認知症は主に4種類|特徴的な症状と原因・治療法・その他の原因疾患を解説

認知症は主に4種類|特徴的な症状と原因・治療法・その他の原因疾患を解説

最終更新日 2022.11.24

この記事の要点

  1. アルツハイマー型認知症・脳血管性認知症・レビー小体型認知症は三大認知症、前頭側頭型認知症(ピック病)を含めた4種類が主な認知症とされる
  2. 認知症の原因疾患は70種類以上もある
  3. それぞれの認知症への理解が適切な介護につながる

ひとくちに認知症と言っても、その中にはいろいろな種類の認知症があります。

どの種類の認知症も発症した人の認知機能を低下させる点では同じですが、それぞれの認知症ごとに少しずつ特徴が異なるため、介護や看護の対応も種類に合わせて変化させていく必要があります。

今回は認知症の種類について解説します。ひとりひとりの認知症高齢者に最適な介護を提供するために、認知症の種類をきちんと学びましょう。

認知症の種類は主に4つ

認知症と診断された方の8割以上は「アルツハイマー型認知症」「脳血管性認知症」「レビー小体型認知症」のいずれかに診断されています。この3種類の認知症は一般的に三大認知症と呼ばれています。

また高齢者の認知症としては割合が少ないものの、若年性認知症の割合が2番目に高い「前頭側頭型認知症(ピック病)」もプラスして、四大認知症と呼ぶこともあります。

今回は四大認知症を主な認知症の種類と定義し、それぞれの認知症について解説します。

認知症の種類により原因と症状が違う

今回紹介する4種類の認知症は、それぞれ認知機能を低下させる原因が異なります。

また認知症の発症により出現する中核症状と周辺症状は4種類とも共通してる部分が多いですが、認知症の種類によっては特徴的な症状が出現します。

認知症の種類ごとの原因と特徴的な症状を知り、治療の可能性についても理解しておきましょう。

認知症の全般的な症状や中核症状と周辺症状の説明については、以下の記事で詳しく解説しています。

認知症の症状を理解しよう【初期症状・中核症状・周辺症状の違い】

アルツハイマー型認知症

四大認知症の中でも、割合がもっとも多い認知症の種類はアルツハイマー型認知症です。

2013年に行われた認知症対策研究事業の調査によれば、都市部地域の認知症高齢者の中でアルツハイマー型認知症が占める割合は68%です。

さらにアルツハイマー型認知症は他の種類の認知症よりも増加傾向にあり、2022年現在の割合は調査時点よりも高くなっていると推定されます。

アルツハイマー型認知症の原因

アルツハイマー型認知症の原因はまだはっきりとはわかっていませんが、脳内にアミロイドβやタウタンパクという物質が溜まり、その物質が神経細胞を壊し脳を委縮させるとの説が有力です。

しかし、なぜアミロイドβやタウタンパクが脳内に蓄積されるのかの理由は、まだ解明されていません。

アルツハイマー型認知症の特徴的な症状

アルツハイマー型認知症の症状は、一般的に「認知症」と聞いて連想される症状(記憶障害や見当識障害、実行機能障害など)となり、アルツハイマー型認知症独自の目立った症状はありません。

症状でなく発症率に関して言えば、男性よりも女性の発症率の方が比較的多いという特徴があります。その理由としては女性の方が長寿であることやホルモンが可能性としてあげられます。 

また、アルツハイマー病の発症率は女性の方が多いですが、男性の方が罹患後の死亡リスクは高いという研究もあります。 

参考:アルツハイマー病進行の性差に関わる遺伝子|健康長寿ネット 

アルツハイマー型認知症の治療法

2022年現在、アルツハイマー型認知症による脳の萎縮を完全に回復する治療薬は存在しません。

ただしアルツハイマー型認知症の進行を遅らせる、もしくは症状を緩和させる治療薬は日本で4種類の薬剤が認可されており、根本的な治療をするための治療薬開発の研究も進んでいます。

また薬物を使わない非薬物療法として、運動療法や音楽療法なども症状の緩和が期待できます。

脳血管性認知症

脳梗塞や脳卒中など、脳の病気に起因して発症する認知症が脳血管性認知症です。

認知機能の低下があり、その背景に脳血管疾患の影響が認められたときに脳血管性認知症であると診断されます。

高齢者がかかる認知症でもっとも割合が多い認知症の種類は上記のアルツハイマー型認知症ですが、脳血管性認知症は65歳以下の人がなる若年性認知症の中でもっとも割合が多い認知症として知られています。

脳血管性認知症の原因

脳血管性認知症は、脳の血管が詰まる(脳梗塞)や脳の血管が破れる(脳出血)などの脳血管障害により、脳の神経細胞がダメージを負うことにより発症します。

脳血管障害の原因には、糖尿病や高脂血症などの生活習慣病が背景にあると考えられます。

脳血管性認知症の特徴的な症状

神経細胞が損傷した箇所により、脳血管性認知症の症状は異なります。

基本的な症状はアルツハイマー型認知症とほぼ同様ですが、脳血管障害によりダメージを受けた箇所が体のどの部分をつかさどっているかで、その人ごとに症状が変わる点が特徴的です。

  • 言語をつかさどる神経細胞の損傷→言語障害
  • 感情をつかさどる神経細胞の損傷→感情失禁
  • 運動をつかさどる神経細胞の損傷→運動麻痺・歩行障害・嚥下障害・排尿障害など

