【2022年最新版】介護業界のM&A事例4種(株式譲渡・事業譲渡・子会社化・業務提携)を紹介

【2022年最新版】介護業界のM&A事例4種(株式譲渡・事業譲渡・子会社化・業務提携)を紹介

最終更新日 2022.11.22

この記事の要点

  1. 介護業界のM&Aが増えている
  2. 介護業界のM&A手法は「株式譲渡」「事業譲渡」「子会社化」「業務提携」
  3. 介護M&Aの具体的な事例を紹介

2025年問題を目の前にして、介護業界のM&Aが進んでいます。

具体的にはどのような介護事業所が、どんな企業とM&Aを行っているのでしょうか。また介護事業所のM&Aで使われているM&A手法はどのような形式なのでしょうか。

今回は主に2019年~2021年に成立した介護業界のM&A事例を取り上げながら、介護M&Aの手法を説明します。

介護におけるM&Aとは

M&A(Merger and Acquisitions)とは企業の買収や合併による経営権の譲渡を指します。また広義の意味では資本提携や業務提携による企業の協業も含まれます。

近年の介護業界では、事業所経営者の高齢化や介護マーケットの拡大、または異業種の介護業界への参入などの理由により、M&Aを利用した企業の再編が活発化しています。

介護業界M&Aの現状と今後

経済・社会に関する調査研究を数多く行っている株式会社大和総研が調査した結果によると、介護業界のM&A件数は東日本大震災の翌年2012年から増加傾向を強め、2018年時点で年間80件を超えています。 

■介護業界のM&A件数の推移 

介護業界のM&A件数推移のグラフ

2010年時点では年間10件程度だったことを考えると、介護業界のM&Aはすでに経済市場において定着し、今後も件数を伸ばしていく可能性が大きいと考えられます。 

介護におけるM&Aについては以下の記事で詳しく解説しています。本記事とあわせて参考にしてください。

介護事業所のM&Aをわかりやすく解説 現在の動向と増加理由・検討のポイント

具体的な介護M&Aの事例を紹介

ここからは主に2019年以降に実施された介護業界のM&A事例をご紹介します。

M&A手法には以下の4種類があります。

  • 株式譲渡
  • 事業譲渡
  • 子会社化
  • 業務提携

本記事に取り上げるM&A事例では、上記4種類のM&A手法にわけてご紹介します。

株式譲渡によるM&A事例

株式譲渡とは、企業が持っている自社の株式を相手先企業に買い取ってもらい、一切の経営権を承継する形式のM&A手法です。

事例1

  • 日付:2020年4月7日
  • 譲渡企業:株式会社らいふホールディングス
  • 譲受企業:綜合警備保障株式会社(ALSOK)

概要:有料老人ホーム運営を中心とした施設系事業の一切を株式譲渡により継承しました。M&A後はALSOK介護グループの一員として引き続き介護事業を継続しています。

参考:株式会社らいふ|らいふホールディングス全株式を綜合警備保障株式会社(ALSOK)に譲渡する件

事例2

  • 日付:2019年7月
  • 譲渡企業:株式会社ひだまり
  • 譲受企業:株式会社ケアサービス

概要:譲受側のシニア向け施設紹介事業の開始に伴い、譲渡側の全株式を取得し連結子会社化しました。その後2020年10月に子会社は吸収合併されています。

参考:株式会社ケアサービス|沿革

事例3

  • 日付:2019年10月28日
  • 譲渡企業:株式会社スクーデリア
  • 譲受企業:日本パムコ株式会社(日本毛織株式会社)

概要:同地域(東京都江戸川区)で介護用品レンタル事業を行っている譲渡側・譲受側2社が株式譲渡する形でM&Aを行い、譲受側の親会社である日本毛織株式会社の連結子会社となりました。

