介護関連のICT補助金の概要を解説 給付対象になる介護業務とサービスとは

介護関連のICT補助金の概要を解説 給付対象になる介護業務とサービスとは

最終更新日 2022.11.24

「これからの介護事業所にはICT活用が必須だ」と、最近の介護業界ではよくささやかれています。

しかしICT活用と言われても、新たなシステムやサービスを導入する際にはどうしても費用がかかります。介護事業所の健全な運営のためには、業務効率化とコスト削減を同時に考えなければいけません。

国や自治体では介護人員の確保を主な目的とし、ICTを導入した介護事業所に対して補助金を給付して導入費用の補填ができる制度をもうけています。

今回は介護施設等にICTを導入する際に利用できる補助金の概要について解説します。

介護のICT化で補助金が受給できる

ICT(Information and Communication Technology/情報通信技術)とはコンピューターを使って情報をやりとりするコミュニケーションのことです。日本のIT普及に伴い、介護業界でもICTを使って業務負担を軽減しようとする動きが急速に高まっています。

厚生労働省もこれまで紙書類でしか受け付けていなかった介護報酬請求等の書類をデジタルデータ提出を可能にするなど改革を実施し、介護事業所に対してもICT補助金を出すなどの策を講じて積極的にICT活用を推進しています。

ICT化を検討している介護事業所にとっては、補助金で費用の一部をまかなえる今が最大のチャンスと言えるでしょう。

なおICTについては以下の記事でも概要を説明していますので、ICTとは何かを知りたい人はぜひ参考にしてください。
【リンク】介護におけるICT(情報通信技術)とは何か|効果とメリット・デメリット|AIケアラボ

補助金対象となるICTツール・サービスとは

介護事業所がICTを導入するために必要な経費のうち、以下の費用はICT補助金の対象となります。

ハードウェア

ハードウェア(物理的な機器)に関するICT補助対象は以下のとおりです。

  • パソコン・タブレット端末・スマートフォン
  • Wi-FiなどICTサービス運用に必要なネットワーク機器
  • 事業所内で通信に使用するデジタルインカム機器
  • 上記機器の設定設置費用
  • 上記機器の使用料もしくはリース料

ソフトウェア

ソフトウェア(コンピューターを動かすプログラム)に関するICT補助対象は以下のとおりです。

  • 記録業務から請求業務まで原則一気通貫で行えるパッケージ版介護ソフトウェアの購入費用
  • 記録業務から請求業務まで原則一気通貫で行えるクラウド版介護ソフトウェアのサービス利用料
  • バックオフィス業務ソフトの購入費用またはサービス利用料

その他

ハードウェア・ソフトウェア以外のICT補助対象は以下のとおりです。

  • 保守・サポート費用
  • セキュリティ対策費用
  • 導入研修費用
  • ICT導入に関する他事業者からの照会経費
  • その他ICT導入に関連すると認められた費用

ICT補助金対象になる介護業務とは

ICTを活用することにより以下のような業務が簡便化されると認められる場合に限り、ICT補助金が利用できます。

介護記録作成

介護事業所に入所あるいは通所する利用者や訪問介護利用者の情報を、ICTを使って介護計画書やケア記録などを含め一元管理します。登録した情報は介護スタッフ間や所内の別部署と共有し、報告書作成や介護報酬請求のレセプト業務にも連携します。

ICTにより介護記録などをデジタル化することで、介護スタッフの事務作業負担軽減や業務効率化が期待できる場合に補助金交付の対象となります。

見守り

モニターやベッドセンサー・ドアセンサーなどの情報をICTを使って離れた場所にいる介護スタッフに送ることで、介護スタッフが見守り業務にあたる時間が短縮でき、さらに万が一の事態にも即時対応できます。

ICT活用により介護スタッフの業務負担軽減や人員確保が可能と見なされる場合、補助金の交付対象となります。

スタッフ間の連絡

スマートフォンなどをデジタルインカムとして活用し、介護スタッフ間の業務連絡や申し送りを離れた場所でも行えるようにします。音声と文字に加え写真や動画での情報伝達が可能になり、手書きの申し送りノートに比べて豊富な情報伝達が可能です。

