株式会社エム 代表取締役CEO 森氏、取締役COO 谷口氏|インタビュー第41弾

株式会社エム 代表取締役CEO 森氏、取締役COO 谷口氏|インタビュー第41弾

ケア業界のパイオニアに道を訊くインタビュー企画、第41弾です。

今回は、頭部MRI画像の解析を通じて、認知症予防をはじめとするウェルビーイングの向上に貢献する「MVision(エムビジョン)」を開発・サービス展開する株式会社エムの代表取締役 森さんと取締役 谷口さんの2名にお話を伺いました。

この記事の要点

  • MVisionは、人間の目には見えにくい認知症のリスク因子を定量化できる
  • MVisionのAI技術は国際的にも学術研究に採用されており、健康観察に適用可能なエビデンスが集まり続けている
  • MVisionは医療機関が撮影したMRI画像をそのまま利用できる技術に独自性があり、過去も含む手持ちのデータをクラウドにアップロードするだけですぐに利用できる

株式会社エム 代表取締役CEO 森氏、取締役COO 谷口氏のプロフィール 

プロフィール

森 進(もり すすむ)氏

株式会社エム 代表取締役CEO / 創業者。
米国Johns Hopkins大学医学部放射線科教授。東京水産大学大学院修了後、ライオン株式会社を経て1991年にJohns Hopkins大学生物物理学博士課程に留学。米国研究生活30年。2021年6月に株式会社エムを創業し、研究の集大成として技術の社会実装を志す。大学時代は魚類の分類学を志すほどの魚好きで、50年続ける趣味の磯釣りを始め、BMX、オートバイのロードレース、写真、DIY、ハウスキーピングに至るまで、極めるまでやり尽くす職人気質を持つ。手塩にかけた画像解析ソフトにはそのDNAが刻み込まれている。

谷口 善洋(たにぐち よしひろ)氏

株式会社エム 取締役COO
東京医科歯科大学医学部医学科客員准教授。PwCコンサルティング合同会社 Strategy&で戦略コンサルタントとして、テクノロジー企業のビジネスデューデリジェンスや新規事業開発など、中核技術/プロダクトを活用した新規事業開発に携わる。三菱重工業原子力事業部における原子力プラントの新型炉開発・設計・国際プロジェクトリード、大学院における医療用X線源の開発研究を通じて、原子力/放射線利用領域の技術経験も有する。

2021年秋に森進と出会い、30年の研究成果・技術の社会実装を目指す森の志に共感し、2022年4月に株式会社エムに参画。戦略策定、事業開発、プロダクトマネジメント、マーケティング等の事業運営全般を所掌する。2009年 東京大学大学院工学系研究科 原子力国際専攻修了(工学修士)。

インタビュー(以下、敬称略)

”医療画像解析”の力を開放し、ウェルビーイングの向上に貢献する

——まず、御社の会社概要をご紹介いただけますか?

谷口:CEOの森が60歳までJohns Hopkins大学医学部放射線科の教授をしており、その卓越した医療画像解析技術の社会実装を志して立ち上げた会社です。

森:「“医療画像解析” の力を解放し、ウェルビーイングの向上に貢献する」をビジョンとして掲げ、現在特に力を入れて活動している分野は認知症対策をはじめとする脳の健康です。

認知症を発症する前、いわゆる「未病」の段階で自分の脳の状態を見たことがある人はほとんどいないと思います。私はこの状況に問題意識があります。みんなが医療画像を基に自分の状態を把握できるようになり、認知症対策をはじめとする前向きな脳の健康作りができるような世界を実現することを目指して活動しています。

例えば、現在は血圧を当たり前のように測っています。しかし、第二次世界大戦の頃は、高血圧は加齢による当たり前の変化であるため放っておいて構わないという考えが主流でした。そのため、治療などは施されず、結果として脳卒中で亡くなる方が多くいました。脳の状態観察と認知症の関係が今まさに同じ状況だと私は感じます。この問題を解決すべく活動しています。

——森さんが起業されたきっかけとなるエピソードがあれば教えていただけますでしょうか?

森:はい。2018年頃に日本特有の脳ドックというシステムにより蓄積された世界的にも貴重な大量の健常者の脳画像に着目して、過去データ約3万例の解析を始めたことです。解析自体に2年以上かかりました。それまではビジネスにすることは考えてなかったのですが、このデータを解析していくとたくさんのものが見えてくるなと思いました。

——解析によって、どのようなことが分かったのでしょうか?

森:2つの大きな発見がありました。

1つ目は、各年代別の脳の状態評価が可能となる「ものさし」が得られたことです。20~80歳の健常者のビッグデータから脳の萎縮度の平均値や標準偏差を求められます。

2つ目は、上の画像のピンクの楕円で示されている通り、一部の方が年齢別の脳萎縮度の平均値から著しく逸脱していること、それにもかかわらずこれらの方々の検査結果に対する医師の所見が「無所見」とされているということです。

もし、生活習慣によって脳の萎縮が引き起こされているのであれば、実際に病気になるかどうかは別として、脳という臓器が萎縮することは一般論的に良いことではないです。そのため、現在病気と診断されていなくても、「あなたの脳は萎縮して注意すべき状態にある」や「血圧、肥満、飲酒、喫煙などが原因で脳卒中などが起きる可能性が高まっている」ことを教えてあげることが、未病におけるヘルスケアでは大切だと考えます。

脳の萎縮が進んでいる方々は、実際に認知症とか脳卒中になるリスクが高いともいわれています。病気になってから医療にかかるのではなく、何か病気になってしまう前に手を打っておくとなると、根拠となるデータがなければ適切な医療を受けづらいのが現状です。

——エムさんが取り組んでおられる、「医療画像の解析を解放する」とは具体的にどのようなことをしているのでしょうか?

森:脳ドックという日本独特のシステムによって蓄積された、既にある大量の脳MRIデータを有効活用して、脳の状態を可視化するなどをできるようにすることです。

通常のプロセスでは、医療画像を使って何かを検査をするとなると、レントゲン、MRI、CTなど身体のあらゆる箇所をあらゆる方法で撮影します。しかし、撮影した後の画像は医師が使うことが前提になっていて、そのほとんどは病気が見つからないため、そのまま画像が捨てられてしまいます。

しかし、「健康」と判断されて捨てられる医療画像にこそ、実は重要な情報があります。この画像を活用することで、まさにReal World Dataとしての真の力を解放することができます。

森:上の画像のグラフには、介護を受ける要因となる疾患が並んでいます。認知症や脳卒中、骨折、転倒などがありますが、これらの疾患は状態が悪化するまで管理や対策が難しいのが現状です。

弊社では、MRI/CTを問わず、あらゆる部位の医療画像から、ご本人の状態の変化を追える技術を持っているのが強みになります。

未病の段階から各疾患のリスクに気づき、健康を維持・向上させていくことでウェルビーイングの実現に貢献していきたいと思います。

臼井 貴紀
● 監修者情報
臼井 貴紀 Usui Kiki
Hubbit株式会社 代表取締役社長。藤田医科大学客員教員。早稲田大学卒業後、ヤフー株式会社に新卒入社。営業、マーケティング、開発ディレクション、新規事業開発など幅広く担当。その後、ベンチャー企業に転職しAIを活用したMAツールの立ち上げを行った後、Hubbit株式会社を設立。高齢者施設に3ヶ月住み込んで開発したCarebee(ケアビー)は、日本経済新聞、NHKおはよう日本、ABEMA PRIME等に出演。
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