株式会社NEWCHOICE 代表取締役 川部氏 | インタビュー第34弾

株式会社NEWCHOICE 代表取締役 川部氏 | インタビュー第34弾

裸のつきあいで見えてきた課題

川部:あるデイサービスに行ったときのことです。

そのデイサービスは要介護者だけでなく自立した高齢者も利用できて、きれいな施設と充実した設備、いろいろなレクリエーションが用意されていました。

絵画クラブとか手編みとかアロハダンスとか、自分がこれまで行った介護施設の中でもトップクラスでレクリエーションにリソースを割いている施設です。

そこには立派な檜風呂があって、施設の方のご厚意で私も入浴させていただきました。そのとき1人のおじいちゃんが入ってきて、2人でお風呂に入ることになりました。

そのおじいちゃんは「自分はお風呂に入るためだけにここに来ている」とおっしゃいました。

施設としては入浴するだけでなく介護予防や機能改善のレクリエーションもしてもらって、高齢者コミュニティの中で楽しんで帰ってもらいたいという狙いがあるのですが、その方はお風呂に入るだけで他のことをやらずに帰ってしまう。

——どうしてその方はレクリエーションに参加しないのでしょうか。

川部:その方にお伺いしたところ、「アロハダンスなんてやりたくないよ。編み物しても折り紙しても全然楽しくない」とおっしゃいました。

介護施設のレクリエーションは、手芸やダンスなど女性向けのレクリエーションが多いように感じています。男性が楽しめるレクリエーションが少ない。

たしかに自分が高齢者になったときにフラダンスをやりなさいと言われたら抵抗がありますし、それなら介護施設に行きたくないなと思ってしまいます。

その後にスタッフさんに聞いてみても、各レクリエーションの男性参加率はほぼゼロで、男性の利用者自体もあまりいないとのことでした。

介護業界の慢性人手不足でレクリエーションがおざなりに

川部:しかし同時に見えてきた課題は人手不足です。いま人手不足に悩んでいない介護事業所はないように感じます。

そのため、男性向けレクリエーションをやりたくても、そもそもレクリエーションの部分にリソースを割けられない。やはり排泄とか入浴とか食事、そういう三大要素の方に人もお金も時間もかけざるを得ない状況です。

ですが、そもそもレクリエーションって何のために行われているのだろうかと考えると、認知症予防や介護度の維持や向上目的の側面も大きいと思います。

それは分かっていても、施設側も手がかけられない。立派な体育館や高級ホテルのような立派な内装の施設があっても、それが全然活用できないという現実があって、これはなんとかしたいなと考えました。

エンタメの力が介護業界を変える

川部:「デイサービス ラスベガス」というデイサービス施設はご存知でしょうか?

——はい。最近注目されている施設ですね。

デイサービス ラスベガス | TOP

川部:これまでの一般的なデイサービスとは違い、ご利用者がカジノで楽しめるエンターテイメント系デイサービスですが、私はこのデイサービスのありかたに強く共感しました。

このデイサービスは、エンターテイメントとしての満足度がご利用者に評価されているのはもちろんですけれども、医学的にも非常に高い数字が出ています。

デイサービス ラスベガスに2年通った人の要介護度は82%維持・改善できているとの成果が出ています。

他にも私が注目したのが、ここのデイサービスの男性利用者の多さです。男性の利用率が7割というのは、他のデイサービス利用者の男女比率と比較すると驚くほどの多さなんですよ。

デイサービス ラスベガス | 特徴

——すべてのデイサービスをカジノ型にすれば課題が解決するのでしょうか。

川部:デイサービス ラスベガスにも事業的な課題が存在しているため、すべてのデイサービスが同じようにできるとは限りません。

コストもかかりますし、スタッフの育成も必要です。既存施設をカジノ形式に作り替えたらこれまで利用してきた方からの反発もあるでしょう。

——リニューアルした後にもし失敗したらと思うと、大がかりな改修はためらわれますね。

川部:デイサービス ラスベガスと同じようなサービスを導入したいと希望している介護事業者はたくさんあるようなのですが、なかなかハードルが高くて拡大しにくいという課題があります。

そこで、弊社が現在準備しているサービスが、介護事業所向け派遣型エンターテイメントの「SISYO(シショー)」です。

エンタメ派遣サービス「SISYO」とは

——SISYOについて詳しく教えてください。

川部:SISYOは介護事業者と月40万円のサブスクリプション契約を行い、月に2回イベントを施設内で実施するサービスです。

——どのようなイベントでしょうか?

川部:現在行っているのは麻雀やポーカー、ルーレットや、医学的な効果が高いと立証されているボードゲーム大会などのイベントです。川柳大会なども今後は提供して行きたいと考えています。

弊社が集客や備品の搬出入、イベントの進行などをすべて行いますので、介護事業者様は負担なくレクリエーションが実施できます。

イベントに参加する人はチップを購入し、そのチップで麻雀やポーカーなどのゲームを楽しめます。

施設の入居者だけでなく、近隣にお住まいの高齢者の方々を施設に集めて外部からも集客しますので、施設入居者と地域高齢住民の交流の場としてもメリットがあります。

介護事業所側も利益が出るビジネスモデル

——つまり、レクリエーションの外注ということでしょうか。それだけだと月40万円は少し高いような気もしてしまいます。

川部:単にイベントを実施するだけなら高額ですが、私が考えたビジネスモデルは介護事業者様の方も利益が生み出せる仕組みです。

イベント参加者が購入したチップの代金は、弊社は1銭もいただきません。チップのお金はすべて介護事業者が回収できます。

——つまりイベントが盛り上がれば盛り上がるほど、介護事業者の利益になるのですね。

川部:介護事業者としてはコストや人員を節約し、利益も得ながら、満足度と医学的効果の高いレクリエーションをご利用者に提供できるというわけです。

レクリエーションの自動化を目指す

——参加費ではなくチップ制にしている理由は何ですか?

川部:SISYOでは月2回のイベント実施だけでなく、毎日のレクリエーションの自動化も考えています。

弊社が全自動麻雀卓やルーレット台などを施設に貸し出し、入居者が好きなときに遊んでもらえるような形を目指して行きたいのですが、そこでチップのやり取りが個人間でもできるようにしたいと考えています。

月に2回は大きなイベントがあって、そこでチップを購入します。チップはその日のイベントでも使えますし、イベントがない日でも隣の部屋の友達や施設の職員さんと将棋やポーカーで遊び、お互いチップのやり取りをして楽しむという仕組みができればなと思っています。

ただ、もちろんチップの金銭化は違法ギャンブルになってしまいますので、換金の仕組みは作りません。社会的意義を重要視して、寄付であれば可能という形は考えています。

臼井 貴紀
● 監修者情報
臼井 貴紀 Usui Kiki
Hubbit株式会社 代表取締役社長。藤田医科大学客員教員。早稲田大学卒業後、ヤフー株式会社に新卒入社。営業、マーケティング、開発ディレクション、新規事業開発など幅広く担当。その後、ベンチャー企業に転職しAIを活用したMAツールの立ち上げを行った後、Hubbit株式会社を設立。高齢者施設に3ヶ月住み込んで開発したCarebee(ケアビー)は、日本経済新聞、NHKおはよう日本、ABEMA PRIME等に出演。
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