認知症は主に4種類|特徴的な症状と原因・治療法・その他の原因疾患を解説

認知症は主に4種類|特徴的な症状と原因・治療法・その他の原因疾患を解説

最終更新日 2024.02.28

この記事の要点

  1. アルツハイマー型認知症・脳血管性認知症・レビー小体型認知症は三大認知症、前頭側頭型認知症(ピック病)を含めた4種類が主な認知症とされる
  2. 認知症の原因疾患は70種類以上もある
  3. それぞれの認知症への理解が適切な介護につながる

ひとくちに認知症と言っても、その中にはいろいろな種類の認知症があります。

どの種類の認知症も発症した人の認知機能を低下させる点では同じですが、それぞれの認知症ごとに少しずつ特徴が異なるため、介護や看護の対応も種類に合わせて変化させていく必要があります。

今回は認知症の種類について解説します。ひとりひとりの認知症高齢者に最適な介護を提供するために、認知症の種類をきちんと学びましょう。

認知症の種類は主に4つ

認知症と診断された方の8割以上は「アルツハイマー型認知症」「脳血管性認知症」「レビー小体型認知症」のいずれかに診断されています。この3種類の認知症は一般的に三大認知症と呼ばれています。

また高齢者の認知症としては割合が少ないものの、若年性認知症の割合が2番目に高い「前頭側頭型認知症(ピック病)」もプラスして、四大認知症と呼ぶこともあります。

今回は四大認知症を主な認知症の種類と定義し、それぞれの認知症について解説します。

認知症の種類により原因と症状が違う

今回紹介する4種類の認知症は、それぞれ認知機能を低下させる原因が異なります。

また認知症の発症により出現する中核症状と周辺症状は4種類とも共通してる部分が多いですが、認知症の種類によっては特徴的な症状が出現します。

認知症の種類ごとの原因と特徴的な症状を知り、治療の可能性についても理解しておきましょう。

認知症の全般的な症状や中核症状と周辺症状の説明については、以下の記事で詳しく解説しています。

認知症の症状を理解しよう【初期症状・中核症状・周辺症状の違い】

アルツハイマー型認知症

四大認知症の中でも、割合がもっとも多い認知症の種類はアルツハイマー型認知症です。

2013年に行われた認知症対策研究事業の調査によれば、都市部地域の認知症高齢者の中でアルツハイマー型認知症が占める割合は68%です。

さらにアルツハイマー型認知症は他の種類の認知症よりも増加傾向にあり、2022年現在の割合は調査時点よりも高くなっていると推定されます。

アルツハイマー型認知症の原因

アルツハイマー型認知症の原因はまだはっきりとはわかっていませんが、脳内にアミロイドβやタウタンパクという物質が溜まり、その物質が神経細胞を壊し脳を委縮させるとの説が有力です。

しかし、なぜアミロイドβやタウタンパクが脳内に蓄積されるのかの理由は、まだ解明されていません。

アルツハイマー型認知症の特徴的な症状

アルツハイマー型認知症の症状は、物忘れが始まり、次第に場所や時間が分からなくなるようになります。その他にも、物を盗まれたと思ったり、家から出て行ってしまったりすることもあります。

アルツハイマー型認知症の特徴的な症状として、年をとっても忘れないようなことを忘れてしまいます。そのため、普通の物忘れと間違われやすく、病気に気づかないことが多いのです。早く病院に行って治療を始めると、症状が悪くなるのを遅らせることができます。

アルツハイマー型認知症の方は、同じ話を繰り返したり、物の名前を間違えたりすることがあります。家族は、それにイライラしたり、悲しくなったりすることがあるかもしれません。しかし、本人は自分のことを分かってもらいたいだけなのです。そのため、怒ったり、否定したりしないで、優しく話を聞いてあげたり、一緒に楽しいことをしたりしましょう。

また、症状でなく発症率に関して言えば、男性よりも女性の発症率の方が比較的多いという特徴があります。その理由としては女性の方が長寿であることやホルモンが可能性としてあげられます。 

また、アルツハイマー病の発症率は女性の方が多いですが、男性の方が罹患後の死亡リスクは高いという研究もあります。

参考:アルツハイマー病進行の性差に関わる遺伝子|健康長寿ネット 

アルツハイマー型認知症の治療法

2023年に日本のエーザイ株式会社と、米国のバイオジェン社が共同で開発した認知症の新薬である「レカネマブ」が承認されました。レカネマブは、アルツハイマー病の進行抑制を期待できる効果があるとされる薬です。

