介護用見守りロボットとは? 導入メリット・利用者の声も紹介

介護用見守りロボットとは? 導入メリット・利用者の声も紹介

最終更新日 2023.10.31

この記事の要点

  1. 見守りロボットとは介護ロボットの一種
  2. ロボットとは「情報関知・判断・動作」ができる機械システム
  3. 見守りロボットの導入に伴い介護事業所・職員・要介護者それぞれにメリットがある

現在、介護用の見守りロボットや見守りセンサーが多く開発・販売され、介護事業所でも活用されています。 

介護施設での活用はもちろん、独居高齢者宅向けに販売される製品・見守りサービスも出てきました。 

では、「見守りセンサー」と「見守りロボット」はどう違うのでしょうか。 

今回は見守りロボットの説明に加え、見守りロボットを導入した介護事業所が実際に感じている導入効果についても解説します。

見守りロボットは介護ロボットの一種

厚生労働省では下記3つの条件を満たすロボットの中でも、高齢者や障害者などの自立を支援し介護者の負担軽減に役立つものを「介護ロボット」と呼びます。

  1. 情報を感知し(センサー系)
  2. 判断し(知能・制御系)
  3. 動作する(駆動系)

本記事においても厚生労働省の定義に基づいて説明していきます。
参考:厚生労働省|介護ロボットとは

見守りセンサーとの違い

以前から存在していた見守りセンサーにロボット技術を応用し、センサーから得られる情報を自動認識して多様な対応を可能にした機器は、一般的に「見守りロボット」と呼ばれています。

つまり見守りロボットとは従来の見守りセンサーが高機能となったものと考えると、イメージがつかみやすいでしょう。

情報を検知するだけの見守りセンサーに比べて、介護に見守りロボットを導入した際には以下の点が向上すると考えられます。

  1. 転倒につながる予兆動作をあらかじめ検知できる
  2. 緊急度や優先順位の判断ができる
  3. リアルタイムの安全確認ができる
  4. 検知範囲が柔軟に設定できる
  5. 画像認識精度が上がり誤報が予防できる
  6. タイミングの良い訪室によりプライバシーの配慮ができる
  7. 蓄積データから転倒・落下事故の原因・背景を分析し対策が立てられる

見守りロボット以外の介護ロボット

介護ロボットは見守りロボット以外にも多くの種類があり、介護者のいろいろな業務を支援しています。

見守りロボット以外の介護ロボットについて知りたい人は以下の記事を参考にしてください。
介護事業所で利用されているAI・ロボット9種 最新の導入割合と活用の方策

また、「介護ワーカー」サイト内でも介護ロボットについてわかりやすく説明しています。是非合わせてご覧ください。 
介護ロボットが注目される理由とは?種類や導入のメリットもご紹介 

見守りロボットの種類

見守りロボットはセンサー種別により以下4つに分類され、それぞれの種類ごとにメリットとデメリットがあります。

人感センサーロボット

人間の体温に反応し、要介護者の離床やベッドからのはみ出しを検知して報告するタイプの見守りロボットです。

要介護者の視界に入りにくい場所に設置できるため、精神的な負担にならない点がメリットです。

また、充電コードに接続しなくて良いので、断線する心配がありません。

ただし、画像で状態を確認できないので、緊急性や優先度を判断するためにはその都度訪室しなければならない点がデメリットです。

荷重センサーロボット

ベッドの脚部にセンサーを取付けて荷重を検知し、要介護者の位置や状態を判断するタイプの見守りロボットです。

人感センサーと同様の機能を持っていますが、荷重センサーの方がより早く正確に検知できます。

一方でデメリットとしては、介護スタッフの介助中の動きにも通知がされてしまう点や、要介護者の動きを画像で確認できない点があります。

バイタルセンサーロボット

体動・心拍・呼吸を検出するセンサーをベッドマット下に設置し、要介護者のバイタルサインを遠隔から監視するタイプの見守りロボットです。要介護者のバイタルサインに異常があった場合に通知されます。

