認知症を予防する方法とは?効果が期待できる予防法と科学的なアプローチ

認知症を予防する方法とは?効果が期待できる予防法と科学的なアプローチ

最終更新日 2022.11.24

この記事の要点

  1. 確実な認知症予防の方法はまだ見つかっていない
  2. 認知症予防法の実践は健康改善にも役立つ
  3. IT技術で認知症を予防しようとする動きがある

高齢化が進んでくると、自分自身や家族の認知症リスクについても気になる方は多いでしょう。

世の中にはいろいろな認知症の予防法が取り沙汰されていますが、どんな対策をすれば認知症は予防できるのでしょうか。

今回は認知症の予防法を紹介しつつ、認知症予防の科学的なアプローチについても解説します。

認知症予防はいつから始めるべきか

認知症の予防対策は、いつから始めても構いません。

なぜなら一般的に良いと言われている認知症予防の方法は、そのまま心身の健康につながる方法がほとんどだからです。

今回ここで紹介する認知症の予防法は、年齢や性別、個々の状況に関わらず、多くの方の健康改善に役立ちます。

いつ始めても良く、やってみて損はないということと覚えておきましょう。

認知症の完全な予防法は見つかっていない

残念ながら「これをすれば認知症は確実に予防できる」という決定的な予防法は、まだ見つかっていません。

認知症に限らず、どんな病気であっても治療法や予防法を確立するためには、長期間の研究と多くの検証が必要になります。

現在「認知症予防に効果がある」とされている予防法は、いずれも「予防効果が期待できる」程度のあいまいな対策にすぎません。

ですが、認知症の予防効果が期待できる対策は健康を改善する対策でもあります。

認知症予防の確実な効果があるなしに関わらず、健康的な生活を送るために認知症予防法を実践しましょう。

認知症予防効果が期待できる対策

2022年時点で認知症予防に一定の効果が期待できると言われている対策を紹介します。

食事で予防

栄養バランスの取れた食事は、認知症だけでなく生活習慣病などの予防のためにも最適です。

何かひとつの栄養素や食材を集中して食べれば良いというものではありません。

高齢になると食欲が低下するため、栄養バランスがかたよりがちになります。三食きちんと食事をとり、いろいろな栄養素を摂取できるよう心がけることが大切です。

以下の食材は脳の認知機能の低下を防ぐ効果が期待できるとされています。

緑黄色野菜・果物

  • 含まれる栄養素:ビタミンC・ビタミンE・βカロチン
  • 期待できる効果:血中コレステロール値の低下・抗酸化作用

青魚

  • 含まれる栄養素:不飽和脂肪酸(DHA・EPA)
  • 期待できる効果:記憶力の向上

赤ワイン

  • 含まれる栄養素:ポリフェノール
  • 期待できる効果:抗酸化作用・抗炎症作用・抗腫瘍作用

運動で予防

適度な有酸素運動は認知症のリスクを減らせると言われています。有酸素運動とはウォーキングやジョギング、スイミング、エアロビクスなどです。

運動して筋力を維持すれば、筋力低下による転倒を防止する効果も期待できます。

しかし高齢者の場合、激しい運動はかえってケガの原因にもなりかねません。無理のない範囲で継続できる運動習慣を身につけることが大切です。

トータルヘルスケアサービスを提供するホロニクスグループの公式YouTubeチャンネルでは、楽しみながら認知症を予防できる認知症予防運動「コグニサイズ」を動画で見ることができます。

脳トレで予防

「脳トレは認知症予防に役立つ」として、現在は多くの脳トレ本が発売されています。

脳トレで脳内の血流を促進すれば脳が活性化でき、認知機能が維持できると考えられているからです。

脳トレは、特に専用ドリルなどを購入する必要はありません。ごく単純な計算や、なぞなぞ・しりとりなどのゲームでも脳は活性化できます。

また脳トレは認知症予防だけでなく、認知症の早期発見にも役立ちます。

日本生命保険の子会社であるニッセイ情報テクノロジー株式会社が提供している「暮らしの脳トレ」は、介護施設の入居者がイベント形式で行った脳トレの結果から、入居者の認知機能の状況を把握できるシステムです。

同システムは2020年に公益社団法人企業情報化協会の「IT賞(社会課題解決領域)」を受賞しています。

参考:ニッセイ情報テクノロジー|介護施設向け認知症対策トレーニングシステム(暮らしの脳トレ)

ゲームで予防

コンピューターゲームについては、特に高齢者は悪いイメージを抱きがちのようです。

確かにゲームのやりすぎは「ゲーム依存症」とも呼ばれ、さまざまな弊害を引き起こす可能性があります。

しかしそんなコンピューターゲームも、適度な楽しみ方をすれば認知症予防に役立つのではと考えたインドネシアの研究グループがあります。

興味深い研究ですので、ぜひ以下の記事で研究結果を確認してください。
コンピュータゲームが認知症に非常に有効かもしれない件について。

またVRゲームで軽度認知障害(MCI)が改善させる研究結果もあります。あわせてお読みください。
▶ VRゲームで軽度認知障害(MCI)が改善!認知テストや脳波、身体テストで効果を確認

