介護の課題をIT技術によって解決する、改善内容と事業所が行うべき対策とは

介護の課題をIT技術によって解決する、改善内容と事業所が行うべき対策とは

最終更新日 2022.11.24

超高齢化の今、日本の介護業界は大きな危機を迎えています。

さまざまな課題が山積みとなり、介護を受けたいと願う方は増えている反面、サービスを提供する介護事業所側は手が回らない状態です。

具体的に介護の現場では、今どのような課題を抱えているのでしょうか。そしてその課題は解決の手立てがあるのでしょうか。

今回は介護の現場が抱えている課題と、その課題を解決するためにIT技術ができることについて解説します。

介護の現場で発生している課題とは

介護スタッフの数は不足しており、どの介護事業所も人材不足には頭を抱えています。

どうして人が集まりづらいのか、なぜ採用したスタッフが離職に至ってしまうのか、介護の現場で発生している課題を確認しましょう。

多忙な業務

要介護者の健康状態はさまざまなため、ひとくちに要介護状態と言っても、実際に介護をする上ではひとりひとりに適切な対応をする必要があります。

食事・入浴・排泄のいわゆる三大介護に加え、要介護者の生活支援やメンタルケアも行わなければならず、やることが多すぎると介護スタッフは疲弊してしまいます。

介護スタッフの業務負担を減らす努力をしなければ、職員が燃え尽きて離職に至る可能性は避けられません。

アナログな書類作成

介護業界では、まだまだアナログな作業が幅をきかせています。

令和3年度の介護報酬改正によりレセプト等のデータ提出が容認される見通しとなったものの、介護業界のIT化の遅れは早急に解決しなければいけない課題です。

手書きの介護記録ノートを作成する時間が取られることにより、介護スタッフの業務時間はさらに圧迫され、サービス提供にまで手が回らなくなります。

肉体的な負荷

要介護者が高齢者といえども、成人男女の身体介助を行う仕事は重労働です。

介護スタッフは肉体的にハードな業務を強いられ、腰痛や膝痛などの症状が現れる介護スタッフも多数存在します。

身体を壊して退職する介護スタッフも多く、介護事業所が職員により長く働いてもらうためには、介護スタッフの肉体的な負担を軽減する策を講じなければいけません。

「2025年問題」が来る前に課題解決が必要

現時点でも課題が山積みな状況に加えて、2025年からはさらに大きな問題が降りかかります。

1940年代後半生まれの団塊の世代は2025年を目処に75歳以上の後期高齢者に到達し、日本における後期高齢者の人数は2,100万人を超えます。

日本の生産性が減少すると同時に医療・介護・社会福祉を利用する人が増加し、各所で人材不足や財政不足が生じる、いわゆる「2025年問題」が始まるからです。

2021年現在で発生している介護業界の課題は、なんとしても2025年までに解決の道を探しておきたいものです。

介護のIT化により解決できる課題がある

上記で説明した介護業界の課題を解決する有効な手段が、IT技術の活用です。

抱えている課題のすべてではないものの、一部の課題が解消できるだけでも介護スタッフや介護事業所の負担は大きく減少することが期待できます。

ここからは介護の現場で活用できるIT技術の例をご紹介します。

具体的な活用事例を知りたい方は以下の記事も参考にしてください。
ITを活用して課題を解決した介護事業所の事例紹介【8つの課題と導入製品】

介護記録システム

介護記録ノートやレセプト情報などをパソコンやスマホ等を使ってやりとりするシステム(ICT)を導入することで、情報が一元化できるようになり事務の効率化が期待できます。

