介護DXを支援するIT企業5社と介護事業者がDXを推進する取り組みを紹介

介護DXを支援するIT企業5社と介護事業者がDXを推進する取り組みを紹介

最終更新日 2022.11.18

この記事の要点

  1. 介護向けITサービスを提供する企業はすべて介護DXの支援企業
  2. 多くのIT企業が介護DXのための製品・サービスを提供している
  3. 社会福祉法人が介護DX推進のために「スマート介護士」資格を設立

IT技術の活用によるDX(Digital Transformation)は、介護の未来を変えるかもしれません。

しかし、DXは介護事業所だけでは実現できません。DXの実現に向けてはITサービスを提供する企業の助けが必要です。

具体的にはどんな企業が介護業界のDXを手助けしてくれているのでしょうか。

今回は介護のDXを支援する企業を紹介します。

介護業界のDXとは

DXとは「IT技術により人々の生活を良くする」概念のことです。DXという技術が存在しているわけではありません。

介護業界のDXとは、介護の現場でIT技術を用い、それにより生じた効果(介護業務の効率化や介護の質の向上)を十分に活かせるように、組織体制、働き方を変えていく動きです。 

介護業界のDXについては以下の記事でわかりやすく解説していますので、詳細を知りたい方は以下の記事を参考にしてください。

介護で求められている「DX」とは何か?ITとの違いと活用方法・メリットについて解説

介護業界のDX支援企業5選

DXの定義に従うと、介護事業所にIT技術を提供する企業はすべて介護業界のDXを支援している企業と言えます。

今回は多くのIT企業の中から、特にサービス内容が介護事業所のDXにつながりやすいと考えられる企業を5社紹介します。

株式会社INTEP

株式会社INTEPはリハビリテーション関連の医療機器や健康機器の開発販売、医療用システムの開発等を行う慶応大学発のベンチャー企業です。

2021年5月には主に介護事業を行うツクイホールディングスと提携し、INTEPが開発中の歩行状態AI解析システム「FG-001」の実証実験をツクイ運営のデイサービス事業所で開始しました。

「FG-001」の運用により要介護者の身体機能データの記録が容易となり、効率的なリハビリプラン・ケアプランの作成に活用できます。

■企業情報

株式会社大塚商会

株式会社大塚商会はシステム開発、複合機・通信機器・ソフトウェア・事務用品等の販売、教育支援など幅広い分野で事業を行っている企業です。

2021年5月に大塚商会は、民間介護事業大手の株式会社やさしい手、介護業務システムの株式会社ワイズマンとの3社で、介護DXの基盤作りを支援するソリューションプログラム「科学的介護総合支援プログラム キボウ」を共同開発しました。

システム構築を得意とする大塚商会、介護保険制度を熟知しているワイズマン、介護のリアルな現場を知っているやさしい手がタッグを組むことで、介護現場のニーズに沿ったDX推進が期待できます。

■企業情報

株式会社HAB&Co. 

株式会社HAB&Co.は自治体や行政などの人材採用課題を解決するためのプロジェクトに参画し、大規模な求人ポータルサイトの開発を行っている企業です。 

中でもSHIRAHAWORKSは、求人企業が持つハローワークの求人番号があれば、誰でも簡単に本格的な採用サイトが作れるというサービスです。 人材が必要だけれど、採用サイト作成に時間やコストをかけられないといったお悩みが解決します。

ハローワークでの求人数第一位が介護事業者であることを考えると、介護業界の一番の課題である人材不足をDXで支えるベンチャーといえます。

■企業情報

  • 創業:2017年 
  • 資本金:約6.8千万円 
  • 上場:非上場 
  • 公式サイト: https://hab-co.jp/ 

株式会社aba

株式会社abaは、代表の宇井吉美氏が千葉工業大学在学中に発足したプロジェクト「学生プロジェクト aba」で開発された介護ロボットを製品化するために創業された企業です。

