この記事の要点
- 2040年には高齢者の4割以上が一人暮らし(独居)になる
- 高齢者の一人暮らしにはさまざまな問題やリスクがある
- 一人暮らし高齢者が安全で快適に生活を続けるための支援・サポートがある
生涯未婚率の上昇や少子化などの理由により、一人暮らしをする高齢者が増えています。
高齢者の一人暮らしにはどのような問題が考えられるのでしょうか。そして、その問題を解決するためにどのような策が必要なのでしょうか。
今回は高齢者の一人暮らしで考えられるリスクや問題を挙げ、高齢者の一人暮らしを支える見守り支援などのサポートについて解説します。
目次
2040年には一人暮らし高齢者が4割を超える

これからの日本では、一人暮らし高齢者が増えることが見込まれています。
国立社会保障・人口問題研究所が2018年に発表した推計によると、2040年には世帯主が65 歳以上の世帯において、単独世帯が40%まで上昇する見込みです。
75歳以上の後期高齢者の世帯ではその割合がさらに上がり、2015年時点では37.9%のところ、2040年では42.1%まで上昇すると予測されています。
今後、高齢者の一人暮らしは決して他人ごとではなく、およそ2~3人に1人が直面する問題だと言えます。
高齢者の一人暮らしで起こり得る問題
高齢になると運動能力、認知能力の低下に伴い、日常生活を送る上でもさまざまなリスクが生じます。
一人暮らし高齢者の場合、いざというときに助けを求める相手がそばにいないので、何か問題が生じたときに大きな事故や事件につながってしまう可能性があります。
高齢者の一人暮らしで考えられるリスクや問題点をここで改めて確認しておきましょう。
孤立死(孤独死)の危険性が高い
東京都監察医務院が公表したデータによれば、2018年に東京23区内で亡くなった一人暮らし高齢者の数は3,882人で、その数は毎年増える傾向にあります。

一人暮らし高齢者は同居家族がいないために、亡くなってもすぐには気づかれない「孤立死」を迎える危険性が高くなります。
《孤立死とは》誰にも看取られることなく亡くなった後に発見される死のこと。孤独死とも呼ばれる。 |
孤立死を身近な問題だと感じている60歳以上の人の割合は全体では34.1%ですが、一人暮らし世帯だと50.8%にまで上昇し、多くの高齢者が孤立死を恐れている現状がうかがえます。

急病や事故の際、発見が遅れる
1人暮らし高齢者の場合、孤立死と同じく、急病や住居内で事故が起こったときにすぐに助けを求められないことも考えられます。
特に高齢になると転倒などのリスクが高まります。身近に助けてくれる家族や、救急車を呼んでくれる人がいないと、本来なら軽いケガや病気ですむはずの病気や事故が重大な事態に発展してしまう可能性があります。
認知症に気づかれにくい
認知症を早期発見するためには、高齢者の日常のささいな変化に早めに気づくことが大切です。
生活を共にしている家族がいる場合は認知能力の衰えに気づいてもらえる機会もありますが、1人暮らしだと見過ごされてしまいがちです。
認知機能の低下は高齢者本人では自覚が難しいため、言動に明らかな変化が起きた時にはすでに認知症がかなり進んでいるという事態に陥ってしまうかもしれません。
犯罪などトラブルにあう可能性が高い
「振り込め詐欺」「オレオレ詐欺」などとも呼ばれる特殊詐欺は、主に高齢者を狙った犯罪です。
実際にも特殊詐欺の被害者層は8割以上が高齢者となっており、その中でも女性の被害が多いとされています。

相談できる家族が近くにいれば詐欺を見破ることもできますが、一人暮らし高齢者の場合には詐欺に気づくことができず、犯罪被害にあう可能性が高くなります。
孤独感にさいなまれる
一人暮らしの生活は気楽な反面、孤独だと感じるシーンも多々あるでしょう。
耐えられないほどに孤独感が高まってしまった場合に恐れておかなければいけない点は、自殺の可能性です。
厚生労働統計協会「厚生の指標」で発表された論文によれば、家族等と暮らしている(同居)人に比べて、一人暮らし(独居)の人は、男女とも年齢が高くなるにつれて孤独感による自殺死亡率が高くなっているとのことです。
高齢者は学校や会社など他者とのコミュニケーションを図る機会が少ないため、独居は孤独感による自死の危険因子であると考えられています。
また一人暮らし高齢者が自殺した場合、上記で説明した孤立死のリスクもあわせて高まります。
一人暮らし高齢者を守るためには

