【ビューティータッチセラピー】日本介護美容セラピスト協会 顧問 谷氏 | インタビュー第24弾

【ビューティータッチセラピー】日本介護美容セラピスト協会 顧問 谷氏 | インタビュー第24弾

ケア業界のパイオニアに道を訊くインタビュー企画、第24弾です。

今回は、高齢者や障がい者、闘病している方の心と体のケアをする「ビューティタッチセラピー」の普及を推進する日本介護美容セラピスト協会の顧問 谷 都美子さんにお話を伺いました。

この記事の要点

  • ビューティタッチセラピーは心と体の美容療法
  • エビデンスに基づくセラピープログラムは施設・機関・自治体・マスコミから高い評価
  • 認定ビューティタッチセラピストを1万人育成することを目指す

日本介護美容セラピスト協会 顧問 谷 都美子氏のプロフィール

谷 都美子(たに とみこ)氏

株式会社ナリス化粧品入社後、美容研究を中心に活動。
ストレス社会の中で生み出される心・脳・体・肌に関心を持ち、化粧療法の研究を始める。約30年前から高齢者や障がい者、癌の緩和ケアを実践し、講演や学会発表を行う。10年前に、一般社団法人 日本介護美容セラピスト協会を立ち上げ、本格的に活動開始。「介護美容」というワードを作り、新たな美容の領域を生み出した。
・一般社団法人 日本介護美容セラピスト協会 顧問
・武庫川女子大学薬学部 健康生命薬科学科 客員教授
・一般社団法人 日本化粧医療学会 理事 化粧医療専門士
・株式会社ナリス化粧品 介護美容事業部 顧問

インタビュー(以下、敬称略)

「介護」と「美容」を一体化させた日本介護美容セラピスト協会

——まずは、日本介護美容セラピスト協会の概要についてご説明ください。

一般社団法人 日本介護美容セラピスト協会 | トップページ

谷:日本介護美容セラピスト協会は、ビューティタッチセラピーの普及推進およびセラピスト派遣、そして認定セラピスト育成を事業内容としています。

2023年現在、全国に認定セラピストが約2,500名、セラピストを指導するインストラクター が28名。北海道から沖縄まで日本各地で活動しています。

——協会の名称に「介護」とありますが、ビューティタッチセラピーは高齢者向けのセラピーなのでしょうか。

谷:高齢者だけでなく、介護を必要とする方々全てを対象としています。

活動場所も高齢者施設だけでなく病院や障がい者施設、自治体と連携した地域の包括ケア拠点、在宅の訪問美容とさまざまです。

——どうして協会名に「介護」と付けたのか、理由をお聞きしても良いですか。

谷:「美容」と「介護」を組み合わせた理由は、美容の中に介護を取り込むためです。

美容が主体になって、医療や介護を巻き込むことがあってもいいんじゃないかなって思って。

10年前には「ミスマッチ」とか「意味が分からない」と言われていたのですが、いつの間にか、今では「介護美容」と検索すると多くのホームページが出てくるようになりましたね。

——認定セラピストさんについては後ほど詳しくお聞きしますが、約2,500名もいらっしゃるとのことで大変多いですね。

谷:これからまだ増えると思います。

——日本各地にセラピストさんがいらっしゃるのでしょうか?

谷:人数の差はありますが、認定セラピストが1人もいない都道府県はありません。

東京・大阪・名古屋・福岡など都市部の方が多いですね。

——どのような方が認定セラピストの資格を得ているのでしょうか。

谷:介護関係、看護、それから療法士などの仕事をしている方が多いです。

あとは美容師、エステティシャン、ネイリスト、学校の先生や、男性のセラピストもいらっしゃいます。

先生は、幼稚園から大学の教授までバラエティー豊かにいらっしゃいますよ。

自治体の方や薬剤師さん、栄養士さんも。

顧問 谷さん自身についてお聞きしてみた

——谷さんは現在、日本介護美容セラピスト協会の顧問をされているそうですが、元々は谷さんが日本介護美容セラピスト協会を起ち上げたそうですね。以前から美容関係のお仕事をされていたのでしょうか。

