【分身ロボットOriHime】オリィ研究所 所長 吉藤 オリィ氏|インタビュー第8弾

【分身ロボットOriHime】オリィ研究所 所長 吉藤 オリィ氏|インタビュー第8弾

ただのカフェではなく、「寝たきりの先を研究・実験する場所」

——肉体労働なら働く間口が広がると考え生まれたのが、「分身ロボットカフェ」

新たに番田の後を引き次いでくれる人が必要でしたが、秘書は難しい仕事ということもあり、すぐには決まりませんでした。

働きたいと希望する方は多いものの、高校を卒業したばかりや経験がない状態で秘書をやったり、頭を使った仕事をいきなりするのは難しいと思いました。

そこで、高校卒業したばかりでもできる仕事、人に喜んでもらえることって何だろうと考えた結果、「肉体労働」だと考えたのです。

その後、分身ロボットカフェをするためにカフェの店員として働いてくれる人を募集したところ、立て続けに10名も採用することができました。

面接をする中で、こんなに話せれば大丈夫、こんなに気さくに笑えるならお客さんにも喜んでもらえるのではないか、と思った以上に活躍できそうな人材がいることに自分でも驚きました。

分身ロボットカフェDAWN ver.βのイベント時の様子
分身ロボットカフェDAWN ver.βのイベント時の様子
(パイロットの方がOriHimeを通して接客や会話をしてくれる)

——分身ロボットカフェは現在70名ほどのパイロット(カフェでOriHimeを遠隔操作し働く人)が所属しているそうですが、どんな場所なのでしょうか?

このカフェはただのカフェではなくて、働くメンバーもお客さんも一緒に、寝たきりの先に行けるかという実験をし続ける場所です。

ここで食事をすると見習い研究員証(スタンプカード)がもらえるのですが、3回来店してスタンプを3つためてもらうと研究員証にグレードアップし、研究員だけが参加できるイベントなどがあります。

その時にはどちらかというとお客さんではなく身内扱いになり、OriHimeにローラーをつけてみんなでサッカーをして、それを応援するというような時間も体験できるのです。

こういう取り組みを通して、我々の仲間を増やしていきたいと思っています。

寝たきりでも仕事ができる、自分の介護もできることを証明した「分身ロボットOriHime」

——今後OriHimeは、どのように活用できるのでしょうか?

現在、カフェで働いている姿を見た企業の方から、スカウトされるパイロットがどんどん増えて、それぞれが別の仕事に就いています。副業OKであればカフェと掛け持ちしている方もいます。

例えば、介護施設から話し相手になってほしいというニーズが多く、OriHimeは非接触のためコロナ感染のリスクがなく、話し相手になれるということで実際に使用してもらっています。

介護職の方は日々の業務に追われてしまっていて、利用者とのコミュニケーションに時間が割けないので、代わりにOriHime に利用者の話し相手になってもらえないかという依頼が来ています。

分身ロボットカフェ DAWN ver.βの店内
分身ロボットカフェ DAWN ver.βの店内

——介護の分野での活躍も期待できるのではないでしょうか?

高齢者への話し相手だけでなく、自分の介護を自分で行うことも可能になってきます。

障害のある方や寝たきりの方でもOriHimeを使用することで、今までヘルパーさん等にお願いしていたちょっとしたことが自分でできるようになるのです。

例えば、お客さんを迎えてお茶を出したり、孫の頭をなでてあげたり、自分の部屋のカーテン開けたり、布団を自分で直したりすることができたり。

これも最初はあまり信じてもらえませんでしたが、このカフェがきっかけでその未来をいろんな方に信じてもらえるようになりました。

寝たきりでも人間らしく生きる未来を創るために

——オリィ研究所として、現在どんな取り組みに注力しているのでしょうか?

今は、外出困難者の仕事をどれだけ増やせるかが大切だと思っています。

寝たきりの状態でも、自分で仕事をして稼いだお金で誰かに何かを買ってあげたり、誰かと関係性を構築できたりと、自分らしく生きる選択肢がある状態を作りたいのです。

寝たきりになっても何かを残し続けられる未来を創ることはできるのではないかと考えています。

生きることは、生かされることではなく、自分で生きたいと思うことが大切で、これが人間らしさだと思うのです。

吉藤オリィさんの写真

——最後に、吉藤さんが想う2040年の介護の世界を教えてください。

介護側と被介護側で分けられると思っています。

介護側の環境にある、人手不足や肉体労働に関する課題に関しては、うまく機械やサイボーグなどを徐々に駆使し始めて負担を減らしていく動きが進むだろうと考えています。

被介護側の環境に関しては、被介護者自身が介護者になれるという考え方ができると思っています。

これから(老化や病気の進行などにより)肉体労働が難しくなっていく中で、これからの時代をどうやって生き抜くのかというのは、全世界が注目していることでもあります。

だからこそ、自分で自分を介護したり、他の人を助けに行けたり、自分の心を最後まで保ち続けるというところにどう挑戦し続けられるか、という部分をこれから一緒に考えていく時代になるのではないでしょうか。

今回のインタビューを通して

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

インタビュー前に参加した「DAWN Seasonal event〜桜宴〜」というカフェのイベントは、OriHimeを遠隔操作して接客をしてくれるパイロットの方が力を合わせて企画・準備・開催したものでした。

パイロットの方とのお話は、カフェの店員と客という垣根がなく、すぐに仲良くなれる不思議な感覚で、心温まる空間でした。

吉藤さんは分身ロボットOriHimeを開発・活用するだけでなく、寝たきりの未来を見つめていました。

私たちにも思うように動けなくなる将来が来ます。そんな時どう自分の人生を生きるのか、そこに希望を見出してくれるのが分身ロボットOriHimeなのだと実感しました。

分身ロボットカフェDAWN パイロットの皆さん、オリィ研究所の皆さん、そして吉藤さん、貴重なお時間をありがとうございました。