アルツハイマー病の要因とも言われるアミロイドベータ(Aβ)を、選択的に除去してアルツハイマー病の進行を防ぐと考えられています。

ただ、この薬が使える(適応となる)方は限定されているため、医師の説明をよく聞いて服用する必要があります。

参考:アルツハイマー病の新しい治療薬 レカネマブについて

また薬物を使わない非薬物療法として、運動療法や音楽療法なども症状の緩和が期待できます。

脳血管性認知症

脳梗塞や脳卒中など、脳の病気に起因して発症する認知症が脳血管性認知症です。

認知機能の低下があり、その背景に脳血管疾患の影響が認められたときに脳血管性認知症であると診断されます。

高齢者がかかる認知症でもっとも割合が多い認知症の種類は上記のアルツハイマー型認知症ですが、脳血管性認知症は65歳以下の人がなる若年性認知症の中でもっとも割合が多い認知症として知られています。

脳血管性認知症の原因

脳血管性認知症は、脳の血管が詰まる(脳梗塞)や脳の血管が破れる(脳出血)などの脳血管障害により、脳の神経細胞がダメージを負うことにより発症します。

脳血管障害の原因には、糖尿病や高脂血症などの生活習慣病が背景にあると考えられます。

脳血管性認知症の特徴的な症状

神経細胞が損傷した箇所により、脳血管性認知症の症状は異なります。

基本的な症状はアルツハイマー型認知症とほぼ同様ですが、脳血管障害によりダメージを受けた箇所が体のどの部分をつかさどっているかで、その人ごとに症状が変わる点が特徴的です。

記憶障害:物忘れが多くなり、日常生活に支障が出るようになります。短期記憶が低下し、最近の出来事や話した内容を忘れやすくなります。

判断力障害:物事の優先順位や重要性が分からなくなり、適切な判断ができなくなります。例えば、財布をなくしても気にしなかったり、危険な行動をとったりします。

感情失禁:感情のコントロールができなくなり、怒ったり泣いたりすることが多くなります。また、笑っているときに急に怒り出したり、泣き出したりすることもあります。これは、本人にとっては理由があってのことですが、周りの人には理解しにくいことが多いです。

運動障害:手足の震えや麻痺が起こり、歩行や動作が困難になります。また、バランス感覚が低下し、転倒や事故のリスクが高まります。

嚥下障害:食べ物を飲み込む力が弱くなり、むせたり嘔吐したりすることがあります。また、食べ物が気管に入ってしまい、肺炎を起こすこともあります。

排泄障害:尿や便のコントロールができなくなり、尿失禁や便失禁を起こすことがあります。また、トイレに行きたいという感覚が鈍くなり、トイレに行くタイミングが分からなくなることもあります。

血管性認知症の症状は、一日の中でも変動があります。朝は元気で話せるのに、夕方にはぼんやりして話せなくなることもあります。これは、脳血管障害が全体的に起きているわけではなく、一部分だけ損傷しているためです。このように、症状がまだらに現れることから、血管性認知症は「まだら認知症」とも呼ばれます。

脳血管性認知症の治療法

一度損傷した脳細胞は回復することがないため、脳血管性認知症についても根本的な治療方法はありません。

脳血管性認知症の薬物治療ではアルツハイマー型認知症と同じく進行を遅らせる治療薬を使いながら、脳血管障害の再発を予防するための高血圧薬や脳血流改善薬などが併用されます。

また脳血管障害により低下した機能を改善するためのリハビリも積極的に行われます。

レビー小体型認知症

レビー小体型認知症はパーキンソン病と同じ症状が出るため、かつてはパーキンソン病と誤診されていたことも多い認知症でした。

1976年に日本の医学者である小阪憲司氏が最初に発見し、現在では世界中で認知症の種類のひとつとして認知されています。

レビー小体型認知症の原因

レビー小体型認知症は、脳内にレビー小体という特殊なタンパク質が溜まることで発症します。

レビー小体が大脳皮質(だいのうひしつ)にレビー小体が溜まり、認知症の症状がでます。 レビー小体が脳幹に溜まると手足のふるえなどパーキンソン症状が発生します。

レビー小体がなぜ脳に発生するのかは今のところ十分にわかっていません。 

レビー小体型認知症の特徴的な症状

レビー小体型認知症の症状は、人によってさまざまですが、以下のようなものがあります。

幻視:実際にはいない人や物が見えたり、目の前の物が違うものに見えたりすることです。例えば、「りすや蛇が部屋にいる」「知らない人が家に入ってくる」「子どもが帰ってきた」と言ったり、幻視に話しかけたりします。幻視は、レビー小体型認知症の初期によく見られる症状です。