谷:はい。ナリス化粧品で美容研究を行っていました。

ストレス社会が肌に与える影響などをずっと研究していて、そこから化粧療法の研究をするようになり、約30年前から高齢者施設や障がい者施設、盲学校、緩和ケア病棟などで化粧療法を実践するようになりました。そういった経験を活かして日本介護美容セラピスト協会を起ち上げたんです。

自身の癌闘病が美容療法を考えるきっかけに

——谷さんが化粧療法に興味を持つようになったきっかけを教えてください。

谷:実は、私自身の癌の闘病生活がきっかけだったんです。

治療のため入院した際に、美容を専門としているのに化粧していない自分が嫌だったので「化粧していいですか」ってドクターに聞いたんですね。そうしたら「いいですよ」と。

私が化粧を始めると「あれ?病院でも化粧していいんだ」って他の入院患者さんも思うようになって、それで私に「お化粧教えて」とか「どんな化粧品使ってるの」とか、話題になりましてね。

そうしたら、その病棟全体がどんどん明るくなっていったんです。

——お化粧で皆さんの心が晴れたということですか?

谷:重症な癌患者のいる病棟の入院患者って、いつも病気のことばかり考えているんです。患者同士の会話でも「再発しないかな」とか、そんな話題ばかり。

でも病棟でお化粧を始めたら皆さんが明るくなって、病院スタッフからも「この病棟、何か違うな」という声が上がり出しました。

お化粧は気持ちを前向きにさせる。それならば病院とかで、困ってる方、気持ちがうつになっている方に化粧をしてあげれば役に立つんじゃないかな?というのが最初のきっかけですね。

ビューティタッチセラピーとは

——日本介護美容セラピスト協会さんが推進している「ビューティタッチセラピー」について教えてください。

谷:ビューティタッチセラピーとは、心と体の美容療法です。肌に触れながらのスキンケアやメイクアップで、心と体を健やかにする療法を行っています。

一般社団法人 日本介護美容セラピスト協会 | ビューティタッチセラピー

——「タッチ」つまり「触れる」ということがポイントなのですね。

谷:スキンケアやメイクアップって、肌に触れないと成り立ちませんよね。

人の手の温もりで、肌に触れるということが、美容療法では1番大切なんです。

——実際に美容療法には治療の効果が認められているのでしょうか。

谷:ビューティタッチセラピーがもたらす笑顔・元気・自立支援の効果は、認知症の悪化を遅らせたり、健康寿命を延伸する効果が認められています。

この効果は、厚生労働省・経済産業省・農林水産省が平成28年度に発刊した「保険外サービス活用ガイドブック」にも掲載されました。 

——よく化粧療法という言葉は聞きますが、美容療法と化粧療法は違うのでしょうか。

谷:私も美容療法の研究を始めた30年ほど前には「化粧療法」と言っていましたが、あるとき1人の男性に「化粧か。男は関係ないな」と言われたことをきっかけに名称を変更したんです。

美容にはメイクアップ以外にもハンドマッサージやフットマッサージなどいろいろな分野や施術方法がありますから、性別に関係なく全ての方を元気にしていきたいので、現在は美容療法と呼称しています。

臼井 貴紀
● 監修者情報
臼井 貴紀 Usui Kiki
Hubbit株式会社 代表取締役社長。藤田医科大学客員教員。早稲田大学卒業後、ヤフー株式会社に新卒入社。営業、マーケティング、開発ディレクション、新規事業開発など幅広く担当。その後、ベンチャー企業に転職しAIを活用したMAツールの立ち上げを行った後、Hubbit株式会社を設立。高齢者施設に3ヶ月住み込んで開発したCarebee(ケアビー)は、日本経済新聞、NHKおはよう日本、ABEMA PRIME等に出演。
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