ステイホームの安全、AIで守る カメラに映る人の動作を無人でモニタリング

ステイホームの安全、AIで守る カメラに映る人の動作を無人でモニタリング

最終更新日 2022.11.24

今回のテーマは、「ステイホームの安全」。

昨今、訪問介護などでステイホーム中の被介護者と関わる機会も多いことと思います。なかには独り身の被介護者もいらっしゃることでしょう。

目を話している間にも、彼らの安全を守れたら、どんなにいいことでしょう。

この記事の要点

  • 家での安全と、豊かな生活の質を維持することは大切だ。
  • 家の中の人の行動を、(人属的にではなく)機械的にモニタリングできないかと考えた研究者がいる。
  • AIの技術で、日常生活の7割を認識できるようになった。

モニタリングの概念がくつがえるかもしれない、そんな時代になっています。

★この記事で参照している科学論文の情報

著者:Marco Buzzelli, Alessio Albé, Gianluigi Ciocca
タイトル:A Vision-Based System for Monitoring Elderly People at Home
URL:DOI

在宅でよりよく過ごす

時勢によらず、多くの高齢者は、介護や医療の施設に通う一方、在宅の時間も多いのが一般的です。

しかし、彼らの安全を守り続けることは、高齢化が進むにつれて高度な課題になっています。

下のグラフをみてみましょう。

2050年には、シニア世代の人数は子供(5歳未満)の2倍になると言われています。そして、その人数が爆発的に増えると考えられています。

また、言わずもがなですが、高齢化は日本だけでなく世界でも深刻な問題となっています。

欧州イタリアでは、65歳以上の人口が全体の22%であり、2070年には33%に及ぶと言われています。

欧州では、全域規模で、高齢化に対する施策や健康維持のための最新技術の投入などに関心が集まっているようです。

近年、高齢者の、在宅の安全と快適さを維持するためにテクノロジーを導入する考えは、

“Assisted Living Technologies(生活を助ける技術)”

と呼ばれています。もしもこの言葉を知っていたら、かなり研究肌だと言えるでしょう。

そしてその中でも、ストレスなくモニタリングを実施する技術への期待が高まっているようです。

ちなみにこのような技術は、ステイホームにおける安全だけではなく、介護施設や、その他、人手が足りていない施設で重要な技術になると言えます。

そんな重要な技術を開発することに取り組んでいる研究者の話をご紹介しましょう。

ミラノ大学のMarco Buzzelliら研究者たちは、AIの技術をつかって、自動で行動をモニタリングできるようなシステムの開発を試みたのです。

座っている、吐いている、食事をしている

結果、9割の正確さで、人がどのような動きをしているのかわかる技術が出来上がったようです。

上の図は、研究者たちが開発したアプリケーション(ソフト)の、見た目です。

カメラの視界に映っている人が、どんな状態なのか、どんな危険な状況なのか、どんな日常動作をおこなっているのかを、細かく分析することができるようです。

以下に示すような分類ができると、研究者は述べています。

【状態】

座っている、立っている、横たわっているなど

【危険な状況】

頭を振る、吐く、倒れるなど

【日常動作】

水分補給、食事、読書など

どのような動きをしているのか機械が感知し、危険な状況であればアラームを出して、関係者に知らせることができる。

「こんなことができるなんて!」と驚かれたのではありませんか?

プライバシーにやさしい

従来のモニタリングの弱点は、マンパワーだけでなく、「プライバシーの保護が難しい」ということがありました。

技術の進化は、人のプライバシーを守りながら、安全を高めてくれるもののようですね。

もちろん、テクノロジーを扱う人の正しい行動が前提になっています。

守るべき人を大切に守れるように、今の時代に必要な知恵を身につけていきたいですね!

※モニタリングに関する研究は、他にもこんなものがあります。

AIによるこどものストレスチェックには夢が詰まっている

今回紹介した研究はカメラによるモニタリングでしたが、上記記事で紹介している研究ではウェアラブルを用いています。ぜひ合わせてご覧ください。

臼井 貴紀
● 監修者情報
臼井 貴紀 Usui Kiki
Hubbit株式会社 代表取締役社長。藤田医科大学客員教員。早稲田大学卒業後、ヤフー株式会社に新卒入社。営業、マーケティング、開発ディレクション、新規事業開発など幅広く担当。その後、ベンチャー企業に転職しAIを活用したMAツールの立ち上げを行った後、Hubbit株式会社を設立。高齢者施設に3ヶ月住み込んで開発したCarebee(ケアビー)は、日本経済新聞、NHKおはよう日本、ABEMA PRIME等に出演。
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