この記事の要点
- 福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金は介護職員等の賃金改善を行うための交付金
- 福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金の金額は月額平均9,000円程度
- 福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金の申請・支払い期間は2022年2月~11月まで
介護職員の待遇改善についてはこれまで国がさまざまな支援を行ってきましたが、2022年2月からまた新たな支援制度が登場しました。
それが「介護職員処遇改善臨時特例交付金」です。
今回は介護職員処遇改善臨時特例交付金について詳しく解説します。介護職員の給与アップが期待できる交付金の詳細をしっかり理解しておきましょう。
目次
介護職員処遇改善臨時特例交付金とは

介護職員処遇改善臨時特例交付金とは、2021年11月に閣議決定された「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」に基づく交付金です。
正しくは「福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金」と呼び、介護職員だけでなく福祉職員も賃上げの対象とされています。
障害福祉職や介護職は、将来においてさらに人員の拡充が求められていますが、長引く新型コロナウィルス感染症の流行により人員の確保が難しくなっている事業所も多くみられます。
介護職員処遇改善臨時特例交付金は厚生労働省が主体となって障害福祉職員および介護職員の処遇改善を目的とした支援を行い、十分な給与を支給できるようにするための支援制度のひとつです。
臨時特例交付金で賃上げ対象となる職員

介護職員処遇改善臨時特例交付金により賃上げの対象となる方は、障害福祉サービス事業所・介護事業所で働く全職員です。
もともと介護職員処遇改善臨時特例交付金制度の対象は福祉・介護に直接従事する介護職等ではありますが、各事業所の判断によりその他の職員の処遇改善にも交付金が充てられます。
また介護職員等特定処遇改善加算のように、勤続10年以上の介護福祉士のみを対象にしている制度ではありません。
介護職員等特定処遇改善加算の算定要件については以下の記事で詳しく解説しています。
▶特定処遇改善加算の算定要件をわかりやすく解説 2021年度介護報酬改定対応
介護職員処遇改善臨時特例交付金の交付額
介護職員処遇改善臨時特例交付金の金額は、各事業所が職員に対して支払った総報酬に一定の交付率をかけた金額です。
総報酬額には処遇改善加算と特定処遇改善加算分が含まれます。
交付率は介護サービスごとに異なる
介護職員処遇改善臨時特例交付金の交付率は、介護サービスの種類ごとに一律に定められています。
具体的な交付率は以下表をご参照ください。なお、以下の表には介護サービスだけでなく障害・福祉サービスも含まれています。

賃上げ額は月額平均9,000円
介護職員処遇改善臨時特例交付金は、対象となる職員の収入がおよそ3%程度上昇するように交付率が決定されています。
金額で言うと、1人あたりの賃上げ額は月額平均9,000円相当です。
ただし上記でも説明したように介護職員の範囲は各事業所の裁量で決定できるため、職員の配置状況などによっては介護職員の全員が一律9,000円引き上げられるものではありません。
介護職員処遇改善臨時特例交付金の要件

介護事業所が介護職員処遇改善臨時特例交付金を受けるためには、以下3つの要件を満たす必要があります。
- 介護職員処遇改善加算Ⅰ~Ⅲの取得
- 2022年2月分からの賃金改善の実施
- 補助額3分の2以上の職員ベースアップ等引上げ
3つの要件をそれぞれ詳しく見ていきましょう。
1.介護職員処遇改善加算Ⅰ~Ⅲの取得
介護職員の待遇改善を目的とする介護報酬加算の区分Ⅰ~Ⅲを取得している介護事業所でなければ、介護職員処遇改善臨時特例交付金は受けられません。
新規事業所やこれから介護職員処遇改善加算を取得する介護事業所は、加算が開始された後の交付手続きが必要です。
なお介護職員処遇改善加算は過去には区分がⅠ~Ⅴまで存在していましたが、2021年度の介護報酬改定により区分Ⅳ・Ⅴは撤廃されていますので、現在は実質的に介護職員処遇改善加算を取得していれば交付が受けられます。
介護職員処遇改善加算に関わる介護報酬の改定に関しては以下の記事でも詳しく説明しています。
▶【2021年度改定対応】介護職員等特定処遇改善加算の最新情報を解説
2.2022年2月分からの賃金改善の実施
介護職員処遇改善臨時特例交付金を受ける介護事業所は、交付金が支払われる前の2022年2月時点から職員の賃金改善を実施しなければいけません。
これは給与支給の際に金額を追加するだけでなく、就業規則の改定が必要です。
ただし2022年2月時点で就業規則の改定や給与計算のやり直しが間に合わなかった介護事業所は、3月分給与での清算や、2月・3月分をまとめた一時金支払いによる賃金改善も認められています。
2022年4月以降の特例は認められていません。
3.補助額3分の2以上の職員ベースアップ等引上げ
介護職員処遇改善臨時特例交付金は、介護職員の待遇アップを目的とした他の支援金と同様に、全額を介護職員の賃金改善に使わなければいけません。
なおかつ介護職員処遇改善臨時特例交付金は、賃金改善の合計額の3分の2以上をベースアップ等に充てる必要があります。
ベースアップ等とは、介護職員の基本給もしくは決まって毎月支払われる手当の引き上げを指します。
ベースアップ等に使った金額以外の交付金は、賞与や一時金による支給を行い、全体として、交付金の額を上回る賃金改善を行う義務があります。
介護職員処遇改善臨時特例交付金の申請
介護職員処遇改善臨時特例交付金を受け取りたい介護事業所は、事業所登録をしている都道府県に対して申請を行います。
なお、交付金の支払をするのは都道府県ではなく国保連です。
申請書類
介護職員処遇改善臨時特例交付金の申請には以下書類の提出が必要です。
- 福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金計画書
様式は各都道府県で異なります。ほとんどの都道府県ではホームページからダウンロードが可能です。
都道府県によっては、独自の申請書や誓約書などの提出を求められるケースもあります。
また交付期間の終了後には以下の書類も提出します。
- 福祉・介護職員処遇改善臨時特例交付金実績報告書
提出方法
提出方法は多くの都道府県では、電子申請もしくは郵送による受付を行っています。いずれの方式になるかは都道府県ごとに異なります。
管轄の都道府県のホームページなどでご確認ください。
申請・支払スケジュール
介護職員処遇改善臨時特例交付金は2022年2月分から支払われますが、2月~4月分はまとめて6月に支払われ、その後は毎月支払われます。
いつまで臨時特例交付金がもらえるか

今回制定された介護職員処遇改善臨時特例交付金の対象期間は、2022年2月から2022年10月までです。
交付金の最終支払いは2022年11月(10月分まで)となります。
なお、2022年5月時点では多くの自治体がすでに今回の介護職員処遇改善臨時特例交付金を申請受付終了としています。
しかし、厚生労働省では2022年10月以降も臨時の報酬改定を行い、介護職員処遇改善臨時特例交付金と同等の支援を行うことを予定しています。
今回の申込の機会を逃してしまった介護事業所は、引き続き情報をチェックして今後の支援措置に期待しましょう。
まとめ
今回は介護職員処遇改善臨時特例交付金について解説しました。
介護職員処遇改善臨時特例交付金とは、介護を担う介護職員に対して十分な処遇が与えられるように国が行う支援措置のひとつです。
これらの支援制度を活用し、介護の質を上げるための人材の確保、処遇改善に取り組んでいきましょう。