上記で取り上げたような一人暮らし高齢者の問題点を解消し、安全で快適な生活を続けられるようにするにはどうしたら良いのでしょうか。
以下からは一人暮らし高齢者を守るための方法を紹介します。
地域・自治体の高齢者支援
多くの自治体では急増する一人暮らし高齢者を地域で見守る方策が考えられています。
自治体が基盤となって高齢者見守りのネットワークを作り、地域包括支援センターや高齢者見守り窓口、さらに町内会やマンション管理組合などの地域住民が力をあわせて高齢者を支援・サポートする仕組みです。
《東京都足立区の事例》足立区「孤立ゼロプロジェクト」の一環として、東保木間町会「ひまわり会」が、区から提供を受けた住民名簿を活用して見守り活動を推進。これにより既存ネットワークでは把握できなかった一人暮らし高齢者の問題点を早期発見・早期対処できるようになった。 参考:足立区|あだち絆づくり通信 |
地域の自治体の施策を調べておくと良いでしょう。
民間の見守りサービス
公的な高齢者支援だけでなく、民間が提供する見守りサービスなどの利用も良い方法です。
セキュリティ関連企業では、一人暮らし高齢者にも適した見守りサービスを提供しています。
参考:セコム・ホームセキュリティ|高齢者見守りサービス(親の見守り)
また高齢者が日常的に使用している家電商品にIoT機能を搭載し、機械的見守りを行えるようにしているサービスなども存在します。
《IoT(Internet of Things)とは》モノのインターネット。住宅・家電製品・電子機器などをインターネットに接続し、ネットワークを通じて相互に情報交換をする仕組みのこと。 参考:象印|みまもりホットライン |
高齢者自らの自己管理
一人暮らし高齢者が健康に、安全に暮らしていくためには、外部からの支援だけでなく高齢者自身の自己管理も欠かせません。
食生活の改善、健康体操、口腔ケアなどに努め、長引く新型コロナウィルス感染症の流行の最中においても第三者との交流を図る努力が必要です。
厚生労働省ではインターネット上に「通いの場」を設け、高齢者自らが楽しめるような情報サイトを提供しています。
高齢者が新型コロナウイルス感染症を予防しながら健康を維持するための情報が紹介されていますので、一人暮らし高齢者の自己管理に役立つ点が多いでしょう。
「通いの場」にスマートフォンやタブレットからアクセスできる支援アプリ「オンライン通いの場」もリリースされています。
支援アプリでは行きたい場所をアプリに設定して、おすすめのお散歩コースを検索・登録できる「おさんぽ支援」など、高齢者の健康維持に役立つコンテンツが用意されています。
参考:地域がいきいき 集まろう!通いの場|「オンライン通いの場」アプリケーションを使ってみよう
当サイトが紹介した、高齢者自身の健康管理の研究も参考にしてください。
▶高齢者の転倒予防にはオンライン運動プログラムが効果あり
▶転倒予防には「デジタル日記」 高齢者が自ら転倒を管理する未来がくる
おしゃべりロボット・コミュニケーションサポート
一人暮らし高齢者は、ちょっとしたときに話し合える相手がいません。
ふとしたときに「ちょっとした会話」を交わすことができるおしゃべりロボットは、高齢者の対話不足を解消する存在になり得ます。
現在市販されているおしゃべりロボットには人形タイプ、動物タイプなどさまざまな形態がありますが、話し相手としてロボットに身体が必要かどうかについて検証した興味深い研究があります。
興味のある方はぜひ以下の記事をご覧ください。
▶高齢者の話し相手として、ロボットに身体は必要か?科学的に検証
また、ITサービスを使えない高齢者でも、簡単にITを使って家族との交流や買い物を楽しめるサポートをするようなサービスもあります。
AIケアラボ内でも以前紹介したコンシェルジュ付きタブレット端末「Carebee(ケアビー)」は、タブレット端末にある「話しかける」というボタンを押すだけでコンシェルジュと繋がり、要望を伝えるだけでコンシェルジュが遠隔で操作・サポートしてくれるサービスです。
家にいながらも外部とコミュニケ―ションがとれるので、高齢者の孤独解消に役立ちます。
詳しくは以下のインタビュー記事をご覧ください。
▶【Carebee】Hubbit社代表 臼井 貴紀氏|インタビュー第7弾
一人暮らし高齢者見守りにAIを活用

AIなどの最新テクノロジーを使って、一人暮らし高齢者の安全を守ろうとする研究が進められています。
AIケアラボでもこれまでいくつかの研究を紹介してきましたので、以下の記事などを参考にしてください。
今後もAIケアラボでは最新研究を常にわかりやすく解説し、一人暮らし高齢者が直面するさまざまな問題点を解決するためのヒントを紹介していきたいと考えております。
▶独居(一人暮らし)高齢者の健康・安全は見守りセンサーとAIで守られていく
▶在宅介護の見守りAIが高齢者の救急搬送を防ぐ スマートフォンを活用
まとめ
今回は日本で増え続けている一人暮らし高齢者の現状と問題点、その解決策について解説しました。
高齢者の半数弱が一人暮らしになる未来を考えると、一人暮らし高齢者の問題は決して他人ごとではありません。
これからの自分たちのためにも、一人暮らし高齢者のリスクを解消するための方策を考えていきましょう。
