介護従事者303名の声から判明した介護DXの課題と、解決に向けてできること

介護従事者303名の声から判明した介護DXの課題と、解決に向けてできること

最終更新日 2022.11.22

この記事の要点

  1. トライトグループが介護従事者303名に調査を実施
  2. 調査結果から判明した介護DXの課題は「知識不足」「予算不足」「わかりにくい」
  3. DXを進めるためには介護事業所経営者と職員の意識改革が必要
  4. DXのためのITシステム導入には補助金・助成金が活用できる

これからの介護にはDXの推進が必須だと言われていますが、まだまだ介護業界にDXが浸透するまでには、多くの課題が残されています。

今回は介護業界が抱えるDXの課題について、トライトグループがまとめた調査結果を元に解説します。

介護事業所におけるDX実態調査

当サイトを運営するトライトグループでは、2021年4月30日~5月2日の期間に、インターネットにて10代から60代以上の介護従事者男女303名を対象に「介護事業所におけるDX実態調査」の調査を実施いたしました。

この調査では、介護におけるDXの課題以外にも、現時点で各介護事業所が行っているDXの取り組み状況や、今後活用したいDXの内容など幅広く調査しています。

「介護事業所におけるDX実態調査」の概要は、以下トライトキャリアのホームページよりご確認頂けます。

参考:トライトキャリア|【介護事業所におけるDX実態調査】半数がコロナ下でDXに取り組んでいる実態が明らかに

調査により判明した介護DXの課題

上記で実施した調査結果により、各介護事業所がDX推進に踏み切れない理由が浮きぼりになりました。

介護業界にDXを浸透させるためには、それぞれの介護事業所が課題解決に取り組んでいかなければいけません。

以下からは調査の回答でDX推進の阻害要因として挙げられた課題のトップ3を説明します。

DXの課題を知る前に「DXとは何か」を確認したい方は、以下の記事からお読みください。

介護で求められている「DX」とは何か?ITとの違いと活用方法・メリットについて解説

第1位:知識・ノウハウの不足

介護DXの課題として一番多かった回答が「知識・ノウハウがない」の43.2%でした。

DXという概念は、まだ世間に広まってからそう長い月日は経っていません。DXに関する知識がある方もさほど多くなく、ノウハウもまだ蓄積されていない状況です。

この課題は介護業界ばかりでなく、DXを必要とするすべての業界が等しく抱えている課題と言えます。

第2位:予算不足

「知識・ノウハウがない」に次いで多かった回答は、第2位の「予算がない」40.3%です。

東京商工リサーチのデータによれば、2020年に老人福祉・介護事業を営む法人が倒産した件数は118件と、介護保険法が施行された2000年以降で過去最多を更新しています。

新型コロナウィルス感染症の拡大で介護サービスの利用控えが進み、経営が悪化した「新型コロナ関連倒産」も7件発生していました。

小規模経営の介護事業者にとっては経営を続けるだけで手一杯となり、DXにかける費用が捻出できない可能性があります。

第3位:費用対効果の不明瞭さ・分かりにくさ

第3位は、「費用対効果が低い・分かりにくい」の31.7%でした。

介護従事者の調査結果では第3位となりましたが、この「分かりにくい」はDXを推進する上で非常に重要な課題です。

人は誰しも、これまで慣れたやり方から変えることは嫌がります。介護業務においてもそれは同じです。

「今までの手段が慣れているから」「違うやり方は覚えるまで大変」などの理由で、せっかくIT技術を導入しても、すべての介護職員に会得してもらうまでには時間がかかります。

またDXにより介護業務が楽になったとしても実際の収益に結びつかないため、経営層としてもDXの恩恵が直接的には分かりづらい点も課題として挙げられます。

DXができない介護事業所はどうなるか

上記のような課題を抱え、DXできない介護事業所はどうなるでしょうか。

2018年9月に経済産業省が公開した DX レポートによると、介護業界に限らずDX推進ができない法人組織は「2025年の崖」を超えられないと言われています。

「2025年の壁」とは、団塊の世代がいっせいにリタイアする2025年を境に、労働人口が大きく減少し、ITテクノロジーを活用している法人と活用していない法人との間に収益の差が生まれるという現象です。

参考:経済産業省|DXレポート~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~

中でも介護業界は深刻な人手不足です。2025年までにITテクノロジーを活用してDXを進めないと、介護事業所の経営状態が悪化し、人手不足と財政難で運営が続けられなくなってしまうかもしれません。

「介護事業所の課題」を解決するには「DXの課題」解決が必須なのです。

DXの課題を解決するために

「2025年の壁」を超えて介護事業所が健全な運営を続けるために、各介護事業所はどのように課題を解決していけば良いのでしょうか。

以下からは、介護DXの課題を解決するために行える対策を紹介します。

介護事業所と職員の意識改革

DXは、ただ単にITシステムを導入しただけでは実現できません。

導入したITシステムを「使いこなそう」と、それぞれの介護職員が思う気持ちが大切です。 

そのためにはこれからの介護事業所の運営について各人が当事者意識を持ち、わからないことを勉強してIT技術の活用方法を自分たちで導き出せるような意識改革が必要になります。

もちろんDXや今後の働き方を考えていかなければいけないのは、職員だけでなく介護事業所の経営者も同様です。介護事業所の経営者自身もDXの勉強する意識を持ち、職員をうまく誘導できるよう努力しましょう。

補助金・助成金の活用

DX推進をするための予算が捻出できない介護事業所には、補助金・助成金の活用という手段があります。

介護事業所等が情報通信機器や介護ロボットを導入する際の費用は、国や自治体からの補助金で一部まかなえます。補助金については以下の記事で詳しく解説しています。

介護関連のICT補助金の概要を解説 給付対象になる介護業務とサービスとは

介護事業所のDXに伴う直接的な助成金はありませんが、DXによって職場環境の改善が認められれば、人材確保等支援助成金などの助成金が受給できる可能性があります。

以下の記事では人材確保等支援助成金以外の助成金についても広く紹介していますので、あわせてご覧ください。

介護関連の助成金まとめ 介護事業所向け・在宅介護者家族向けにわかりやすく紹介

まと

今回は当社が実施した調査結果から、介護業界のDXに向けて解決しなければいけない課題を探りました。

今回紹介したDX推進に向けての課題は、介護業界だけでなく日本の全業種が共通して抱えている課題です。

まずは介護業界が先頭に立ってDXを実現させ、他の業界のロールモデルとなれるよう介護業界全体が一丸となって努力しましょう。

臼井 貴紀
● 監修者情報
臼井 貴紀 Usui Kiki
Hubbit株式会社 代表取締役社長。藤田医科大学客員教員。早稲田大学卒業後、ヤフー株式会社に新卒入社。営業、マーケティング、開発ディレクション、新規事業開発など幅広く担当。その後、ベンチャー企業に転職しAIを活用したMAツールの立ち上げを行った後、Hubbit株式会社を設立。高齢者施設に3ヶ月住み込んで開発したCarebee(ケアビー)は、日本経済新聞、NHKおはよう日本、ABEMA PRIME等に出演。
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