参考:ニッケグループ|当社連結子会社日本パムコ株式会社による株式会社スクーデリアの株式取得に関するお知らせ

事例4

  • 日付:2019年2月19日
  • 譲渡企業:有限会社パムック
  • 譲受企業:株式会社幸和製作所

概要:介護用品を製造販売する譲渡企業がオーダーメイド車椅子制作事業を展開する企業株式をM&Aにて承継しました。現在の譲渡企業は株式会社幸和ライフゼーションに社名を変え、引き続き事業を継続しています。

参考:幸和製作所|IRニュース

事例5

  • 日付:2019年2月12日
  • 譲渡企業:ハピレ株式会社
  • 譲受企業:株式会社銀座メディカル(湖山医療福祉グループ)

概要:譲受企業の子会社である株式会社健康倶楽部の事業拡大を目的に、北海道にて介護事業を展開する譲渡企業の株式を取得し、譲渡企業の子会社「あすなろグループ」を子会社化しました。

参考:湖山医療福祉グループ|ハピレ株式会社および子会社2社の株式取得について

事業譲渡によるM&A事例

各種データイメージ

事業譲渡とは、企業の経営権は現在のままとしながら、事業の全部または一部を相手先企業に譲り渡す形式のM&A手法です。

事例1

  • 日付:2020年2月1日
  • 譲渡企業:有限会社つくし
  • 譲受企業:メディカル・ケア・サービス(学研ホールディングス)

概要:北海道小樽市の認知症高齢者グループホーム1棟の営業権をM&Aにより継承し、すでに譲受側が運営している帯広市内のグループホーム4事業所と連携して運営が開始されました。

参考:メディカル・ケア・サービス|事業譲受に関するお知らせ 「愛の家グループホームおとふけ」をオープン致しました。

事例2

  • 日付:2019年12月23日
  • 譲渡企業:アサヒサンクリーン株式会社
  • 譲受企業:株式会社ツクイ

概要:全国に695介護事業所を展開する譲受企業が在宅事業のさらなる拡大および静岡市内の地域戦略の推進を図るために、同市の訪問介護事業10所を事業譲受しました。

参考:株式会社ツクイ|事業譲受に関するお知らせ

事例3

  • 日付:2021年4月
  • 譲渡企業:株式会社セラピ
  • 譲受企業:株式会社栗原医療器械店

概要:医療機器販売を行う譲受企業が介護用具卸売事業の一部をM&Aにより事業継承し、拠点を新潟県内の2オフィスとしました。

参考:株式会社栗原医療器械店|企業情報

子会社化によるM&A事例

子会社化によるM&Aは上記でご紹介した株式譲渡によるM&Aと基本的に同一ですが、子会社化M&Aの場合には法人名や法人代表者は変更せず、株式譲渡先企業のグループ内に入る形となります。

事例1

  • 日付:2020 年 7 月 15 日
  • 譲渡企業:株式会社ゆい
  • 譲受企業:株式会社市進ホールディングス

概要:教育関連事業を主に展開する譲受企業が介護業界への参入を目的に、居宅介護支援事業所を運営する譲渡企業の株式を100%取得し完全子会社化しました。

参考:株式会社市進ホールディングス|株式会社ゆいの株式取得(子会社化)に係る株式譲渡契約締結のお知らせ

事例2

  • 日付:2021年2月25日
  • 譲渡企業:株式会社舞浜倶楽部(エムシーホールディングス)
  • 譲受企業:グッドタイムリビング株式会社

概要:譲渡企業が運営する介護施設の体制強化に向け、譲渡企業の株主エムシーホールディングスと譲受企業が協議し、譲渡企業を子会社化する形で株式を取得しM&A提携を行いました。

参考:グッドタイムリビング株式会社|株式会社舞浜倶楽部の株式取得に関するお知らせ

事例3

  • 日付:2021年6月29日
  • 譲渡企業:有限会社まんまる
  • 譲受企業:株式会社揚工舎

概要:多数の介護事業所をM&Aにより子会社化して事業を拡大している譲渡企業は、東京都近郊に事業拠点を増やすことを目的に譲渡企業を完全子会社化して施設名称を「ヨウコーキャッスル三鷹」「デイサービスヨウコー三鷹」に変更しました。