妄想:実際にはないことを本当だと思い込んだり、間違ったことを言ったりすることです。例えば、「お金を盗まれた」「夫に浮気された」「家族が偽者だ」と言ったり、自分の年齢や職業を間違えたりします。妄想は、幻視と一緒に起こることが多いです。

パーキンソン症状:手足がふるえたり、体がこわばったり、動きが遅くなったりすることです。例えば、服を着替えるのが難しくなったり、歩くのが遅くなったり、バランスを崩して転んだりします。パーキンソン症状は、レビー小体型認知症の特徴的な症状です。

睡眠障害:寝ているときに大声を出したり、暴れたりすることです。これは、レム期睡眠行動異常症という睡眠障害です。レム期とは、夢を見るときの睡眠の段階です。レビー小体型認知症の人は、レム期に悪夢を見て、その内容に反応してしまうことがあります。睡眠障害は、レビー小体型認知症の初期によく見られる症状です。

レビー小体型認知症の治療法

レビー小体型認知症の治療方法は、基本的にはアルツハイマー型認知症の治療方法と同様です。

パーキンソン症状の対症療法として抗パーキンソン病薬の使用、幻視や異常行動の抑止に抗精神薬による症状コントロールをするなど、個々の症状によって治療薬を併用します。

前頭側頭型認知症(ピック病)

前頭側頭型認知症とは脳の前頭葉や側頭葉前方が委縮する認知症です。前頭側頭型認知症のおよそ8割の方に「Pick球」が確認できることからピック病とも呼ばれています。

かつては前頭側頭葉型認知症の方すべてにPick球が存在しているとされてきましたが、研究が進むにつれてPick球がなくても脳の委縮が発生することがわかり、現在ではピック病は前頭側頭型認知症の一種に分類されています。

40代から60代の初老期に発症するケースが多く、70歳以上の発症率は非常に低いことが特徴的な認知症です。

前頭側頭型認知症(ピック病)の原因

前頭側頭型認知症の原因は脳に異常タンパク質が蓄積するためです。しかし、どんなタンパク質が異常タンパク質に変異するのか、なぜ蓄積するかは解明されていません。

前頭側頭型認知症の中でもピック病に関して言えば、異常タンパク質に変異するタンパク質はTDP-43やFUSではないかと推定されています。

前頭側頭型認知症(ピック病)の特徴的な症状

前頭側頭型認知症はアルツハイマー型認知症などの他の認知症と違い、記憶障害や見当識障害などの症状は目立って見受けられません。

前頭側頭型認知症の主な症状は「人格の変化や異常行動」です。 この病気は「初期」「中期」「後期」の3つの段階に分けられ、それぞれで症状の特徴が異なります。

初期段階:感情が鈍くなり、ぼんやりしたり、他人に関心を示さなくなったりします。 身だしなみに無頓着になり、同じことを何度も繰り返すこともあります。 この段階では、人格の変化や異常行動が目立つため、精神疾患と誤診されることがあります。 罪悪感が失われることもあるので、万引きや痴漢などの不適切な行為に注意が必要です。

中期段階:常同行動と呼ばれる同じ行動の繰り返しが顕著になります。 集中力も低下するので、人と話している最中にも突然立ち去ることがあります。

後期段階:精神状態が不安定になり、食事や外出が減る傾向があります。 進行はゆっくりですが、年単位で悪化し、最終的には寝たきりになる可能性があります。

この病気は介護者にも大きな負担をかけますが、本人が病気であることを理解し、できる限り本人の意思を尊重することが大切です。 また、人の声や動きに過敏に反応することがあるので、静かで落ち着いた環境を作ることも重要です。

前頭側頭型認知症(ピック病)の治療法

前頭側頭型認知症の治療薬はまだ開発されていません。

反社会的行動などの異常行動を緩和するために抗精神病薬などを使用するなど、対症療法が中心の治療となります。

その他の認知症原因疾患

認知症を発症する要因となる原因疾患は、一説によれば70種類以上もあると言われています。

脳腫瘍
脳腫瘍は良性または悪性のいずれかであり、症状は腫瘍の大きさ、種類、位置によって異なります。悪性脳腫瘍は脳がんとも呼ばれ、脳の組織を侵食し、治療が困難なことがあります。

慢性硬膜下血腫
慢性硬膜下血腫は主に高齢者に見られ、しばしば軽度の頭部外傷後に発生します。この病気は徐々に進行し、頭痛、記憶障害、歩行困難などの症状を引き起こすことがあります。

正常圧水頭症
正常圧水頭症は特に高齢者に見られ、歩行障害、認知症、尿失禁といった症状を引き起こすことがあります。この状態は適切な診断と治療により改善することが可能です。

