介護用アシストスーツの使用効果 ーINNOPHYS・サイバーダイン製の導入施設調査からー

介護用アシストスーツの使用効果 ーINNOPHYS・サイバーダイン製の導入施設調査からー

この記事では介護用アシストスーツを実際に使用している現場の状況と、導入にあたってのメリットや注意点について、科学的調査をもとに紹介します。

介護用アシストスーツとは

介護現場で役立つと期待されるアシストスーツ(またはパワードスーツ、パワーアシストスーツ)を導入する事業所は増えてきています。

介護用アシストスーツは、介護現場での介護士の力仕事を支える装置です。被介護者の体を支える作業において腰への負担を軽減する機能などがあります。また重量物を持つなど様々な作業で役に立つため、介護現場以外での活躍も期待されています。

多くのアシストスーツは高額ですが、介護事業所がアシストスーツを導入する際には助成金を利用することができます。助成金については下記で紹介しています。

参考▶︎介護関連の助成金まとめ 介護事業所向け・在宅介護者家族向けにわかりやすく紹介

また、介護用アシストスーツには色々な種類があります。例えばロボット型のものもあれば、ロボット型ではないものもあります。介護用ロボット全般のメリットについては下記で紹介しています。

参考▶︎介護用アシストトスーツのメリット・デメリット・選び方 おすすめアシストスーツ6選

国内だけでも幾つかの介護用アシストスーツが開発・販売されています。本記事で事例として紹介するのは、INNOPHYS(株式会社イノフィス)の「マッスルスーツ」シリーズや、サイバーダイン(株式会社CYBERDINE)の「HAL」シリーズです。

INNOPHYS「マッスルスーツ」

画像は後述する論文より引用

特徴

  • 空気圧を利用した人工筋肉で動作をサポート
  • 電気不使用のため稼働時間に制限なし
  • 軽量設計(重量3.8kg)
  • 装着に必要な時間は10秒
  • 防水、防塵設計のため、水場や屋外でも使用可能

INNOPHYS「マッスルスーツ」の公式ページはこちら

サイバーダイン「HAL®腰タイプ介護・自立支援用」

画像は後述する論文より引用

特徴

  • 移乗介助や体位変換介助などの介助動作時に、腰への負荷を低減する
  • 防水機能があるため入浴介助でも使用可能
  • ユーザーの運動意思を読み取り、意思に従った動作を実現する
  • 装着にかかる時間は最短で10秒
  • 介護者だけでなく被介護者の自立支援にも有効

サイバーダイン「HAL®腰タイプ介護・自立支援用」の公式ページはこちら

現場でどのように役立つか?

利点は把握していても、アシストスーツが介護現場でどのように活躍しているのか実際のところを知りたい方は多いのではないでしょうか。各アシストスーツの導入実績は増えており、各現場で使用効果が明らかになってきています。
国立長寿医療研究センターの加藤氏ら研究者たちは、アシストスーツを24ヶ月以上利用している介護施設で3週間にわたりアシストスーツの利用状況を記録し分析した結果を報告しました。

参照する科学論文の情報
著者:Kenji Kato, Tatsuya Yoshimi, Shohei Tsuchimoto, Nobuaki Mizuguchi, Keita Aimoto, Naoki Itoh & Izumi Kondo
タイトル:Identification of care tasks for the use of wearable transfer support robots – an observational study at nursing facilities using robots on a daily basis
URL:doi.org/10.1186/s12913-021-06639-2

使用効果を確かめるアシストスーツとしては、INNOPHYS「マッスルスーツ」、サイバーダイン「HAL」が採用されました。また検証を行う実地としての介護施設には、ユニットケア(個別介護)方式の施設が選ばれました。
マッスルスーツは2台が合計18人の介護者および合計59人の被介護者に対して配られました。HALは1台が合計7人の介護者および合計9人の被介護者に対して配られました。
そして以下のポイントで調査が行われました。

  • 各アシストスーツが、どのタスクにどの時間帯でどれだけの時間使われたのか
  • 各アシストスーツが、身体的・精神的な負荷を軽減したと介護者が感じたのか

各アシストスーツが使用されるタスクの違い

調査の結果、マッスルスーツ・HALともに、間接介助(体に直接触れない介助)と比べて直接介助(身体に直接触れる介助)のタスクで長く使用されたようでした。介助時間全体に対する直接介助の時間は約5.5〜6割でしたが、各アシストスーツを装着した状態で行われた介助時間全体に対する直接介助の時間は約7〜7.5割でした。

