介護業界の離職率をデータから検証 職員の離職を防ぐ方策とは

介護業界の離職率をデータから検証 職員の離職を防ぐ方策とは

この記事の要点

  1. 介護職員の離職率は他の職種と比べて意外と高くない
  2. 介護職を離職する人の理由は「肉体的な負担」など
  3. 介護職員の離職を防ぐための方策がある

介護事業所の経営者の中には「すぐ人が辞めてしまう」「なかなか職員がいつかない」と、介護職員の離職に悩んでいる方もいるでしょう。

「介護業界は離職率が高いから仕方がない」と、あきらめている経営者もいるかもしれません。

しかし本当に、介護職員の離職率はそこまで高いのでしょうか。

今回は最新データをもとに、介護業界の離職率の実態について検証していきます。

介護職員の2020年度離職率は14.9%

離職率について考える人達

実は、介護職員の離職率は多くの方が想像しているよりも高くはありません。

公益財団法人介護労働安定センターが発表した最新の「介護労働実態調査」によれば、介護事業所等で働く労働者の離職率は、2020年の1年間では14.9%でした。

過去の調査結果では2007年の2職種計(訪問介護員、介護職員)の離職率21.6%がピークとなり、そこから年々離職率が低下して、今回の調査では過去最低を記録しています。

なお職種ごとの離職率では、訪問介護員(ホームヘルパー)が15.6%で相対的に高く、介護施設等で働く介護職員の離職率は14.7%、サービス提供責任者の離職率は14.9%となっています。

介護業界は他業界より離職率が低い

介護職員の離職率が14.9%と言われても、その数字が他と比べて高いのか低いのか、すぐには感覚がつかめません。

離職率14.9%は、介護以外の業界と比べて高いのでしょうか、それとも低いのでしょうか。

厚生労働省発表の「令和元年雇用動向調査」によると、2019年における日本の産業全体での平均離職率は率 15.6%です。

同じ調査では介護業界が属する「医療・福祉」は14.4%であり、全産業の離職率よりも0.7%下回っています。

「宿泊業・飲食サービス業」の離職率33.6%に比べると19.2%も低い結果が出ています。

介護業界の離職率が高い印象は、過去の離職率が高かったころのイメージが残っているのかもしれません。

職員の不足に悩む介護事業所は60.8%

離職率の低下に伴い介護事業所の人材不足は少しずつ解消傾向にありますが、それでもまだ半数以上の介護事業所は、依然として人材不足に悩まされています。

先ほどご紹介した介護労働安定センター「介護労働実態調査」によると、人材不足を感じている介護事業所の割合は「大いに不足」「不足」「やや不足」をあわせた合計が 60.8%にもなりました。

中でも訪問介護員の不足感は80.1%ともっとも高く、在宅介護を支援するための職員配置が十分ではない現状うかがえます。

この先、いわゆる団塊の世代が後期高齢者世代に突入する2025年には、介護職員の数がさらに不足する事態も考えられます。

各介護事業所は新たな介護人材を探しながら、いま働いてくれている介護職員の離職率を少しでも減らしていく必要があります。

介護職員の離職理由3例

介護職員の離職を防ぐためには、どのようなときに介護職員が離職を考えたくなるのか、その理由をしっかり把握しておかなければいけません。

それぞれの介護職員ごとに状況は異なるため、離職の理由は一概には言えませんが、比較的よく言われている介護職員の離職理由を3つ挙げてみました。

1.肉体的な負担が大きい

要介護者の移乗介助、入浴介助、床ずれ防止のための体位変換などは非常にハードな肉体労働です。

華奢(きゃしゃ)な女性介護士が大柄な高齢者男性を支えたり持ち上げたりする必要もあり、多くの介護職員は腰痛やひざ痛に悩まされています。

腰痛などが原因で健康を害し、やむなく介護職を離職する方もいます。

2.人間関係がうまくいかない

この離職理由は介護職に限った話ではありませんが、職場の人間関係がうまくいっているかどうかは、仕事を続ける上で大きな選択基準になります。

コミュニケーションが活発で、お互いの関係性が良好な介護事業所であればハードな仕事でもお互いに励まし合っていけますが、協力体制のできていないギスギスした職場環境では、職員も離職したくなってしまいます。

3.仕事内容に比べて賃金が低い

介護の仕事は肉体的にも精神的にもハードなだけに、そこで働く方はそれなりの待遇を期待します。

しかし期待に見合うだけの賃金が得られないと、やりがいがなくなり離職の決断に至る可能性が考えられます。

介護職員の離職率を下げるための方策

アイデア

介護職員の離職理由がある程度わかったところで、今度はその離職理由を解消するための方策について説明していきます。

  • 介護ロボットの導入
  • 介護記録システムの導入
  • 職員の賃金改善

できる方策から改善していき、少しでも介護職員の離職が減らせるように努力していきましょう。

介護ロボットの導入

介護ロボットとは「感知・判断・動作」の3つの要素を使って高齢者や障害者の自立を支援し、介護者の負担を軽減する機械システムです。

移乗介助の際に介護職員が装着するパワーアシストスーツや、離れた場所から要介護者の状態を確認できる見守りロボットなど、いろいろな介護ロボットが開発されています。

介護ロボットの導入により介護職員の肉体疲労や時間ロスが軽減でき、働きやすい職場となって離職率が軽減できる可能性があります。

介護ロボットについて詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてください。
介護事業所で利用されているAI・ロボット9種 最新の導入割合と活用の方策

介護記録システムの導入

介護記録や各種資料を職員同士で共有する介護記録システムも、介護職員の離職率低下に貢献できる可能性があります。

介護記録作成の事務負担軽減に加え、全員が同じ情報を共有することにより職員同士の意思疎通がしやすくなります。

また介護記録システムの中には職員のシフト管理ができる製品も存在します。シフト情報を共有して職員間が公平に働けるようにすれば、職員の不満が抑えられるかもしれない点もメリットです。

介護記録システムで活用されている情報通信技術(ICT)については以下の記事で詳しく説明していますので、ぜひ参考にしてください。
介護におけるICTとは何か?効果とメリット・デメリット

職員の賃金改善

長年働いてくれているベテラン職員に相応な額の賃金を与えなければ、待遇に不満を抱いて他の介護事業所に転職、あるいは介護職から離職してしまう可能性があります。

そのような事態を避けるために、国では介護職員等特定処遇改善加算で介護報酬を増やし、ベテラン職員の賃金をアップさせる制度を設けています。

この加算により経験や技能のあるベテラン職員の離職を防げるとともに、まだ経験の浅い新人職員のモチベーションアップも期待できます。

介護職員等特定処遇改善加算については以下の記事で詳しく解説しています。
特定処遇改善加算の最新情報を解説 2021年度介護報酬改定で変わった点とは

まとめ

今回は介護職員の離職率について、最新のデータをもとに検証しました。

実際には介護職員の離職率は、他の業種と比べても決して高くはありません。それでも各介護事業所が十分な人材を確保し続けるためには、介護職員の離職はできるだけ避けなければいけません。

各介護事業所は職員の様子を常にチェックし、すべての介護職員が楽しくやりがいを持って働ける職場に改善していきましょう。