進行性核上性麻痺
進行性核上性麻痺は、バランスの問題、眼の動きの障害、言語障害など多様な症状を引き起こします。この病気は現在、治療法が限られており、症状の管理が主な治療となります。

嗜銀顆粒病
嗜銀顆粒病は、特定のタイプの神経細胞内に異常な蓄積が見られることが特徴です。この病気は進行性であり、認知症や他の神経症状を引き起こすことがあります。

甲状腺機能低下症
甲状腺機能低下症は、疲労、体重増加、寒さへの過敏などの症状を引き起こすことがあります。この状態は甲状腺ホルモンの補充により治療することができます。

副甲状腺機能亢進症
副甲状腺機能亢進症は、骨の疼痛、筋力の弱さ、気分の変動などの症状を引き起こすことがあります。この病気は高カルシウム血症を引き起こす可能性があり、重要な健康問題につながることがあります。

クロイツフェルト・ヤコブ病
クロイツフェルト・ヤコブ病は、急速に進行する致命的な脳疾患であり、認知症、筋肉のけいれん、動きの調整が失われるなどの症状が現れます。現在、この病気に対する治療法はありません。

ビタミンB12欠乏症
ビタミンB12欠乏症は、貧血、疲労、神経障害などを引き起こす可能性があります。この状態は適切な栄養補給やサプリメントにより改善することが可能です。

ハンチントン症
ハンチントン症は、不随意運動、認知障害、情緒不安定などを引き起こします。遺伝的な要因が強く、現在のところ治療法は症状の緩和に限られています。

薬物・アルコール中毒
薬物やアルコールの長期的な乱用は、肝臓、心臓、脳などの重要な臓器に深刻な損傷を与える可能性があります。回復は可能ですが、専門的な治療と強い意志が必要です。

認知症の対応のポイント

認知症の方と接するときには、以下のポイントを心がけましょう。

共感する

認知症の方は、妄想や幻視などを本当に見聞きしていると思っています。そのため、否定すると自信を失ったり、ストレスを感じたりします。記憶は薄れても感情は残るので、「否定された」という気持ちは忘れません。そこで、否定せずに共感し、本人の気持ちを落ち着かせることが大切です。

自尊心を傷つけない

認知症の方の行動や発言を否定したり、赤ちゃん扱いしたりすると、自尊心が傷つきます。自尊心が傷つくと、自信がなくなり、コミュニケーションが減り、うつになることもあります。だからこそ、本人の自尊心を尊重し、本人のペースに合わせた対応や意思確認をしましょう。本人の好きなことに挑戦させ、自信を持たせ、その人らしさを大切にしましょう。

距離を置くことも大切

認知症の症状が進行すると、対応が難しくなり、介護者の負担も増えます。介護者の限界を超えないように、対策を取りましょう。たとえば、本人が混乱しているときには、説得するのではなく、一度目の前から離れてみましょう。距離を置くことで、本人も介護者も気持ちが落ち着くことがあります。また、認知症は完治できないので、施設入居を検討することも一つの選択肢です。

認知症は原因や特徴が異なるので、それぞれの理解を深めて対応しましょう。理解することは、本人のためだけでなく、介護者のためでもあります。特徴がわからないと、対応に戸惑うことが多くなります。 スタッフが適切に対応するので、本人も家族も安心できます。

グループホーム

グループホームでは、少人数で共同生活をします。スタッフだけでなく、他の入居者ともコミュニケーションがとれる環境です。

家事は自分たちで行います。家事は脳に刺激を与え、認知症の進行を遅らせたり、症状を緩和したりする効果があります。

居室は個室が多く、プライベート空間が確保されます。リラックスできる時間を作り、メリハリのある生活ができます。

まとめ

今回は認知症の種類について解説しました。

認知症の介護の第一歩は、まず認知症を知ることです。

認知症の種類について正しい知識を学び、これからの介護に活かしましょう。

AIケアラボではこの記事以外にも認知症に関する記事を執筆しています。#認知症で関連記事を見ていただけるのであわせてお読みください。

認知症に関する記事はこちら|AIケアラボ

臼井 貴紀
● 監修者情報
臼井 貴紀 Usui Kiki
Hubbit株式会社 代表取締役社長。藤田医科大学客員教員。早稲田大学卒業後、ヤフー株式会社に新卒入社。営業、マーケティング、開発ディレクション、新規事業開発など幅広く担当。その後、ベンチャー企業に転職しAIを活用したMAツールの立ち上げを行った後、Hubbit株式会社を設立。高齢者施設に3ヶ月住み込んで開発したCarebee(ケアビー)は、日本経済新聞、NHKおはよう日本、ABEMA PRIME等に出演。
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