示された高齢者人口の推移。黄緑とオレンジは発展途上国、青は先進国。

高齢者人口、もといADL低下人口が増加することによる影響は、介護の負担増加に繋がります。

日本では、2022年から介護の人員規制緩和などの動きも見られています。そして介護士一人当たりの被介護者数が増える背景には、ICT活用が前提となっています。
そのため今後、介護分野での活用が期待できるICTツールの情報が求められています。

介護者だけでなく高齢者もアシストスーツを活用できる

そんな中オーストラリアのAkim Kapsalyamovら研究者グループは、テクノロジーが高齢者のADL低下を防ぐ可能性を調査しました。白羽の矢が立ったのは、アシストスーツ(またはパワードスーツ)でした。

現在のところ、アシストスーツは高齢者よりも介護者が着用することのほうが一般的ですが、将来的には高齢者向けのアシストスーツも需要が高まる可能性があります。
介護者がアシストスーツを着用することに関するメリット等については下記をご覧ください。

参考▶︎介護用アシストトスーツのメリット・デメリット・選び方 おすすめアシストスーツ6選

アシストスーツは高齢者のリハビリに使用されることもありますが、ADLを直接サポートするという用途も有望です。高齢者がアシストスーツを着用することでADL低下が予防できる(機械のアシストありでADLを実行できる)のが当たり前になる未来は来るでしょうか?

参照する科学論文の情報
著者:Akim Kapsalyamov, Shahid Hussain, Prashant K. Jamwal
タイトル:State-of-the-Art Assistive Powered Upper Limb Exoskeletons for Elderly
URL:doi.org/10.1109/ACCESS.2020.3026641

下記では研究報告内容をご紹介します。

ADLをサポートする原理

まず、人間の上肢(手・指~肘~肩)には下図のように7つの自由度があります。多くのADLは全ての可動域を駆使する必要はありません。よって、外部の力によって上肢いずれかの部位をサポートをすれば高齢者のADLを支えることが可能なケースが多くあります。

可動域

上記の原理に基づいた過去のアイデアは、手を吊り上げ2か所の弦を引っ張ったり緩めたりすることで、ADLを補助する仕組みでした。このアイデアは1995年に日本の研究者によって考え出され、2008年に別の研究者の手によってデバイスとして具現化されました(下図)。

吊り上げ式

その後、卓上型だけではなく装着型(スーツ型)のデバイスが考え出され、中には製品として販売に至るものが出てきました。

NEXT▶︎高齢者向けアシストスーツの開発事例

臼井 貴紀
● 監修者情報
臼井 貴紀 Usui Kiki
Hubbit株式会社 代表取締役社長。藤田医科大学客員教員。早稲田大学卒業後、ヤフー株式会社に新卒入社。営業、マーケティング、開発ディレクション、新規事業開発など幅広く担当。その後、ベンチャー企業に転職しAIを活用したMAツールの立ち上げを行った後、Hubbit株式会社を設立。高齢者施設に3ヶ月住み込んで開発したCarebee(ケアビー)は、日本経済新聞、NHKおはよう日本、ABEMA PRIME等に出演。
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