参考:株式会社揚工舎|有限会社まんまるの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ

事例4

  • 日付:2021年5月14日
  • 譲渡企業:有限会社なでしこ
  • 譲受企業:株式会社ユニマット リタイアメント・コミュニティ

概要:ユニマットグループの一員として介護・ホテル・飲食等の幅広い事業を行う譲受企業が事業拡大を目的とし、大阪市内で介護施設8拠点を有する譲渡企業の株式を取得し完全子会社化しました。

参考:株式会社ユニマット リタイアメント・コミュニティ|株式の取得(子会社化)に関するお知らせ

事例5

  • 日付:2020 年 9 月 30 日
  • 譲渡企業:東京建物シニアライフサポート株式会社
  • 譲受企業:SOMPOケア株式会社

概要:損害保険等の多角的事業展開を行うSOMPOグループ内の介護事業会社がSOMPOケア株式会社として組織再編され、事業拡大を目的とし東京建物株式会社の子会社株式を取得して自社の子会社としました。また同日付けでSOMPOケア株式会社と東京建物株式会社は高齢者向け施設の開発・運営業務等に関する業務提携契約も締結されています。

参考:SOMPOケア株式会社|東京建物シニアライフサポート株式会社の株式取得(子会社化)に関するお知らせ

業務提携によるM&A事例

業務提携とは複数の会社が業務上の協力関係を築くために契約することを指します。

業務提携は厳密なM&A定義からは外れますが、日本国内では一般的に業務提携を行う際には資本(株式)の持ち合いが発生することが多いため、今回はM&Aの一種としてご紹介します。

事例1

  • 日付:2020年3月
  • 提携企業:旭化成ホームズ株式会社・シマダリビングパートナーズ株式会社

概要:住宅建設等を行う旭化成ホームズがシニア事業の拡充を目的に、介護施設運営等を行うシマダリビングパートナーズの株式を一部取得し、資本業務提携を行い介護事業に参入しています。

参考:旭化成ホームズ株式会社|介護施設運営事業者との資本業務提携に関するお知らせ~健康度・家族状況に応じた住まいとサービスのシームレスな提供体制を強化~

事例2

  • 日付:2021年4月14日
  • 提携企業:SOMPOホールディングス株式会社・株式会社ABEJA

概要:SOMPOホールディングスの介護・ヘルスケア事業等におけるAI解析等を担ってきたABEJAが、これまでの協業の成果を元にさらなる強固な連携関係を構築するためにM&Aで資本業務提携をしました。

参考:株式会社ABEJA |プレスリリース

事例3

  • 日付:2017年3月1日
  • 提携企業:野村不動産グループ・創生事業団グループ

概要:新たな成長領域として高齢者住宅事業を掲げている野村不動産グループが、高齢者住宅市場をさらに拡充するため介護施設運営を主な事業とする創生事業団と業務提携契約を結び、グループ会社JAPANライフデザインとの資本業務提携契約を締結しました。

参考:JAPANライフデザイン|資本提携のお知らせ

まとめ

今回は介護業界のM&A事例をご紹介しました。

介護M&Aの件数は、これからも増加が予想されます。今後とも介護M&Aの動向に注視していきましょう。

臼井 貴紀
● 監修者情報
臼井 貴紀 Usui Kiki
Hubbit株式会社 代表取締役社長。藤田医科大学客員教員。早稲田大学卒業後、ヤフー株式会社に新卒入社。営業、マーケティング、開発ディレクション、新規事業開発など幅広く担当。その後、ベンチャー企業に転職しAIを活用したMAツールの立ち上げを行った後、Hubbit株式会社を設立。高齢者施設に3ヶ月住み込んで開発したCarebee(ケアビー)は、日本経済新聞、NHKおはよう日本、ABEMA PRIME等に出演。
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