ICTを使ったデジタルインカムの活用で介護スタッフ間の情報伝達がやりやすくなる場合には、ICT補助金の適用が可能です。

職員会議

テレビ電話などを用いてオンライン会議・リモート会議を行えるシステムを構築します。また老人ホーム等に入居している利用者と家族がオンライン面会を行えるようなシステム作りにもICTが活用できます。

新型コロナウィルス感染症防止や介護スタッフの柔軟な働き方がICTにより可能になると認められる場合、補助金交付の対象となります。

勤怠管理

ICカードによる入退室管理システムの導入や、スマートフォンなどにタイムカード機能を持たせることで、勤怠管理や給料計算を機械化します。またシフト管理の際にもICTを活用することで人員の過剰配置や不足を避けられ、介護スタッフの利便性向上にも期待が持てます。

上記でご紹介したようなICTによる業務の効率化を実現した介護事業所の事例は、以下の記事をご覧ください。
【リンク】ICTを活用した介護事業所に与えられるメリット【実際の8事例を元に解説】AIケアラボ

介護関連のICT補助金事業実施機関

介護事業所が利用できるICT補助金には、独立行政法人中小企業基盤整備機構および経済産業省の監督のもとに一般社団法人サービスデザイン推進協議会が実施する「IT導入補助金」や、厚生労働省の指導の下に各自治体が受付を行う「ICT導入支援事業」などがあります。

参考:一般社団法人サービスデザイン推進協議会|IT導入補助金2021

参考:厚生労働省|ICT導入支援事業の概要

2021年8月時点では、すでに補助金申請の受付を終了した補助金事業や、逆にこれから申請を受け付ける補助金事業もあるため注意が必要です。

国および自治体の補助金に関する2021年8月1日時点の最新情報は以下の記事によりご確認ください。
【リンク】介護関連のICT補助金事業を国と自治体に分けて紹介【2021年8月最新情報】AIケアラボ

ICTは介護報酬の加算対象にも

介護事業所のICT導入は補助金給付だけでなく、介護事業所が受け取る介護報酬の見直し対象にもなっています。

令和3年度の介護報酬改定ではテクノロジーの活用により介護品質向上および業務効率化を推進していく観点から、ICT導入を行った介護事業所は介護福祉士の配置要件の緩和・夜勤職員配置加算・日常生活継続支援加算・サービス提供体制強化加算などの対象になると決定しています。

参考:厚生労働省|令和3年度介護報酬改定の主な事項について

また新型コロナウイルス感染症の流行により非接触の情報伝達が可能なICTはさらに重要視され、国によるICT導入支援は令和5年までさらなる拡充が行われる予定です。

介護事業所のICT化は補助金による一時的な支援だけでなく、介護報酬による継続的な支援も期待できるでしょう。

まとめ

今回は介護事業所がICTを導入した際に受給できる補助金の概要について解説しました。

介護職員の人材不足を解消するためには、これからの介護事業所はICTなど最新のテクノロジーを使ってスタッフの負担軽減と業務効率化を考えていく必要があります。

補助金を活用してICTによる業務効率化を実現し、より介護スタッフが働きやすい職場に変えていきましょう。

臼井 貴紀
● 監修者情報
臼井 貴紀 Usui Kiki
Hubbit株式会社 代表取締役社長。藤田医科大学客員教員。早稲田大学卒業後、ヤフー株式会社に新卒入社。営業、マーケティング、開発ディレクション、新規事業開発など幅広く担当。その後、ベンチャー企業に転職しAIを活用したMAツールの立ち上げを行った後、Hubbit株式会社を設立。高齢者施設に3ヶ月住み込んで開発したCarebee(ケアビー)は、日本経済新聞、NHKおはよう日本、ABEMA PRIME等に出演。
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