同社が開発した排泄ケアシステム「Helppad(ヘルプパッド)」は、介護用オムツの匂いをセンサーで検知し、AI解析を用いて排泄パターンを算出できるシステムです。

介護スタッフにとっても要介護者にとっても大きな苦痛となり得る排泄トラブルを回避できるため、各介護事業所や団体、メディアからも大きく注目されています。

企業情報

AIケアラボにて行われた株式会社aba代表 宇井吉美氏のインタビューは以下よりお読みいただけます。 

【宇井吉美】排泄センサーHelppadの株式会社aba代表インタビュー(前編)たゆまぬ研究開発、現場との約束。 

一般社団法人気づきデータ解析研究所

一般社団法人気づきデータ解析研究所は、介護アプリケーション「MIMOTE」を開発提供している組織です。

MIMOTEは介護や保育などのヒューマンサービスを提供する上で生じた「気づき」をデータとして蓄積し、グラフに出力して介護士等の感覚的な「気づき」の「見える化」を可能にするシステムです。

2021年7月にオンラインで開催された日本福祉介護情報学会の介護DXをテーマにした研究大会でも、MIMOTEが介護DX支援の例として取り上げられています。

参考:日本福祉介護情報学会|第22回 研究大会

■法人情報

幅広く介護を支援するIT企業

上記で紹介した企業以外でも介護業界向けのITサービス提供している企業はすべてDX支援企業に含まれます。

当サイトではこれまでにも、介護事業所向けのITサービスを展開しているIT企業を多数紹介しています。今回紹介した企業以外にはどんな企業があるか、ぜひ参考にしてください。

介護業界に進出するIT企業9社を紹介 IT企業が介護に協力できること

「介護+AI」で何ができるか?介護施設向けAI商品提供企業10社を紹介

自ら介護DX普及推進に乗り出した社会福祉法人

介護業界全体のDXを進めるためには、IT企業まかせではいけません。

介護業界自らが舵をとって、自分たちの業界のDXを推進していく必要があります。

東京都大田区に拠点を持つ社会福祉法人善光会は、自身の事業により得られた知識やノウハウを介護業界全体と共有するためにサンタフェ総合研究所を設立し、IT技術の介護への活用に関する知識を持つ「スマート介護士」の育成に乗り出しました。

スマート介護士は、 介護の質と生産性を向上することができる最先端の技術を扱える介護士です。 

忙しい現場を変えていくためには、見守りなどの介護ロボットの導入は必須といえます。 しかし、ただロボットを導入すればいいわけではありません。介護ロボットを導入することによって 「介護の質と業務効率化がどのように変化するか」を考えることが最も重要。 
「どんな介護ロボットを導入すれば、介護の質が上がるか」そして「どんなふうに利用すれば業務の 効率化に役立つか」を考える必要があります。それができるのがスマート介護士なのです。 

引用元:サンタフェ総合研究所|スマート介護士資格試験

介護業界の内部から改革していこうとする姿勢が評価できます。

まとめ

今回は介護業界のDXを支援するIT企業を紹介しながら、介護業界内の取り組みもあわせて紹介しました。

介護スタッフの業務負担が大きい介護業界では、DX推進はすでに避けて通れません。

今回の記事を参考にしながら、自分たちはどのようにDXを進めていくべきか、DX実現のためにはどうしていけば良いか考えましょう。

臼井 貴紀
● 監修者情報
臼井 貴紀 Usui Kiki
Hubbit株式会社 代表取締役社長。藤田医科大学客員教員。早稲田大学卒業後、ヤフー株式会社に新卒入社。営業、マーケティング、開発ディレクション、新規事業開発など幅広く担当。その後、ベンチャー企業に転職しAIを活用したMAツールの立ち上げを行った後、Hubbit株式会社を設立。高齢者施設に3ヶ月住み込んで開発したCarebee(ケアビー)は、日本経済新聞、NHKおはよう日本、ABEMA PRIME等に出演。
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