ただし調査後の面接で「アシストスーツの装着に時間がかかると、突発的な直接介助にうまく対応できない可能性がある。そのため、アシストスーツは日常的に事前に装着することが望ましい」という内容があったそうです。

下の図は直接介助に焦点を当てて、タスクごとに各スーツが使用された時間帯および時間を表したものです。

マッスルスーツ装着時に行われるケアは特に「移動」「トイレ」のサポートが際立っていました。時間帯としては午前中に集中しており、特にトイレのサポートに関しては朝の早い時間帯に使用されていました。調査終了後のインタビューによると、朝の早い時間帯におけるトイレのサポートは、予めマッスルスーツを着ることが割り当てられた介護士が行ったそうです。

HAL装着時に行われるケアは「移動」「トイレ」以外にも「食事」のサポートが際立っていました。食事のサポートでは午後に使用される傾向が目立ちました。HALはマッスルスーツに比べてコンパクトで、座りながら使用することが可能なので、食事のサポートでもより便利に使用されたようです。

身体的、精神的な負荷を軽減する

マッスルスーツを使用した18人の介護士とHALを使用した7人の介護士に対して、各アシストスーツが「身体負荷・精神的ストレスを軽減したか」について訊ねるアンケートと面談が行われました。それぞれの質問に対しては「そう思う」「ややそう思う」「余りそう思わない」「そう思わない」の4項目から回答を得ました。結果は下の図です。

身体負荷を軽減するかどうかについては、マッスルスーツを使用した介護士全員が「そう思う」あるいは「ややそう思う」と回答し、HALを使用した介護士のうち66.6%が「そう思う」あるいは「ややそう思う」と回答しました。

精神的なストレスを軽減するかどうかについては、身体負荷を軽減するかどうかについては、マッスルスーツを使用した介護士のうち66.6%が「そう思う」あるいは「ややそう思う」と回答し、HALを使用した介護士のうち50%が「そう思う」あるいは「ややそう思う」と回答しました。

アシストスーツを導入するにあたって

アシストスーツを実際に長期間使用している介護施設での調査から、アシストスーツはそれぞれの特性に合った多様な使い方ができることが示唆されました。例えばマッスルスーツは早朝の作業で特に役立ち、HALは食事のサポートでも役立つことが示されています。
また、アシストスーツ全般(少なくとも今回の2種類)で言えそうなことも浮き彫りになりました。それはトイレのサポートなど直接介助で特に役立つという点です。今後どのアシストスーツを導入検討するとしても参考になる点ですね。

またアシストスーツを導入時にすぐ実践すべきこととしては、アシストスーツを使用する日常を意識したルーティーンに見直すことが言えます。例えば、突発的な直接介助が必要になってから着用するのではなく、そのような状況を見越して予め装着するように習慣付けることが重要です。
また、充電などのメンテナンスにも手間がかかるので、使用後や使用間にも時間がかかることを忘れてはいけません。

また、今回の調査では入浴のサポートに関してはアシストスーツはあまり活躍していませんでした。その理由は、機器がバスルームの壁にぶつかるというシンプルなものだったようです。導入を検討しているアシストスーツに防水機能がついていたとしても、自身の浴室の環境で問題なく使えるのかどうかをチェックしてみるといいですね。

まとめ

今回の記事では、INNOPHYS(株式会社イノフィス)のマッスルスーツと、サイバーダイン(株式会社CYBERDINE)のHALを事例として、介護で役立つアシストスーツの実際の使用効果と、今後導入するにあたって調査から言えることを紹介しました。

使用効果としては、アシストスーツを24ヶ月以上使用している介護施設のスタッフの多くが実際に「身体的負荷、精神的ストレスを軽減する」と回答していることから、ポジティブな状況だと言えますね。

また今回の調査から分かった、今後導入するにあたって注意すべき点(チェックリスト)をまとめると以下のようになります。

  • アシストスーツごとの特性の違いを理解、検討しているか
  • 直接介助をサポートして欲しいというニーズがあるかどうか
  • アシストスーツを使用することを前提としたルーティーンを設計できるか
  • 「防水機能つき」と言われるだけでは安心せず、浴室の環境で問題なく使えるか検討したか

介護人材の離職理由では「力仕事による肉体的な負荷」が挙げられているので、人材の定着を目的とした方策の一つとしても、今後アシストスーツの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

参考▶︎介護業界の離職率をデータから検証 職員の離職を防ぐ方策とは

おまけ:HAL介護支援用腰タイプについての動画(サイバーダインYouTubeチャンネルより)