脳血管性認知症の治療法

一度損傷した脳細胞は回復することがないため、脳血管性認知症についても根本的な治療方法はありません。

脳血管性認知症の薬物治療ではアルツハイマー型認知症と同じく進行を遅らせる治療薬を使いながら、脳血管障害の再発を予防するための高血圧薬や脳血流改善薬などが併用されます。

また脳血管障害により低下した機能を改善するためのリハビリも積極的に行われます。

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症はパーキンソン病と同じ症状が出るため、かつてはパーキンソン病と誤診されていたことも多い認知症でした。

1976年に日本の医学者である小阪憲司氏が最初に発見し、現在では世界中で認知症の種類のひとつとして認知されています。

レビー小体型認知症の原因

レビー小体型認知症は、脳内にレビー小体という特殊なタンパク質が溜まることで発症します。

レビー小体が大脳皮質(だいのうひしつ)にレビー小体が溜まり、認知症の症状がでます。 レビー小体が脳幹に溜まると手足のふるえなどパーキンソン症状が発生します。

レビー小体がなぜ脳に発生するのかは今のところ十分にわかっていません。 

レビー小体型認知症の特徴的な症状

レビー小体型認知症の特徴的な症状は以下の3つです。

  1. パーキンソン症状(手足のふるえ・筋固縮など)
  2. 幻視
  3. 睡眠時の異常行動

レビー小体型認知症の治療法

レビー小体型認知症の治療方法は、基本的にはアルツハイマー型認知症の治療方法と同様です。

パーキンソン症状の対症療法として抗パーキンソン病薬の使用、幻視や異常行動の抑止に抗精神薬による症状コントロールをするなど、個々の症状によって治療薬を併用します。

前頭側頭型認知症(ピック病)

前頭側頭型認知症とは脳の前頭葉や側頭葉前方が委縮する認知症です。前頭側頭型認知症のおよそ8割の方に「Pick球」が確認できることからピック病とも呼ばれています。

かつては前頭側頭葉型認知症の方すべてにPick球が存在しているとされてきましたが、研究が進むにつれてPick球がなくても脳の委縮が発生することがわかり、現在ではピック病は前頭側頭型認知症の一種に分類されています。

40代から60代の初老期に発症するケースが多く、70歳以上の発症率は非常に低いことが特徴的な認知症です。

前頭側頭型認知症(ピック病)の原因

前頭側頭型認知症の原因は脳に異常タンパク質が蓄積するためです。しかし、どんなタンパク質が異常タンパク質に変異するのか、なぜ蓄積するかは解明されていません。

前頭側頭型認知症の中でもピック病に関して言えば、異常タンパク質に変異するタンパク質はTDP-43やFUSではないかと推定されています。

前頭側頭型認知症(ピック病)の特徴的な症状

前頭側頭型認知症はアルツハイマー型認知症などの他の認知症と違い、記憶障害や見当識障害などの症状は目立って見受けられません。

前頭側頭型認知症を発症したときには、以下のような特徴的な症状が発現します。

  • 怒りっぽくなるなど「人格障害」
  • 自制力の低下による「反社会的行動」
  • 同じことを繰り返す「常同(滞続)症状」など

前頭側頭型認知症(ピック病)の治療法

前頭側頭型認知症の治療薬はまだ開発されていません。

反社会的行動などの異常行動を緩和するために抗精神病薬などを使用するなど、対症療法が中心の治療となります。

その他の認知症原因疾患

認知症を発症する要因となる原因疾患は、一説によれば70種類以上もあると言われています。

すべてをご紹介しきれないため、以下に代表的な原因疾患を列記します。脳疾患だけでなくいろいろな病気がもとで認知症を発症する可能性があることを確認しましょう。

脳腫瘍頭蓋骨内部に腫瘍(ガン)が発生する病気
慢性硬膜下血腫頭部の外傷により血のかたまりが脳を圧迫する病気
正常圧水頭症脳室に脳脊髄液が溜まり周囲の脳を圧迫する病気
進行性核上性麻痺脳の一部(大脳基底核・脳幹・小脳)が減少する病気。指定難病
嗜銀顆粒病脳に嗜銀顆粒が蓄積して起こる病気。嗜銀顆粒性認知症とも呼ぶ
甲状腺機能低下症甲状腺ホルモンの分泌量が低下する病気
副甲状腺機能亢進症副甲状腺ホルモンが過剰に分泌する病気
クロイツフェルト・ヤコブ病狂牛病の動物を食べることなどにより起こる感染症。指定難病
ビタミンB12欠乏症ビタミンB12の不足により記憶などの情報伝達に問題が生じる病気
ハンチントン症遺伝性の神経変性疾患。指定難病
薬物・アルコール中毒麻薬・向精神薬・アルコールなどの乱用により心身の健康を害する病気

まとめ

今回は認知症の種類について解説しました。

認知症の介護の第一歩は、まず認知症を知ることです。

認知症の種類について正しい知識を学び、これからの介護に活かしましょう。

AIケアラボではこの記事以外にも認知症に関する記事を執筆しています。#認知症で関連記事を見ていただけるのであわせてお読みください。

認知症に関する記事はこちら|AIケアラボ

臼井 貴紀
● 監修者情報
臼井 貴紀 Usui Kiki
Hubbit株式会社 代表取締役社長。藤田医科大学客員教員。早稲田大学卒業後、ヤフー株式会社に新卒入社。営業、マーケティング、開発ディレクション、新規事業開発など幅広く担当。その後、ベンチャー企業に転職しAIを活用したMAツールの立ち上げを行った後、Hubbit株式会社を設立。高齢者施設に3ヶ月住み込んで開発したCarebee(ケアビー)は、日本経済新聞、NHKおはよう日本、ABEMA PRIME等に出演。
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