バイタルセンサーロボットのメリットは、要介護者の体調の変化をリアルタイムに把握できる点です。

また、ベッドマット下に設置できるので、違和感を感じさせることなく自然に使える点も魅力的です。

しかし、あくまでもセンサーでの感知であるため、要介護者の状態を画像で把握できない点がデメリットでしょう。

画像引用:見守り・排泄ケア|眠りSCAN – パラマナビ | 『快適なヘルスケア環境の創造』をテーマに パラマウントベッドが運営するメディア

シルエットセンサーロボット

要介護者の姿をセンサーが見守り、シルエット加工された画像や映像を遠隔の介護者に送信するタイプの見守りロボットです。

シルエットセンサーロボットのメリットは、要介護者のプライバシーに配慮しながら見守れる点です。

介護スタッフには、生の映像をもとに生成されたシルエット画像が送信されます。

そのため、着替えなど他人に見られたくないようなシーンでも、要介護者・介護スタッフの双方が安心して見守ることができます。

さらに、リアルタイムでの見守りのみならず、録画した画像・映像を後から振り返って確認することも可能です。

デメリットは、居室の光の状態によって誤作動を起こす可能性がある点です。

見守りロボットの種類メリットデメリット
人感センサーロボット要介護者の視野に入りにくい場所に設置できるため精神的な負担にならない
断線による故障の可能性が少ない
要介護者の状態を画像で確認できない
荷重センサーロボット検知スピードが早い介護者の介助中にも通知がされてしまう
要介護者の状態を画像で確認できない
バイタルセンサーロボット健康状態に問題がある要介護者の急変に即時対応できる
目立たず設置できるので、違和感を感じさせにくい
要介護者の状態を画像で確認できない
シルエットセンサーロボットプライバシーに配慮できる
設置場所が自由に選択できる
録画された画像・映像から振り返りができる
居室の光の状態により誤作動の可能性がある

見守りロボットの選び方・注意点

見守りロボットを導入する際の観点を3つご紹介します。

導入目的を整理する

見守りロボットを購入するときは、使用したい場面や、対象となる要介護者の状況に合わせて選ぶことが大切です。

導入目的が体調管理なのか、転落や徘徊など動きの見守りなのかによって、最適なロボットの種類が変わってくるでしょう。

必要な機能を見極める

見守りロボットは、シンプルなモデルもあれば、会話やスケジュール管理もできるような高機能なモデルもあります。

高機能モデルは、要介護者の話し相手になり刺激を与えてくれるというメリットがある一方、操作が複雑で不具合が起きやすく、かえってストレスになる可能性もあります。

要介護者のニーズを把握し、必要な機能を見極めましょう。

ネット環境が必要かどうか確認する

見守りロボットには、インターネットに接続して通知やアップデートを行うタイプと、インターネットを必要としないタイプがあります。

導入先の施設やご自宅の状況に合わせて選びましょう。

見守りロボット導入時のメリット

見守りロボットを介護事業所が導入することにより、介護事業所ならびに介護スタッフには以下のようなメリットがあると考えられます。

見守り業務の負担軽減

見守りロボットが常に要介護者の状態を確認しているため、夜間の見守り巡回の頻度が減らせ介護スタッフの業務負担が軽減します。

以下のグラフは見守りロボットA.I.Viewlife導入後(赤線)、夜勤ストレスが低減していることを示しています。

また、過度な見守り巡回で要介護者の睡眠を妨げることがなくなり、要介護者にとっても良い影響があります。

事故リスクの回避

要介護者の動きを予兆できるため、転倒リスクの高い人が夜間にトイレへ移動する際にスタッフがあらかじめ介助に向かうことができ、事故を未然に防げる確率が高まります。

厚生労働省介護給付費分科会の調査結果によれば、見守りロボットを導入した介護事業所のおよそ3割弱が導入前に比べて「ヒヤリハット介護事故」が5件未満減少したと回答しています。

ヒヤリハット介護事故が20件以上減少したと回答している介護事業所も1%弱存在し、これまでの事故防止対策に見守りロボットをプラスすることで、さらなるリスク回避が期待できます。

