この記事の要点
- 高齢者にとってゲームは単なる遊びではない
- 高齢者のゲーム参加は利点が多い(脳の活性化・フレイル予防など)
- VRやAIなど最新テクノロジーの高齢者ゲームへの活用が期待されている
「毎日ゲームしてばかり」の生活と聞くと、一般的にはあまり推奨されない生活のように思われています。
しかし高齢者の生活においては「ゲーム」は非常に重要です。
高齢者のゲームは単なる遊びではありません。ゲームは高齢者の健康維持や認知機能向上にも活用できます。
今回は高齢者がゲームで遊ぶ利点を解説し、高齢者におすすめのゲームをアナログとデジタルに分けて紹介します。
目次
高齢者がゲームをする利点

人がゲームで遊ぶ理由は、ただ「楽しいから」かもしれません。
しかし高齢者がゲームで遊ぶときには、楽しみ以外にも以下のような利点があります。
達成感を得られる
人間が達成感を感じると、脳内にドーパミンという神経伝達物質が放出されます。
ドーパミンは快楽物質とも呼ばれ、幸福感や快感を得たり、やる気や意欲を導き出す脳内ホルモンのひとつです。
脳疾患のパーキンソン病は、ドーパミンの不足によって起こるとも言われています。

高齢になるとできることが段々と減り、達成感を得られるシーンも少なくなってきます。
ゲームによる「勝った!」「できた!」などの小さな達成感の積み重ねは、ドーパミンの放出を促す助けになります。
パーキンソン病と関わりのあるレビー小体型認知症やその他の認知症については、以下の記事で詳しく説明しています。
▶認知症は主に4種類|特徴的な症状と原因・治療法・その他の原因疾患を解説
脳が活性化される
運動系のゲームであれ、机やテレビ画面に向かって遊ぶゲームであれ、ゲームで遊ぶには頭を使います。
ゲームで頭を使って遊ぶことにより脳の血流がうながされ、脳が活性化されて認知症の予防になると考えられています。
認知症の確実な予防法はまだ見つかっていませんが、一定の予防効果があると考えられている方法はゲーム以外にもいくつかあります。詳しくは以下の記事でご確認ください。
▶認知症を予防する方法とは?効果が期待できる予防法と科学的なアプローチ
運動する機会が得られる
フレイルとは英語の「Frailty/虚弱」を語源とする、高齢になり心身が衰えた状態を意味する言葉です。
フレイルを提唱した日本老年医学会は、フレイルを要介護状態の前段階として定義づけています。

フレイルのもっとも大きな原因のひとつは筋肉の衰えですので、定期的に運動して筋力を維持していく必要があります。
無理のない範囲で楽しく体を動かし筋力をキープする手段として、運動系ゲームの実施は大変役に立ちます。
適度な疲労感を得られる
体を動かしても頭を使っても、ゲームで遊んだ後には疲れが残ります。
過度な疲労は体に良くないものの、ある程度の疲れは健康のためにむしろ必要です。
何もせずにただ寝ているだけ、座っているだけでは、夜間の眠りが浅くなり、食欲も湧きません。
一日三食きちんと食べて夜にしっかり眠る。そんなあたり前の生活を高齢者が送るためには、楽しくゲームで体や頭を動かして、適度な疲労を体に与えることも効果的です。
人とのコミュニケーションが生まれる
孤独感は高齢者の生きる意欲を低下させ、認知症や老年期うつなどの発症リスクを高めます。
そのため高齢になっても、社会活動への参加や日々の対話によるコミュニケーションの機会を増やす努力が必要です。
しかし高齢者は視力や聴力が加齢により低下するため、円滑なコミュニケーションが取りづらくなります。
また身近な家族のみと日常的な会話をしているだけでは、話のネタが尽き、対話にも飽きがきてしまうでしょう。
いろいろなゲームで一緒に遊び、共通した話題を持つことで会話の内容が充実し、コミュニケーションの機会が増えます。
高齢者におすすめのゲーム:アナログ編