睡眠で予防

アルツハイマー型認知症は、アミロイドβというタンパク質が脳内に蓄積されて、そのアミロイドβが脳の神経細胞を破壊するために発症すると考えられています。

通常、アミロイドβは睡眠中に脳から血液中に排出されます。しかし睡眠不足になると、アミロイドβの排出がさまたげられ、認知症リスクが高まります。

つまり睡眠不足はアルツハイマー型認知症の要因にもなり得るため、質の良い睡眠をしっかり取ることが認知症予防に役立つと考えられます。

眠りが浅い、なかなか入眠できないなど夜間の睡眠が不足している人は、日中に30分程度の昼寝がおすすめです。ただし30分以上の昼寝は夜間の入眠しづらさにつながり、かえって認知症リスクを高めてしまいますので注意しましょう。

コミュニケーションで予防

一番の認知症予防は、家族や周囲の人とのコミュニケーションを活発にする、積極的に社会参加することだと言われています。

アメリカのある地域住民を長年にわたって追跡調査しているFramingham Heart Studyは、中年世代に継続的な孤独を感じていた人は、そうでない人に比べて後に認知症を発症するリスクが約2倍高かったとの調査結果を挙げています。

参考:Alzheimer’sAssociation|FraminghamHeartStudyにおける孤独とアルツハイマー病認知症のリスクとの関連

高齢になってからの孤独も、同じように認知症のリスクを高めるため注意が必要です。

いろいろな人と気軽におしゃべりができる活発なタイプであればコミュニケーションにも困りませんが、内気なタイプの人は、なかなかおしゃべり仲間を作ることも難しいでしょう。

高齢者の孤独を解消するロボットペットなどの活用も一定の効果が期待できます。おすすめのロボットペットは以下の記事で紹介しています。
2021年おすすめロボットペット5選 「高齢者の孤独感を解消する」科学的調査結果をもとに

病気の治療が認知症予防にも役立つ

脳の機能低下の原因にはさまざまなものが考えられます。その中のひとつが、脳以外の体の疾患や機能低下です。

何らかの体の不具合を抱えている方が治療を行うことで、認知症のリスクも低減が期待できるでしょう。

以下からは認知症予防にも役立つ病気の治療や機能改善についてご説明します。

生活習慣病の治療

糖尿病や肥満、高血圧、脂質異常などの生活習慣病は、脳を含む体全体の血流を悪くして脳の機能低下をも引き起こします。

健康診断で生活習慣病を指摘されている人は、認知症になる前にしっかり治療をして、認知症にならない健康的な肉体を取り戻しましょう。

歯周病の治療

アルツハイマー型認知症の原因物質アミロイドβは、歯周病菌によって増加することが最近の研究でわかってきました。

そのため歯周病の治療は、認知症予防にも役立つと考えられます。

初期の歯周病は症状が分かりづらいため、なかなか自分では気づけません。

定期的に歯科の検診を受けることをおすすめします。

補聴器の使用

70歳を超えると、およそ半数の人は耳が遠くなると言われています。これは加齢性難聴と呼び、一般的な加齢の症状です。

しかし難聴は認知症の発症要因のひとつでもあります。

耳の聴こえづらさが脳機能に直接関係しているわけではありませんが、会話の相手が言っている内容が聞き取れないと会話にも消極的になり、コミュニケーションの機会が低下すると考えられるからです。

加齢性難聴は病気ではないため、根本的な治療法はありません。昔に比べて耳が遠くなったと感じた方は、医師の指導のもと補聴器を使用して「聴こえ」の改善を図ることをおすすめします。

自分の聴覚の状態を知るためには、以下「聴こえのセルフチェック」が参考になります。

IT技術で認知症予防する動きが広がっている

「IT技術で認知症予防」というと、まずは脳トレアプリなどが連想されるかもしれません。

しかし近年では、IT技術を使って違う側面から認知症予防にアプローチしようとする動きが広まってきています。

2020年に製薬会社のエーザイとインターネット関連企業のDeNAが共同開発したスマートフォンアプリ「Easiit」は、アプリ利用者の歩数や睡眠時間、食事などのライフログから認知症予防に良い行動ができているかを評価するアプリです。

参考:株式会社エーザイ|ニュースリリース「エーザイ・DeNA 業務提携契約に基づきスマートフォンアプリ「Easiit(イージット)アプリ」を共同提供」

また当サイトでは、VR(バーチャルリアリティ)で高齢者の心の健康を改善する研究をご紹介したことがあります。心の健康はストレス改善や睡眠の質改善に役立ち、上で紹介した予防習慣にもつながると考えられます。
VRとアロマで高齢者の「心の健康」が改善する

また別の記事では、認知症になった方へのIT技術の活用についても解説しました。
日本と世界で研究が進む介護へのAI活用 認知症高齢者に役立つAI技術とは

IT技術の可能性のひろがりは、認知症になる前の方も、認知症になった方も救う可能性があるのです。

まとめ

今回は認知症予防について解説しました。

確実に認知症にならない予防法が判明すれば、高齢者介護のさまざまな問題点が解決できるかもしれません。

いま予防が期待できる対策を実践しながら、一日も早い認知症予防法の確立を待ちましょう。

臼井 貴紀
● 監修者情報
臼井 貴紀 Usui Kiki
Hubbit株式会社 代表取締役社長。藤田医科大学客員教員。早稲田大学卒業後、ヤフー株式会社に新卒入社。営業、マーケティング、開発ディレクション、新規事業開発など幅広く担当。その後、ベンチャー企業に転職しAIを活用したMAツールの立ち上げを行った後、Hubbit株式会社を設立。高齢者施設に3ヶ月住み込んで開発したCarebee(ケアビー)は、日本経済新聞、NHKおはよう日本、ABEMA PRIME等に出演。
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