ケア業界のパイオニアに道を訊くインタビュー企画、第20弾です。
今回は、訪問理美容サロン「KamiBito(かみびと)」を中心に、高齢者に向けたさまざまなサービスを展開する日本介護システム株式会社の常務取締役 寺北大悟さんにお話を伺いました。
この記事の要点
- 日本介護システム株式会社は訪問理美容を中心に幅広く高齢者の生活支援を行う
- 「KamiBito」は高齢者のお困りごとを聞くためのドアノックツール
- 訪問理美容サービスで高齢者が得るものは美しさだけでなく心の満足感
日本介護システム株式会社 常務取締役 寺北 大悟氏のプロフィール

寺北 大悟(てらきた だいご)氏
1977年生まれ。大分県大分市出身。
大学卒業後、食品メーカーに入社後、訪問ビジネスのフランチャイズ本部で事業責任者を経て「超高齢社会をハッピーに」を掲げる、代表の想いに共感し日本介護システム株式会社に入社。
訪問ビジネスで培った経験を活かし、散髪という、誰しもに身近なサービスを日本中に提供する。
散髪をきっかけに、高齢者の様々なお悩みを解決できる1番の会社になる。その想いを1日も早く実現できるように様々な業務に取り組んでいる。
インタビュー
高齢者の生活全般を支援する日本介護システム株式会社
——最初に、御社の紹介をお願いします。
寺北:私たち日本介護システム株式会社は、高齢者の生活支援サービス「家事処(かじどころ)」や、高齢者のご自宅や介護施設に出張訪問してカットや顔剃りなどをする訪問理美容サロン「KamiBito」等、「超高齢社会をハッピーに」の理念に基づき高齢者の方々の生活支援を行う会社です。

「家事処」や「KamiBito」以外にも、要介護者の外出や旅行のお手伝いをする「日本介護トラベル」や、介護施設向け宅食サービス、老人ホームのご紹介などさまざまなサービスを展開しています。
本社は大阪府ですが、全国100拠点以上の体制で全国の高齢者様にご利用いただいています。
——今回は御社の主力サービスである、訪問理美容サービスの「KamiBito」を中心にお話を伺いますが、それ以外にも幅広くサービスを展開しているんですね。

寺北:もともと弊社代表の大友が最初に始めたサービスは、生活支援の「家事処」だったんですよ。

「家事処」は簡単に言えば便利屋さんですね。
ご自宅に伺って掃除もするし草刈りもする、いわゆる家事代行です。
その便利屋さんをやっているうちに、利用者様から「散髪はできないの?」というお願いをされたんです。そしたらまあ、便利屋としては「じゃあやりましょう」と。
——なるほど。それがきっかけで散髪を始めたのでしょうか?
寺北:いえ、理容師や美容師は100%国家資格が必要ですし、そもそも訪問理美容って誰に対してもやって良いわけではないんですよ。
基本的に理容師や美容師は、理容所もしくは美容所以外では業務を行ってはならないという法律があるんです。
——それでは、外出することが難しい方は困りますよね?
寺北:そうです。そのため国では、高齢者でなくても入院している方とか足を骨折した方とか、外出できない方のためなら理容所や美容所以外の場所でもサービスを提供して良いという特例を設けています。
そこで「家事処」の利用者様のご要望にお応えするために理容師さんや美容師さんを探し、先ほどの特例を使って訪問理美容サービスをしてもらうシステムを作ったところ、そのシステムがどんどん伸びて、現在では「KamiBito」が弊社の主力サービスになったというところですね。
——「KamiBito」は利用者様の声から生まれたサービスなんですね。
「KamiBito」は高齢者のお困りごとを聞くためのドアノックツール
寺北:散髪って、現代人の生活には欠かせない身だしなみのひとつですよね。かつ利用周期が短い。
——そうですね。切っても髪はすぐ伸びますし。
寺北:だから私は「KamiBito」をドアノックツールだと思ってるんですよ。
——ドアノックツールですか?
寺北:はい。弊社が最初に始めたサービスは便利屋さんみたいなものだと説明しましたが、便利屋さんって、何でもやれそうでいて、実は何もできないんですよ。
便利すぎて、何を頼んで良いか分からない。

——メニューが豊富すぎるラーメン屋さんみたいなものですね。
寺北:それにやっぱり人って、よく知らない人を自宅にあまり入れたくないじゃないですか。
——そうですね。身構えてしまう方が多いと思います。
寺北:散髪は生活に必須のサービスなので、スムーズに利用者様のお宅へ入れていただけるんですね。
そこから「ここに手すりをつけると楽じゃない?」と介護リフォームのご提案をしたり、向こうからも「あれに困ってるんだけど…」とご相談されたりとか。
「KamiBito」を通じて弊社のことを知ってもらうことで、いろんな介護保険以外のサービスが提供できる。別に商売的な話ではなくて、高齢者の方の潜在的なニーズに気づいてあげられて、問題が解決できるきっかけ作りになっていると思うんです。
——あくまでも高齢者の方々の生活全般を考えてのご提案なんですね。
寺北:よく「KamiBitoと他の訪問理美容サービスとの違いは何ですか」と聞かれるんですが、他の訪問理美容さんは基本的に、理髪店や美容室を営んでいる方が売上げアップのために訪問をするとか、手が空いている時間を使うためとか、将来性があるという理由で、散髪屋さんの延長線上で訪問理美容をやっているところが多いと思います。
メインが散髪、髪を切ることが商売。
だけど「KamiBito」は高齢者が求めたものが形になっただけで、高齢者の方々が幸せに暮らしてもらう未来を作るためのツールとして散髪をしているんだよ、と説明しています。
——サービスの根底にある考え方が違うんですね。
寺北:なので、どちらかというと「KamiBito」は散髪自体が最終目的ではなくて、そこから「家事処」など他のサービスや旅行サービスをご提案したりとか、自社では行わないサービス…例えば後見人探しのお手伝いや空き家の管理など、そのような要望に応えて取り次ぎをするのも弊社の仕事だと思っています。