ここからは高齢者におすすめのゲームをご紹介します。
「アナログ編」ではパソコンやスマホを使わず、身近にあるものを使ったゲームや、デジタルに苦手意識を持つ高齢者でも参加しやすいゲームをピックアップしました。
体を動かすゲーム
以下は老人ホームやデイサービスのレクリエーションで実際に行われている、高齢者が自然に体を動かせる比較的安全なゲームです。
- ゲートボール
- グラウンドゴルフ
- 風船バレー
- 旗上げゲーム
- スプーンリレー
- ペットボトルボウリング
頭を使うゲーム
将棋や囲碁など高齢者が昔から楽しんできたゲームは、年齢を重ねても勝利する確率が高いため「勝った!」との達成感が得やすいと考えられます。
- 将棋
- 囲碁
- マージャン
- なぞなぞ
- しりとり
- イントロクイズ
高齢者におすすめのゲーム:デジタル編

次はパソコンやスマホなどのデジタル機器を利用したゲームを紹介します。
eスポーツ
コンピューターゲームをスポーツ競技の一種として捉えたeスポーツが、近年さまざまな自治体で高齢者の健康促進や介護予防のために取り入れられています。
日本でもっとも高齢化が進んでいると言われる秋田県秋田市のIT企業株式会社エスツーは、秋田県eスポーツ連合とも協力し、平均年齢65歳以上の選手によるeスポーツのプロチーム「マタギスナイパーズ」を設立しました。
若年層に人気が高いeスポーツへの参入をとおして「孫にも一目置かれる存在」となり、世代間コミュニケーションを活発にしようとの狙いがあります。
テレビゲーム
自宅で好きな時間に楽しめるテレビゲームにも、いろいろな種類があります。
コントローラーを操作するだけでなく、実際の体の動きと連動して遊ぶテレビゲームもあるため、運動の機会を増やす手助けにもなるでしょう。
家電量販店Joshinのオンラインショップには、シニア向けテレビゲームの売れ筋商品をまとめて紹介したページがあります。どんなテレビゲームを選べば良いか迷った人は参考にしてみてください。
参考:Joshin Webショップ|シニア世代におすすめゲーム
アプリゲーム
自宅だけでなく外出先でも、好きなタイミングや好きな場所で気軽に楽しめるゲームが、スマートフォンなどで遊べるアプリゲームです。
高齢者の場合、スマートフォンよりも画面の広いタブレットの利用がおすすめです。
アプリゲームにもいろいろな種類がありますが、雛人形を台座に飾るiPhoneのゲーム「hinadan」は、発表当時81歳の若宮正子さんがプログラミングしたハイシニア向けゲームです。
若宮正子さんはゲーム公開翌年の2018年に、82歳で国連の会議に参加し、基調講演で「デジタルスキルが高齢者にとって重要」とスピーチしています。
参考:82歳若宮さん、国連で講演 スマホアプリ開発者、高齢化会議 |西日本新聞
最新テクノロジーを高齢者向けゲームに活用

AIなどのテクノロジーの向上により、高齢者向けのゲームにも最新テクノロジーを活用しようとする動きが広まっています。
高齢者の認知機能を高めるビデオゲームを開発したアメリカの認知神経科学者Adam Gazzaley氏は、高齢者の認知機能向上にVR(バーチャル・リアリティ)が役立つのではという仮説を立てています。
VRメガネの装着による没入感が高ければ高いほど、脳の可塑性も高まるとの説です。脳の可塑性とは、脳の神経細胞群が新しいネットワークを構築して生まれ変わることで、繰り返しゲームの練習をすることで持続的なネットワークが築かれることが期待されています。
なおVRゲームの活用は、脳の認知機能向上以外にも研究が進められています。以下の記事でもご紹介していますのであわせてお読みください。
▶VRゲームで楽しみながら腰痛を治す 没入してアイテムを拾ううちに姿勢が改善
さらに同氏はAIにも大きな可能性を感じています。
VRやAIの可能性について語ったAdam Gazzaley氏の講演内容は、以下動画で参照できます。
同氏は動画の中で、私たちの脳は体験に関与することで働き、VR空間ではこの体験が生み出せる。今後よりターゲットに絞った体験、現実的な環境を作るのにAIが役立つと話しています。
参考:YouTube|Dr. Adam Gazzaley – A New Era of Experiential Medicine: Exploring the Role of Technology
まとめ
今回は高齢者とゲームの関係について解説し、おすすめのゲームを紹介しました。
高齢者にとってゲームは、単なる遊びではありません。高齢者の健康をうながし、認知症を予防しながら、やる気や生きがいをも与えてくれる存在です。
高齢者の人生を良いものにするためも、さまざまなゲームを活用しましょう。