またシフト管理の機能もあわせ持つことで、介護スタッフや訪問ヘルパーなどのシフト調整がしやすくなり、職員と介護事業所の双方に利便性があります。

ICTについては以下の記事も参考にしてください。
介護におけるICT(情報通信技術)とは何か?効果とメリット・デメリット

アシストスーツ

アシストスーツ(パワードスーツ)とは、モーターや人工筋肉を内蔵したスーツを装着して、重量物を持ち上げたり降ろしたりする際の腰や腕にかかる負荷を軽減する機械です。

センサーが人間の動きを検知し、動作ごとに自動アシストを行います。

アシストスーツを腰部に着用することで、要介護者の移譲作業中に腰部にかかる負荷は最大40%低減できると言われています。

参考:農林水産省|アシストスーツ

行動センサー

要介護者の居室天井にモニターや行動センサーを設置して離床等の行動を把握し、転倒・転落などの事故を未然に防ぎます。介護スタッフが目視で見守り巡回をする回数が減らせるため、特に夜間における介護負担軽減が期待できます。

また行動センサーが検知した情報を記録しておくことで、要介護者の家族から虐待を疑われるなどのトラブルが生じたときの証拠にも活用でき、介護事業所のリスク管理として役立ちます。

排泄支援器具

排泄支援器具は排泄物処理や排泄予測、動作支援に関する器具が含まれます。

コンピュータ制御で排泄処理を自動で吸引、洗浄、乾燥まで行える全自動ポータブルトイレや、人間の膀胱の溜まり具合をセンサーによって検知し、適切なタイミングで要介護者にトイレ使用をうながせる器具、トイレ内での下衣の着脱などの動作支援をする機器があります。

これらの排泄支援器具によって、介護スタッフの排泄介助の負担を減らすことができます。 

ウェブサイト・アプリ

現代では多くの求職者が仕事探しに求人サイトや求人アプリを使用しています。インターネットを経由した人材募集もIT活用のひとつです。

また介護施設等の公式サイトを開設して情報を広く公開すれば、求職者の参考になるばかりでなく利用者家族へも施設の様子を知らせることができ、サービスの向上につながります。

IT化のために介護事業所がすべき対策

介護の課題をITで解決するためには、介護事業所があらかじめ考えておかなければいけない点があります。

導入したIT技術が逆に介護事業所の負担にならないよう、以下の2点を十分に検討しましょう。

ITリテラシーの向上

日本にITが浸透してきたとはいえ、介護従事者のITリテラシーは他の業種と比べて低い傾向にあります。

適切なITサービスを選択し、職員すべてがきちんと使いこなせるようにするために、経営者を含めた全職員のITリテラシーを向上させましょう。

パソコンやインターネットの知識もさることながら、より良い介護を実現させるためには本サイトの掲載情報などをチェックして最新の介護技術の進歩や知識を得ていってください。

補助金等の検討

介護のIT化にはコストがかかります。導入コストが介護事業所の経営を圧迫してしまっては本末転倒です。

IT導入により国や自治体の補助金が利用できないか、最新の情報を確認してコスト回収の手段を考えましょう。

2021年8月現在の補助金事業は以下の記事を参考にしてください。
介護関連のICT補助金事業を国と自治体に分けて紹介【2021年8月最新情報】

まとめ

今回は2021年現在に介護業界が抱えている課題と、2025年問題に向けて介護の現場が採り入れられるIT技術をご紹介し、介護業界の課題解決策を探りました。

すべての高齢者に適切な介護サービスを提供するためには、介護業界の課題解決は今すぐにでも取り組む必要があります。

ITを使ってできるだけの策を講じ、早急な課題解決に努めましょう。

臼井 貴紀
● 監修者情報
臼井 貴紀 Usui Kiki
Hubbit株式会社 代表取締役社長。藤田医科大学客員教員。早稲田大学卒業後、ヤフー株式会社に新卒入社。営業、マーケティング、開発ディレクション、新規事業開発など幅広く担当。その後、ベンチャー企業に転職しAIを活用したMAツールの立ち上げを行った後、Hubbit株式会社を設立。高齢者施設に3ヶ月住み込んで開発したCarebee(ケアビー)は、日本経済新聞、NHKおはよう日本、ABEMA PRIME等に出演。
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