この記事の要点
- 科学的介護推進体制加算とは科学的介護を推進するために追加された介護報酬加算
- 科学的介護推進体制加算を受けるにはLIFE利用とPDCAサイクルの取り組みが必要
- 科学的介護推進体制加算では報酬アップだけでなくサービス品質向上も期待できる
2021年4月より介護報酬に「科学的介護推進体制加算」の項目が追加されました。
科学的介護推進体制加算とは一体どのような制度で、介護事業所にはいくら加算されるのでしょうか。また加算を申請するためにはどのような手続きが必要になるのでしょうか。
今回は科学的介護推進体制加算についてわかりやすく解説します。
目次
科学的介護推進体制加算(LIFE加算)とは

科学的介護推進体制加算とは、令和3年度介護報酬改定の際に新たに追加された介護報酬の加算制度です。科学的介護情報システム「LIFE」の運用開始に伴い新設した制度であるため、別名「LIFE加算」とも呼ばれています。
政府は科学的介護推進体制加算の支給を行うことにより、現在推し進めている科学的介護情報システム「LIFE」の利用率を増加させ、ひいては科学的介護を介護業界に広めて介護サービスの質を向上させたいという狙いがあります。
対象サービスと加算単位
科学的介護推進体制加算の対象となる介護事業所は、施設系サービス・通所系サービス・居住系サービス・多機能系サービスを提供する介護事業所です。
ほぼすべての介護事業所が加算対象となりますが、加算単位は介護サービスの種類や提供データの内容により異なります。
次に科学的介護推進体制加算の対象となるサービスを種類ごとにご紹介します。

加算単位40の介護サービス
以下の介護サービスは科学的介護推進体制加算がすべて40単位になります。
なお加算対象となるサービスには、介護だけでなく介護予防も含まれます。
- 通所介護
- 通所リハビリテーション
- 特定施設入居者生活介護
- 地域密着型通所介護
- 認知症対応型通所介護
- 小規模多機能型居宅介護
- 看護小規模多機能型居宅介護
- 認知症対応型共同生活介護
- 地域密着型特定施設入居者生活介護
加算単位40・50の介護サービス
以下の介護サービスはLIFEへの提供データの内容により、加算単位がⅠ(40単位)とⅡ(50単位)に分かれます。
科学的介護推進体制加算Ⅱを申請する場合は、Ⅰで提出が必要なデータに加え要介護者の疾病の状況や服薬情報等の情報も提出する必要があります。
- 介護老人福祉施設
- 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
加算単位40・60の介護サービス
以下の介護サービスもLIFEへの提供データの内容によりⅠとⅡに分かれますが、Ⅱの加算単位は60単位となる点が異なります。
- 介護老人保健施設
- 介護医療院
科学的介護とは
科学的介護とは、内閣に設置された日本経済再生本部「第7回未来投資会議」(2017年4月)で登場した「科学的に自立支援等の効果が裏付けられた介護」を意味する言葉です。
介護サービスを行うことによってどのような効果が見られたのかを科学的に分析して、効果的だと考えられる方法を知ることができれば、そのサービスを次の要介護者に提供できるようになります。
科学的介護については以下の記事でも詳しく解説しています。
▶「科学的介護」とは何か。LIFEにどう対応するか(解説動画もあり)
科学的介護情報システム(LIFE)とは
科学的介護推進体制加算の制定とともに運用が開始されたLIFEは、上記で説明した科学的介護の分析に必要なデータを収集するためのシステムです。
厚生労働省では2018年より運用が開始された通所・訪問リハビリテーションデータ収集システム「VISIT」と、2020年より運用が開始された高齢者の状態やケアの内容等データ収集システム「CHASE」により、以前から科学的介護の準備を行っていました。
2021年4月からは「VISIT」と「CHASE」を一本化した「科学的介護情報システム(Long-term care Information system For Evidence」によって総合的な介護データ収集を推進しようとしています。
科学的介護推進体制加算の算定要件
科学的介護推進体制加算の算定要件は以下の3点です。
- LIFEへのデータ提出
- LIFEフィードバック機能の活用
- PDCA サイクルの取り組み
次に3つの算定要件について詳しく説明します。
1.LIFEへのデータ提出
科学的介護推進体制加算を申請する介護事業所は、介護サービスを利用した要介護者に関するデータを、サービス提供月の翌10日までにLIFEへデータ提出する必要があります。
提出するデータは以下のとおりです。
- 利用者の保険番号、生年月日、性別
- 日常生活自立度(障害高齢者または認知症高齢者の場合)
- ADL(日常生活動作)の状況
- 口腔状態
- 栄養状態
- 認知症の症状または兆候
- Vitality Index(意欲の指標)の段階
また科学的介護推進体制加算2の適用事業所は、上記に加えて既往症や服薬情報のデータも提出が必要です。
2.LIFEフィードバック機能の活用
LIFEは各介護事業所から集めたデータを解析し、解析結果をLIFEのウェブサイトを通じて介護事業所にフィードバックします。
これまでに公開されたフィードバックは2021年5月および8月の2回です。LIFEは今後、フィードバック結果を毎月公開する予定としています。
介護事業所はLIFEにデータ提供をするだけでなく、フィードバック機能も活用することが求められています。
3.PDCAサイクルの取り組み
LIFEへの提出データおよびLIFEからのフィードバックを元にして、今度は利用者に対して行っていた介護サービスが本当に効果的だったかを検証します。
この一連の流れをPDCAサイクルと呼びます。PDCAとは「PLAN(計画)」「DO(実行)」「CHECK(評価)」「ACTION(改善)」の頭文字をとった略称です。
PDCAサイクルは以下のような流れで行います。
- PLAN(計画):ケアプランの作成
- DO(実行):ケアプランに基づいた介護サービスの実践
- CHECK(評価):フィードバックを元としたサービスの検証
- ACTION(改善):検証結果を踏まえたケアプランの改善
介護報酬加算だけではないLIFEのメリット

上記で説明した3点を行うことにより科学的介護推進体制加算の算定要件は満たされますが、LIFEを活用することで発生するメリットは金銭的なものばかりではありません。
データ提出のために自所の介護サービスを確認し、それをフィードバック結果と照らし合わせ、PDCAサイクルで改善策を実行することで、サービスの向上が期待できます。
利用者は質の良いサービスを受けられることとなり、介護事業所はトラブルの防止・業務の効率化・利用者の増加による経営の安定性が期待できます。
つまりLIFEの活用によって、利用者にも介護事業所にもメリットが生じるのです。
まとめ
今回は科学的介護推進体制加算について解説しました。
LIFEはまだ始まったばかりのシステムであり、このシステムを充実させていくためには各介護事業所の協力が不可欠です。
科学的介護推進体制加算を利用しながらLIFEの拡充に協力し、すべての介護事業所が一丸となって日本の介護を向上させていきましょう。