介護用アシストスーツの使用効果 ーマッスルスーツ・HALの導入施設調査からー

介護用アシストスーツの使用効果 ーマッスルスーツ・HALの導入施設調査からー

最終更新日 2022.02.03

参照する科学論文の情報
著者:Kenji Kato, Tatsuya Yoshimi, Shohei Tsuchimoto, Nobuaki Mizuguchi, Keita Aimoto, Naoki Itoh & Izumi Kondo
タイトル:Identification of care tasks for the use of wearable transfer support robots – an observational study at nursing facilities using robots on a daily basis
URL:doi.org/10.1186/s12913-021-06639-2

使用効果を確かめるアシストスーツとしては、INNOPHYS「マッスルスーツ」、サイバーダイン「HAL」が採用されました。また検証を行う実地としての介護施設には、ユニットケア(個別介護)方式の施設が選ばれました。
マッスルスーツは2台が合計18人の介護者および合計59人の被介護者に対して配られました。HALは1台が合計7人の介護者および合計9人の被介護者に対して配られました。
そして以下のポイントで調査が行われました。

  • 各アシストスーツが、どのタスクにどの時間帯でどれだけの時間使われたのか
  • 各アシストスーツが、身体的・精神的な負荷を軽減したと介護者が感じたのか

各アシストスーツが使用されるタスクの違い

調査の結果、マッスルスーツ・HALともに、間接介助(体に直接触れない介助)と比べて直接介助(身体に直接触れる介助)のタスクで長く使用されたようでした。介助時間全体に対する直接介助の時間は約5.5〜6割でしたが、各アシストスーツを装着した状態で行われた介助時間全体に対する直接介助の時間は約7〜7.5割でした。

ただし調査後の面接で「アシストスーツの装着に時間がかかると、突発的な直接介助にうまく対応できない可能性がある。そのため、アシストスーツは日常的に事前に装着することが望ましい」という内容があったそうです。

下の図は直接介助に焦点を当てて、タスクごとに各スーツが使用された時間帯および時間を表したものです。

マッスルスーツ装着時に行われるケアは特に「移動」「トイレ」のサポートが際立っていました。時間帯としては午前中に集中しており、特にトイレのサポートに関しては朝の早い時間帯に使用されていました。調査終了後のインタビューによると、朝の早い時間帯におけるトイレのサポートは、予めマッスルスーツを着ることが割り当てられた介護士が行ったそうです。

HAL装着時に行われるケアは「移動」「トイレ」以外にも「食事」のサポートが際立っていました。食事のサポートでは午後に使用される傾向が目立ちました。HALはマッスルスーツに比べてコンパクトで、座りながら使用することが可能なので、食事のサポートでもより便利に使用されたようです。

身体的、精神的な負荷を軽減する

マッスルスーツを使用した18人の介護士とHALを使用した7人の介護士に対して、各アシストスーツが「身体負荷・精神的ストレスを軽減したか」について訊ねるアンケートと面談が行われました。それぞれの質問に対しては「そう思う」「ややそう思う」「余りそう思わない」「そう思わない」の4項目から回答を得ました。結果は下の図です。

身体負荷を軽減するかどうかについては、マッスルスーツを使用した介護士全員が「そう思う」あるいは「ややそう思う」と回答し、HALを使用した介護士のうち66.6%が「そう思う」あるいは「ややそう思う」と回答しました。

精神的なストレスを軽減するかどうかについては、身体負荷を軽減するかどうかについては、マッスルスーツを使用した介護士のうち66.6%が「そう思う」あるいは「ややそう思う」と回答し、HALを使用した介護士のうち50%が「そう思う」あるいは「ややそう思う」と回答しました。

アシストスーツを導入するにあたって

アシストスーツを実際に長期間使用している介護施設での調査から、アシストスーツはそれぞれの特性に合った多様な使い方ができることが示唆されました。例えばマッスルスーツは早朝の作業で特に役立ち、HALは食事のサポートでも役立つことが示されています。
また、アシストスーツ全般(少なくとも今回の2種類)で言えそうなことも浮き彫りになりました。それはトイレのサポートなど直接介助で特に役立つという点です。今後どのアシストスーツを導入検討するとしても参考になる点ですね。

またアシストスーツを導入時にすぐ実践すべきこととしては、アシストスーツを使用する日常を意識したルーティーンに見直すことが言えます。例えば、突発的な直接介助が必要になってから着用するのではなく、そのような状況を見越して予め装着するように習慣付けることが重要です。
また、充電などのメンテナンスにも手間がかかるので、使用後や使用間にも時間がかかることを忘れてはいけません。

また、今回の調査では入浴のサポートに関してはアシストスーツはあまり活躍していませんでした。その理由は、機器がバスルームの壁にぶつかるというシンプルなものだったようです。導入を検討しているアシストスーツに防水機能がついていたとしても、自身の浴室の環境で問題なく使えるのかどうかをチェックしてみるといいですね。

まとめ

今回の記事では、INNOPHYS(株式会社イノフィス)のマッスルスーツと、サイバーダイン(株式会社CYBERDINE)のHALを事例として、介護で役立つアシストスーツの実際の使用効果と、今後導入するにあたって調査から言えることを紹介しました。

使用効果としては、アシストスーツを24ヶ月以上使用している介護施設のスタッフの多くが実際に「身体的負荷、精神的ストレスを軽減する」と回答していることから、ポジティブな状況だと言えますね。

また今回の調査から分かった、今後導入するにあたって注意すべき点(チェックリスト)をまとめると以下のようになります。

  • アシストスーツごとの特性の違いを理解、検討しているか
  • 直接介助をサポートして欲しいというニーズがあるかどうか
  • アシストスーツを使用することを前提としたルーティーンを設計できるか
  • 「防水機能つき」と言われるだけでは安心せず、浴室の環境で問題なく使えるか検討したか

介護人材の離職理由では「力仕事による肉体的な負荷」が挙げられているので、人材の定着を目的とした方策の一つとしても、今後アシストスーツの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

参考▶︎介護業界の離職率をデータから検証 職員の離職を防ぐ方策とは

おまけ:HAL介護支援用腰タイプについての動画(サイバーダインYouTubeチャンネルより)