参考:厚生労働省|介護ロボットの効果実証に関する調査研究事業

介護報酬の加算

平成30年度の介護報酬改定により、見守りロボットを導入した介護事業所は夜勤職員配置加算の取得条件が緩和されています。

参考:厚生労働省|夜勤職員配置加算の要件の見直し

上記の改定により夜勤職員の数が最低基準を0.9人上回っていれば介護報酬が加算されるようになったため、夜間勤務0.1人分の余裕が出て夜勤スタッフの休息が取りやすくなったそうです。

見守りロボット導入に伴う介護報酬加算は、介護事業所にとってメリットがあるばかりでなく、介護スタッフにとってもメリットがあると言えます。

介護事業所の見守りロボット導入効果

上記で挙げたメリットを、見守りロボットを導入済の介護事業所やスタッフはどんな効果としてとらえているのでしょうか。

見守りロボットを導入済の介護事業所職員に厚生労働省が行ったアンケート調査では、回答をまとめた導入後の効果をグラフにまとめています。

介護職員の目線から見た見守りロボットの導入効果は、「早めの対応ができ、転倒が減った」「夜間の失禁が減った」など利用者のQOL(生活の質)向上につながる回答が目立ちます。

見守りロボットは要介護者の監視や行動制限の用具としてではなく、見守り対象者の自立とQOLの向上が目的なことを、すでに見守りロボットを活用している介護職員が一番実感しているようです。

介護見守りロボットの導入事例

介護見守りロボットを導入した施設の事例をご紹介します。

富山県の介護老人保健施設 アルカディア雨晴では、認知症専門棟に入所中の利用者に対し、TAOS研究所のAiSleepを導入しました。

AiSleepはベッドにセンサーマットを敷くだけで、バイタル(心拍・呼吸)やベッド上でのステータス(離床・起き上がり・覚醒・睡眠)が表示できます。

また、レポート・解析機能もついており、睡眠や呼吸、体調の変化を把握し、日中のケアプランに役立てることができます。

この施設では、利用者の約7割が認知症で、特に夜間帯における利用者の臥床状態(睡眠状態なのか覚醒状態なのか)を正確に把握したいという意図がありました。

導入前は、離床前の危険な体位等を、介護スタッフが訪室するまで把握できずにおり、介護スタッフ自身も利用者の動きに常に気を張り、ストレスが高い状態が続いていました。

そこで、AiSleepを導入したところ、夜勤終了後のアンケートでは9割超の介護スタッフが、ストレスが軽減したと回答しました。

介護スタッフからは、「アラームが鳴るまでは他のことに集中できるので、気持ちの余裕ができた」「利用者の起きるタイミングが分かり、転倒やおむつ外しの予防になった」といった声が聞かれました。

また、ベッドに敷くタイプなので、認知症であっても本人が取り外すことなく違和感なく寝てもらうことができ、利用者への負担が少ないのも利点です。

参考:厚生労働省|介護ロボット導入活用事例集2020

まとめ

今回は介護ロボットの1種である見守りロボットについて詳しく解説しました。

介護事業所にも介護スタッフにも、そして要介護者本人にも多大な効果がある見守りロボットの存在は、これからの介護を楽にしてくれる一助となる可能性があります。

まだ見守りロボットを導入していない介護事業所はぜひ導入を検討してみましょう。

臼井 貴紀
● 監修者情報
臼井 貴紀 Usui Kiki
Hubbit株式会社 代表取締役社長。藤田医科大学客員教員。早稲田大学卒業後、ヤフー株式会社に新卒入社。営業、マーケティング、開発ディレクション、新規事業開発など幅広く担当。その後、ベンチャー企業に転職しAIを活用したMAツールの立ち上げを行った後、Hubbit株式会社を設立。高齢者施設に3ヶ月住み込んで開発したCarebee(ケアビー)は、日本経済新聞、NHKおはよう日本、ABEMA PRIME等に出演。
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